第318話:魔王と魔人 9

「――魔導具の試し打ちだって?」


 俺は出来上がった魔導具の試し打ちがしたいとグウェインに話を持ち掛けてみた。


「あぁ。魔の森だと火事になった時に大変かなと思って、どこかいい場所はないか?」

「魔の森が火事って、いったいどれだけ強力な魔導具を作ったんだい?」

「それが分からないから、試してみたいんだよ」


 俺は火と風を組み合わせた魔導具を作ってみた。

 火に風を――酸素を取り込ませて火力を上げた魔導具なのだが、どれだけの火力を出せるのかが定かではない。

 鑑定スキルでは【特級職級の魔導具】とだけ出ており、詳しい説明が省かれている。

 ……なんだろう。最近の鑑定スキル、ちょっと説明が雑になっている気がする。

 俺って、もてあそばれているのだろうか。


「でも、それなら魔の森の奥の方で試した方がいいんじゃないかな」

「燃えるぞ?」

「魔の森はそもそも、ドラゴンのブレスでも火事が燃え広がらないわけだろう? それなら魔獣だけじゃなくて、植物とかも特殊な成長を遂げているんじゃないかな」

「……確かに、言われてみると一理あるな」

「もしも魔の森に行くなら、誰か護衛を付けるけどどうする?」


 グウェインの言葉に俺は魔の森でもいいかと考え、彼が護衛を付けると口にすると――


「ピキャー!」


 俺の頭の上にいたサニーが、自分が護衛だぞと言わんばかりに翼を広げながら鳴いた。


「確かに、サニーがトウリの一番の護衛だね」

「とはいえ、サニーだけだとアリーシャあたりが文句を言いそうだな」

「当然ですよ、トウリさん」


 俺は大丈夫だと思っていたのだが、予想通りに背後から声が掛けられた。


「やっぱりダメか?」

「ピキャー?」

「ダメです。サニーを信じていないわけではありませんが、魔の森に行くなら不測の事態を想定して動くべきですからね」

「それならアラタに頼めばどうかな? ハクもいるし、護衛に最適だと思うけど?」

「それもそうだな。あとで新に頼んでみるか」


 魔の森で魔導具を試すことが決まり、俺はグウェインとアリーシャと別れて宿場町へ新を探しに向かった。


 さて、新はすぐに見つかったのだが、彼の答えは予想外のものだった。


「すまない、真広。今日は魔獣狩りを兵士たちと行う予定になっているんだ」


 異世界人である俺たちも、魔の森から出てくる魔獣から宿場町や温泉街を守るため、定期的に魔獣狩りを行っている。

 戦闘職ではない俺は免除されているが、新、円、ユリア、そして今では赤城もローテーションに入っており、今日がたまたま新の順番だったようだ。


「そっかー。うーん、ならどうしようかなぁ……」


 最も頼りにしている新に断られてしまいどうしたものかと考えていると――


「私とフォスが行こうか?」

「うおっ! ……気配を消して近づいてくるなよな、ユリア!」


 背後から声を掛けられ、俺は変な声をあげながら驚いてしまった。


「あははっ! ごめん、ごめーん! でも、本当に私たちが行こうか? 暇だし」

「暇なのかよ。……でもまあ、お願いしようかな。円は一緒じゃないのか?」

「円は先生と一緒にシュリーデン国へ行ったわ。あっちで大樹さんを助ける方法がないか探してみるんだって」

「そっか。みんな、動いてくれているんだな」


 そういうことなら、俺も止まってはいられないか。


「分かった。ユリア、お願いできるか?」

「もちろんよ! フォスもよろしくね!」

「フォシュシュ!」


 こうして俺とサニーは、ユリアとフォスと共に温泉街へと転移し、そのまま魔の森の奥へ向かった。

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