第320話:魔王と魔人 11

「フレアトルネード!」


 俺が短剣型の魔導具を振り抜くと、人型魔獣の周囲に突風が吹き荒れる。


『……?』


 突然の突風に首を傾げた人型魔獣だったが、直後には竜巻状の炎が舞い上がった。


『なんだ!?』

「……喋った?」


 人型魔獣が言葉を発したように感じたが、気のせいだろうか?

 確認したかったが、すでに人型魔獣は炎の竜巻の中である。

 今からこの中に入るのは自殺行為なので、どうしようもない。


「……なあ、ユリア。今あいつ、喋らなかったか?」

「……私にも聞こえたわ」

「……だよなぁ」


 困惑しながらフレアトルネードを見つめていると、突然中心からドンッという大きな音が響いてきた。


「おいおい、まさかだろ?」

「フォス! 構えて!」

『フォスフォス!』

「サニーも頼むぞ!」

『ピギャアアアアッ!』


 俺も訓練してきた剣を抜いて構えると、直後にはフレアトルネードが弾け飛んでしまった。


『……なんだ、貴様らは?』

「それはこっちのセリフなんだが?」

『ほほう? 俺の言葉に答えねぇってか? 舐めてんじゃねえか!』


 地面を蹴りつけ加速する人型魔獣。

 あまりの速度に俺はまったく反応できなかったが、防御用魔導具が守ってくれた。


 ――ガキンッ!


『……なんだぁ?』

「はあっ!」

『フォス!』


 困惑する人型魔獣の隙を突き、ユリアとフォスが攻撃を放つ。


『ふんっ!』

「えぇっ!? よ、避けた!!」


 ユリアとフォスの同時攻撃を、人型魔獣は掛け声とともに飛び退いて避けてしまった。

 だが、こちらにはもう一匹仲間がいる。


『ピギャアアアアッ!!』


 空へと舞い上がっていたサニーが急降下から鋭い爪による一撃を人型魔獣に見舞った。


『ぐぬおおおおっ!?』

『ビビギャアアアアッ!!』


 爪を受け止めた人型魔獣は地面を削りながらどんどん後退していく。

 サニーも翼を羽ばたかせて勢いを付けようとしているが、急降下により付けた加速は徐々に減衰していた。


『おお……おおらああああっ!!』

「下がれ! サニー!」

『ピギュルララアアアアッ!!』


 俺が指示を出すと即座に急上昇したサニー。

 そこへ人型魔獣の拳が空を切ると、相手は舌打ちをしている。


『ちっ! ふざけやがって!』

「アイスバーン!」


 周囲にユリアやフォスもいないことを確認し、俺は二つ目のナイフの形をした魔導具を振り抜いた。

 俺の視線の先にある地面を一直線に凍らせていき、その先にいた人型魔獣の足も地面に縛り付ける。


『こんなもので俺の動きを止められると思っているのか!』

「思ってねぇよ。だから――まだまだやるんだ!」


 俺は一度ではなく、二度、三度とナイフ型の魔導具を振り抜いていく。

 氷の上にさらなる氷が上乗せとなり、人型魔獣は足首だけではなく、太ももまで凍りつかせた。


『ぐぬっ!? ふざけおって!!』

「はあっ!」

『フォースッ!』

『ビギャアアアアッ!』


 そこへユリア、フォス、サニーが三方向から攻撃を仕掛けていく。

 人型魔獣は二本の腕だけでしのいでいるが、ピキピキと氷が砕ける音も同時に聞こえてきていた。


「勝負を決めないと、マズいな」


 そう思った俺は、最終兵器に魔力を注ぎ込み始めた。


「いくぞ――断絶の刃!」


 結局、これが俺にとって最強の武器なんだよな!

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