第326話:魔王と魔人 16
「あの、えっと、その、トウリさん!?」
「……ごめん、アリーシャ。いきなりで迷惑だったよな」
アリーシャの反応を見て、俺は言わなければよかったと後悔してしまった。
でも、それはそうか。いきなりの告白なんて、迷惑以外の何ものでもないもんな。
「そ、そんなことはありません!」
「……えっ? そ、そうなの?」
しかし、アリーシャからの返事は予想外のものであり、俺にとっては嬉しい以外の何ものでもないものだった。
「その、わ……」
「……わ?」
「……わ、私もトウリさんのことが好きですから!」
……………………はい? えっと、そうなの?
「……わ、私の方こそ、ご迷惑だったでしょうか?」
「…………いやいやいやいや! まさか、そんなわけないじゃないか! 俺から告白したのに、オッケーをもらえて迷惑とか、意味分からないって!」
「それは、本当ですか?」
「本当だから! 俺、今めっちゃ嬉しいから! むしろ俺でいいのかって思っちゃってるんだけど……あれ? 本当に俺でいいのか? だってアリーシャ、領主様だろ?」
勢いで告白してしまったが、よくよく考えると立場が違い過ぎるような……あれ?
「領主と言っても、辺境の地を収める多くいる領主の一人ですし、爵位を持っているわけでもありませんから」
「そ、そうか?」
「そうですよ。それに、私のご先祖様だって異世界人の方と生涯を共にしたのですよ?」
「……確かに、言われてみればそうだよな」
アリーシャの言葉を受けて俺はそう呟いた。だけど……しょ、生涯を、共にした、かぁ。
「……なんか、恥ずかしいなぁ」
「えっ? ……あっ!」
どうやらアリーシャも気づいたようで、頬を主に染めてやや下を向いてしまう。
「……でも、嬉しいな」
「……私もです」
勢いに任せた俺の告白は成功した。
しかし、だからこそ今回の戦いは生きて帰ってこなければならなくなった。
「本当に、助けていただけるのですか? トウリさんも向かわれるのですか?」
「もちろんだ。前線で戦えるかは分からないけど、俺の鑑定スキルが絶対に役に立つときが来るはずだからな」
「トウリさんの鑑定スキルには、本当に何度も助けられました。……今回も、そうなのですね」
申し訳なさそうに見つめてきたアリーシャを見て、俺はできるだけ快活な笑みを浮かべて答えた。
「任せてくれよ! 俺はアリーシャのためなら、絶対に失敗しないからさ!」
「……分かりました。では、私もできることを全力でやらせていただこうと思います」
「お互いにがんばろ――!?」
俺が声を掛けているとアリーシャの顔が急に近くなり……唇と唇が、重なった。
「…………えっ?」
「……お、おまじないです! 絶対に無事に帰ってきてくださいね!」
そう口にしたアリーシャは、今まで見たことがないくらい真っ赤な顔をして部屋を飛び出してしまった。
……これは、マジで生きて帰ってこないと、俺が後悔するわ、うん。
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