第317話:魔王と魔人 8

 俺が最初に取り組んだのは、魔導具作りだ。

 魔王だけではない、きっと強い部下や側近なども出てくるだろう。

 そんな相手にも通用するような強力な魔導具を作らなければならない。

 俺が持つ魔導具の中で最強なのは森谷から貰った断罪の刃だが、これは俺の魔力をどれだけ注ぎ込めるかによって威力が変わってくる。

 一対一で確実に当てられる状況であれば強いが、回避されてしまうと魔力を無駄にしてしまうし、多対一の状況だと使い勝手に困ってしまう。

 すでにいくつかの攻撃用魔導具を作ってはいるが、広範囲かつ高威力の魔導具の開発をしなければならない。


「……よし、やるか!」


 俺は鑑定スキルを使い各属性の魔導具の作り方を鑑定していく。

 火、水、風、雷、光など、先生や円が持つ属性をメインに作ってみる。

 これは鑑定スキルによる助言で、俺が見たことのある属性の方がより強力な魔導具を作ることができると出てきたからだ。

 汎用性を聞かせるのであれば様々な属性で作る方がいいんだろうけど、今回は威力に極振りできればと考えているので、見たことのある属性で作ることにした。


「どれどれ……ふーむ、んっ? なんだ、一つの属性だけでやらなくても、属性を組み合わせることでより強い魔導具を作れるのか」


 組み合わせは結構自由が効くみたいだけど……よし、まずはこれでいってみるか。


「火と風、これなら火力を高められるってことだよな?」


 相談相手が鑑定スキルしかいない今、実際に作ってみてから威力を確かめるしかない。

 文字や数字だけで説明されても、実際に見てみないと分からないことも多いからな。


「必要な素材は……うげぇ、持ってたかなぁ」


 高威力を追求するのであれば、それに見合った素材が必要になる。

 鑑定結果が表示してきたのはドラゴンや精霊など、強そうだったり珍しい存在だったりと、手に入れるのが明らかに難しそうな名前がずらりと並んでいる。


「森谷から貰った魔法鞄にも確かいろいろと入っていたような……これこそ鑑定を使うべきだな」


 正直なところ、魔法鞄に何がどれだけ入っているのか、俺はちゃんと把握できていない。というか、するつもりがない。

 何せ森谷ですら把握できていなかったものを、どうして俺が把握できるのだろうか。

 ここで使わないと、鑑定スキルの名前が泣いてしまうぜ! ……ただ面倒なだけだけどな!


「鑑定、魔導具作りに必要な素材の入手方法」


 …………ほらね。森谷の奴、持っているじゃないか! 危なく素材探しの旅に出かけるところだったよ!


「とりあえず火と風を組み合わせた魔導具は作れそうだな。他の組み合わせに必要な素材も確認しておくか」


 実際に作るかどうかはさておき、俺はいろいろな組み合わせで作れる魔導具の素材を持っているのかどうか、それを確認するための作業に入っていく。

 持っていない素材もいくつかあったが、大半の素材は森谷から貰った魔法鞄に入っていた。


「……あいつ、なんでこんなにいろいろな素材を持っていたんだ?」


 まあ、一〇〇年以上もの間で生きてきたし、元々は勇者と共に世界を救うたびにも出ていたのだから、行った先で貴重な素材を手に入れていたというのもない話ではないか。


「とりあえず、森谷が目を覚ましたら使った素材を申告しておかないとな」


 勝手に使うのだから申告は必要だ。

 とはいえ、森谷なら許してくれるだろう。

 短い付き合いだけど、森谷がそういう人間だと俺は考えている。


「何より森谷だったら、なくなったら気軽に取りに行きそうだもんな」


 そんなことを考えながら、俺は魔導具作りを始めたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る