第328話:魔王と魔人 18
――ドゴオオオオンッ!
魔の森の奥、最前線の方から轟音が響き渡ってくる。
傷を負った兵士たちを追い越し、俺たちは急いで奥へと進んでいく。
「鑑定! 被害を最小限に抑える方法!」
俺は勝利条件を鑑定するのではなく、被害を最小限に抑える方法を鑑定する。
鑑定士【神眼】に全幅の信頼を注いでいる。だからこそ、勝利条件を鑑定する場合は被害を気にすることなく、最短の結果を表示するだろうことは理解していた。
もしかするとそれが国とすれば一番いいのかもしれない。だが、俺は可能な限り被害を減らしたい。
ここグランザウォールで暮らす人たちの被害をだ。
「ライアンさんは右の方に援軍へ! 新は俺と一緒に正面の大群を相手にするぞ!」
「分かりました! お二人とも、お気をつけて!」
俺の指示でライアンさんが右へ流れていくと、俺は新と正面へ突っ込んでいく。
「戦力を分けて大丈夫なのか?」
「被害を減らすならこの方がいいんだ。まあ、正面の俺たちがだいぶ大変になるっぽいけどな」
「こっちがか? なら、問題なさそうだな」
そう口にしながら新は愛剣を抜き放つ。
「こっちが大変になるのに問題ないのか? ぶっ飛んでんな、お前」
「その選択をしたのは真広だろ? なら、お前もぶっ飛んでいるってことだな」
「……はは、確かにその通りだわ」
返事をした直後、前方から戦線を抜けてきただろう魔獣が飛び掛かってくる。
「はっ!」
だが、直後には新の愛剣が閃き、魔獣を粉々に切り裂いていた。
「早すぎだろう」
「これくらいできないと、真広を守れないからな」
「……な、なんだよ、いきなり」
こいつ、変なこと言いやがって!
「アリーシャさんのためにもな」
「……あっ、そっちね」
「……お前、どっちだと思っていたんだ?」
「友情的な? 親友を守るんだ的な?」
「それもあるが、別に説明する必要もないだろう?」
……だから、そんな恥ずかしいこと言うなって! なんだよ、言わなくても分かるだろ? 的な感じかよ!
「どうしたんだ? 顔が赤いぞ?」
「う、うるせえな! ほら、さっさと行くぞ!」
「ん? あ、あぁ」
自覚なしかよ!
……いや、俺の方が気にし過ぎなのか?
どちらにしても、急いだ方がいいんだから気にしちゃダメだな、うん。
「また来るぞ!」
「任せろ!」
そのあとも戦線を抜けてきた魔獣を相手にしながら進んでいく。
「そっちに行ったぞ、真広!」
ほとんどの魔獣を新が片付けてくれたが、そこすらも抜けてきた魔獣は俺が相手をしなければならない。
「魔導具の出番だな!」
俺は魔人にも使ったフレアトルネードを振り抜いた。
――ゴウッ!
巨大な炎の竜巻が顕現すると、迫ってきていた魔獣を巻き込んで消し炭にしてしまう。
……あの魔人はこの炎を受けても耐えたんだよな。
ということは、やっぱり今回の魔人は相当強いってことだ。
「……急ごう、新」
「あぁ!」
俺も戦闘に加わり、一気に前へ出て行っていく。
そして俺たちはようやく、円とユリアと合流したのだった。
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