第325話:魔王と魔人 15

 それから俺とアリーシャは引き離されてしまい、こちらには新が付き添ってくれている。


「……はああぁぁぁぁ~、やっちまったなぁぁぁぁ~」


 そして俺は、絶賛反省中だった。


「まさか真広があそこまで怒鳴るとは思わなかったぞ」

「俺も驚いてるわ。どうしてあんなに怒鳴っちゃったんだろうか」

「真広なりに思うところでもあったのか? アリーシャ様は俺たちのことを心配してくれていただけだろうに」

「……仰る通りです。はああぁぁぁぁ~」


 ぐうの音も出ない言葉を投げつけられ、俺はもう一度大きなため息を漏らした。


「時間をおいて、ちゃんと謝っておけよ」

「そうだな。そうじゃないと、気持ちの整理がつかないまま魔人たちと戦うことになっちまう」

「それはダメだろう」

「だからそうだなって言ったんだよ!」


 くそっ、新の奴、ちょっと楽しんでやがるな? 微妙に顔がにやけているっての!


「とにかく! 俺はアリーシャに謝るから、お前は円とユリアのところへ行ってきてくれ!」

「それもそうだな。……冗談抜きで、ちゃんと話し合っておけよ? 今回も戻ってこられる保証なんてないんだからな?」

「……分かってるよ」


 最後の方は真剣な表情となり、俺が返事をすると新はそのまま部屋をあとにした。

 一人になり、部屋の中を静寂が包み込んでいく。

 先ほどまでのやり取りが嘘のように静かな空間だ。

 ……本当に、戻ってこれなかったらどうしようかな。

 ……どうしようも何も、戻ってこられなかったらそれまでなんだけど。


「……やっぱり、待っているよりも自分から動かないとだよな」


 廊下からは何も音は聞こえてこない。

 アリーシャはまだ、ライアンさんと一緒にいるのかもしれない。

 俺が顔を出したらアリーシャは怒鳴るだろうか。まだ怒っているだろうか。

 どちらにしても、顔を出さなければ答えは見つからないのだ。

 そう思って廊下に出てみると、同じタイミングで一番奥の扉が開き、中からアリーシャが姿を現した。


「「あっ……」」


 同時に声を漏らし、そして視線を逸らせてしまう。

 そこへライアンさんも出てくると、苦笑を浮かべたままアリーシャの背中を押した。


「さあ、お話しなさってください、アリーシャ様」

「……は、はい」


 一歩、また一歩とアリーシャが近づいてくる。

 俺も一歩ずつ近づき、廊下の中間でお互いが触れられる距離まで近づいた。

 俺が立っている方からは見えていたのだが、ライアンさんは気を利かせてくれたのか、足音を立てずそっとその場をあとにしてくれた。


「……あの、トウリさん。先ほどは――」

「アリーシャ! さっきは本当にごめん! 俺が悪かった!」


 アリーシャが謝罪を口にしようとしていたが、先に謝らせてはいけないと思い、彼女の言葉を遮って俺から謝った。

 驚いたのかアリーシャは何度も瞬きを繰り返しており、口を開けたまま固まってしまっていたのだが、気を取り直したのかすぐに頭を下げた。


「……私の方こそ、申し訳ございませんでした。トウリさんたちが戻ってこないかもしれないと思うと、その、怖くて……」

「俺も一人になって同じことを考えてた。戻れずに、アリーシャの顔がもう見られなくなるんじゃないかってさ」

「……わ、私の顔が、ですか?」

「あぁ、その通りだ」


 俺は自分の口から出てくる言葉を止めることなく、思いのたけを吐き出していく。そして――


「俺はアリーシャのことが好きだ」

「――!?」


 止めることをしなかった弊害か、気づけば俺はアリーシャに告白してしまっていた。



※※※※

【宣伝】

 別作品の宣伝なのですが、私が原作・脚本を担当している縦読みWEBTOON作品が、ピッコマにて連載中でございます。


 作品名は――【復讐のトップランカー】。


 作品ページへ飛ぶことができるURLを載せた近況ノートも公開しておりますので、興味のある方は一度ご覧になっていただけると嬉しいです!


▼近況ノートURL

https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16817330658181429988


 今後とも、渡琉兎とその作品たちを何卒よろしくお願いいたします!

※※※※

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る