第305話:勇者と剣聖と鑑定士 45
現状、生徒会長たちは王城の地下にある牢屋にプリズンロープを巻いたまま閉じ込めてある。騎士たちが入れられていた、あの場所だ。
プリズンロープもそのままにしてあるのでスキルを使って逃亡を図ることもできず、彼らは渋々おとなしくしている。
特に生徒会長以外の三人は気性の激しい面子で、最初の頃は大声で喚き散らしていたのだが、生徒会長が何やら告げるとすぐにおとなしくなった、という感じだ。
何を告げたのかはわからないが、何かを企んでいるということはないだろう。鑑定スキルがそういった結果を示していないからだ。
ならば何を告げたのかと考えた時に鑑定を使うと、単に煩かったから、らしい。
……まあ、煩かったな。地下へ向かう階段の上にまで声が響いていたわけだし。
そんなことを考えながら今では静かになった階段を下りていき、鉄格子を挟んで生徒会長たちと向かい合う。
「……処遇は決まったのか?」
そう口にした生徒会長の目は、いまだにギラギラと力強くこちらを睨んでいる。
何がなんでもここから逃げ出すつもりなのだろうが、そんなことをさせるわけにはいかない。
ディルクさんのためでもあるが、一番の理由は先生と新のためだからだ。
「神貫君。今でもマリアさんのところへ戻りたいのですか?」
「当然ですよ、先生。俺はあの方を愛しているから」
「その気持ちが偽りのものであってもか?」
「誰が偽りだと決めたんだ? 俺の気持ちは俺にしかわからない、そうだろう?」
先生の言葉にも、新の言葉にも耳を貸そうとしない生徒会長。
だが、新の口にした偽りという言葉は生徒会長の気持ちに対して発せられたものではない。
「偽りの愛を示していたのは、マリアの方だって言っているんだ」
「……お前は黙っていろ、真広」
「神貫君!」
「どうやってお前はここに来た? どうして新や先生と一緒にいる? どうして――死んでいないんだ?」
「光也! お前、なんてことを!」
「お前さえいなければ、マリア様が捕らえられることもなかった。お前が死んでくれていれば、邪魔者が現れることもなかったんだ!」
……こいつ、どうして俺にだけ毎回きつい当たりをするんだろうか。学校でもそうだったし、こっちに来てもその態度は変わらない。
俺が生徒会長に何かをしたという記憶もないんだよな。
「お前がマリア様を……マリ、ア……マ……まり……ま……まど、か?」
「おい、大丈夫か? 生徒会長?」
「……がああああっ!」
「……いや! いやよ、いやああああっ!?」
「……ぎゃはははは! ぎぎぎぎ、がががが!」
……おいおい、どうなっているんだ? 生徒会長だけじゃなく、土門たちまでおかしくなっちまったぞ?
「真広、どうなっているんだ!」
「真広君!」
「か、鑑定! 神貫光也たちの状態!」
俺はすぐに鑑定を四人に掛ける。
「何かわかったか、トウリよ」
「……おいおい、マジかよ! 四人とも――呪いを受けていやがる!」
だが、おかしいぞ。
どうして最初の鑑定で表示されなかったんだ? 全てを知ることができる【神眼】じゃないのかよ!
「……なるほど、そういうことか」
「何かわかるのか、森谷!」
珍しくまじめな表情を崩さない森谷に全員の視線が集まった。
「神級職の目を欺くにはどうしたらいいと思う?」
「そんなこと知るかよ! 神級職以上の職業とか言いたいのか?」
「もしくは、同等かだよ」
「だからそんなこと知らないって! ……いや、そうか。俺が森谷を鑑定することができなかったのは、そういうことか?」
いや、でも、神級職はそうそう出てこない職業なんじゃないのか? 俺と森谷がいたのだって、こいつが何百年と生きられたからなんじゃないのか?
「真広君! 今はみんなを……みんなを助けるにはどうしたらいいの!」
「そうだ! 鑑定、呪いを解く方法!」
……頼む……早くしてくれ、鑑定スキル!
「……出た! 結果は……は? うそ、だろ?」
「どうしたの、真広君? 早く教えてちょうだい!」
「真広、早く!」
「……助け、られない」
「「……え?」」
「……助ける方法が、鑑定できない」
……【神眼】じゃあ、どうしようもないってことか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます