第331話:魔王と魔人 21
『魔爪十指! 切り刻んで差し上げましょう!』
「んなこと誰も望んでないっての!」
「こっちが貴様を斬り捨ててやる!」
突然に伸びた魔人の爪を見て、俺たちは武器を構えて相対する。
とはいえ実際に魔人と剣を交えるのは新であり、俺はサポートに回ることになる。
新の負担にならないようサポートに徹することが、勝利へのカギになるのだ。
『なかなかやるではないですか!』
「こんなところで死ねないんでな!」
『あなた、魔王様に仕えませんか? 私が取り計らってあげますよ?』
「ふざけるな!」
『そうですか、残念ですねえ!』
……この二人のぶつかり合い、全く剣筋が見えないんだが。俺はどうやってサポートをすればいいのだろうか。
『ガルアアッ!』
『ビギャアアッ!』
俺がどうしたもんかと考えていると、ハクとサニーが新をサポートするために突っ込んでいく。
『ちっ! 邪魔な魔獣ですねえ!』
「助かる、ハク! サニー!」
新たちは巧みな連携で魔人とやり合っているが、それでも優位になったわけではなかった。
三対一の状況だが、それでようやく五分になったと言えるかもしれない。
『これで勝てると思いましたか? 甘いですよ!』
「こいつ、さらに早くなっただと!?」
『ギャウアッ!』
『ピギャン!』
鋭く振り抜かれた爪に新たちが吹き飛ばされる。
傷を負うことはなかったが、それでも力の差を感じずにはいられず、気持ちの部分で押されてしまうかもしれない。
「グラビティホール!」
『二度も同じ轍は踏みません! マジックキャンセラー!』
おいおい、嘘だろ!? 俺の魔導具による魔法がキャンセルされて……ない?
『……な、何故ですか! 何故キャンセルされないのです!?』
「……いや、俺に言われてもなんでかは……あれ? もしかして、魔導具だからか?」
魔法は魔法でも、俺の魔法は魔導具によるものだ。
何が基準になっているのかを鑑定する余裕はないが、キャンセルされていないのは確かなので後回しである。
「それなら――エアスラッシュ!」
多少なり動きが鈍くなっているだろう魔人めがけて、俺は一度はやってみたかった飛ぶ斬撃を放つことができるエアスラッシュの魔導具を起動させた。
『ちっ! 鬱陶しいですねえ!』
何度もエアスラッシュを放ってみたが、ダメージになっている様子は見られない。
だが、魔人に鬱陶しさを与えることには成功した。
『面倒です! あなたから殺して差し上げましょう!』
「いいぜ、やってやるよ!」
ヘイトをこちらに向けることには成功した。
あとは集中砲火を浴びせれば、少しはダメージを与えることができるだろう。
「はあっ!」
『ガルアッ!』
『ビギャアッ!』
新が、ハクが、サニーが三方向から魔人めがけて攻撃を仕掛ける。
だが、それだけではない。
「でやああああっ!!」
「セイントアロー!」
『フォスフォス!』
『……!!』
ダークボールを防ぎ続けていた円たちが自由に動けるようになっており、こちら側へ加勢に来てくれていたのだ。
さあ、俺たちの総攻撃を受けて耐えられるか、魔人野郎!
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