第322話:魔王と魔人 13

「どうしたの、桃李?」


 俺が驚いている姿を見て、ユリアが声を掛けてきた。


「……こいつ、魔獣じゃなくて、魔人だった」

「……はあ!? 嘘でしょ!!」

「嘘じゃない、マジだから」


 俺が改めてそう口にすると、ユリアは驚きのまま視線を死んだ魔人に向ける。


「……まあ、人型だったし、強かったけど、こいつが魔人?」

「そうみたいだ。魔王復活が近いってことなのか? それとも、魔の森に魔王や魔人に関する何かがあるのか?」


 これは魔導具の試し撃ちなんて言っていられる状況ではなくなったな。


「一度戻ってみんなに報告しよう」

「そ、そうね」

「陛下にも伝えないといけないし、魔の森に何かしらあるんだったら調査を急がないといけないし、やることは多いなぁ」


 森谷を助ける方法も探さないといけないのに、これではあまりにも手が足りなさすぎる。


「行こう、ユリア」

「……うん」


 こうして俺の魔導具試し撃ちは、予想外のタイミングで終了することになった。


「――トーリさん! ユリアさん!」


 宿場町に戻ってくると、先ほどの戦闘音を聞きつけてなのか、アリーシャだけではなく、多くの兵士たちが警戒態勢を取っていた。


「大丈夫でしたか? いったい何があったのですか?」

「ちょっと予想外の相手と戦闘になってな。……主だった人を集められるか? 報告がある」


 魔王や魔人についてをむやみやたらに口にするわけにはいかず、主だった者にしか伝えていない。

 グランザウォールでは、アリーシャの代わりを務めることが多いグウェインや兵士長のライアンさんに副兵士長のヴィルさん、あとはギルマスだ。

 新たちも知っているので、彼らも集めなければならない。


「分かりました、急ぎ招集いたします! 場所はこちらの屋敷でよろしいですか?」

「ありがとう、それで頼むよ」


 俺がずっと真剣な面持ちをしていたからだろうか、アリーシャも即座に行動に移してくれた。


「っと、ディートリヒ様にメールバードを飛ばしておかないとな」


 転移した方が早いのだが、俺以外ではすぐに謁見は難しいだろう。

 ということで、俺は超即便仕様のメールバードを使い、緊急事態だと簡単な説明を加えて飛ばした。

 俺とユリアは一足先に屋敷へ向かい、しばらくすると全員が屋敷へやってきてくれた。


「どうされたのですか、トウリ様?」


 代表して最初に口を開いたのはライアンさんだ。

 集まってくれた全員が俺を見ており、事情を知っているユリアも心配そうにしている。


「単刀直入に話すけど、魔の森に魔人が現れた」


 俺の言葉に全員が驚愕しながら目を見開いた。


「……それは本当なのか、真広?」

「あぁ、新。魔導具の試し撃ちをしにユリアと行ったら、遭遇した」

「魔人はどうなったの?」

「安心して、円。遭遇した魔人は一人だったし、フォスやサニーも一緒に戦って倒したから。でも……」


 そこでユリアが言葉を切ったため、今度は彼女に視線が集まった。


「……どうしたんだ、近藤?」

「……だいぶ、強かった。一人を相手に、全員でいかないと倒せないくらいに」

「桃李君たちが一緒に戦って、ようやく一人……」


 ユリアの言葉に円は不安そうな声を漏らす。


「どうして魔の森に魔人がいたのか、魔王の復活が近づいているのか、それは正直分からない。だから、これから俺はいろいろな鑑定を試しながら状況を探ろうと思う」

「では私たちは魔の森の見回りを強化しつつも、深追いはしないよう兵士たちに周知徹底させましょう」

「お願いします」


 さて、森谷の問題を解決する前に、魔王問題の解決を急ぐ必要がありそうだな。



※※※※

【書籍3巻発売中!】

本作の書籍版『職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職でいきたい~』3巻が05/25(木)に発売されております!


▼タイトル

『職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職でいきたい~』3巻

▼発売日

2023/05/25(木)

▼イラスト

ゆのひと先生

▼ISBN

9784046824837

▼書影添付の近況ノートURL

https://kakuyomu.jp/users/toguken/news/16817330656379698455


大量に加筆・修正を加えた3巻の結末は、とてもハッピーで、桃李とアリーシャの幸せな表情が見られることをお約束いたします!

さらに表紙にも描かれておりますが、ライルグッドが出ます!

ということは、アルフォンスも出ます!

最高の仕上がりになっておりますので、是非お手に取ってみてください!

よろしくお願いいたします!

※※※※

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