第299話:勇者と剣聖と鑑定士 40

「ドローンを飛ばすか」


 信じていないわけじゃないけど、あれだけの爆発だ。どうしても気になってしまう。

 俺はドローンを飛ばして爆発の方向へ飛ばすと、新と一緒にカメラを通した映像を受信端末で確認する。


「おい、真広! 何を見ている! それはいったいなんだ!」

「答えなさい、あなた!」


 いやいや、なんで敵の追及に答えないといけないんだよ。というか二人とも、状況を理解しているのか?


「お前たちは縛られている。俺たちは自由。この意味わかるか?」

「生殺与奪の権利は俺たちが握っている。それは元王族であっても、元クラスメイトであっても変わりはしない」

「あ、新!」

「お前は俺を殺そうとした。この事実は変わらないんだよ、光也」

「くっ!」


 どうやら新も相当怒っているようだ。

 まあ、そうだよな。親友だと思っていた奴が剣を持って襲い掛かってきたんだから。


「……大丈夫か、新?」

「あぁ、問題ない。それに、こうなることは予想していたからな」

「そうか。なら、今はひとまずドローンの映像を見ておくか」


 俺には新の心情を理解することはできない。

 だが、少しでも気持ちが晴れてくれればと思い、端末を新に手渡した。


「……おっ! 映ったぞ」

「……あれは、先生とライド様とハクだな。前に立っているのが森谷さんか?」


 どうやら森谷は俺との約束を果たしてくれているようだ。

 ……先生、やっぱり生徒相手に本気を出しきれなかったんだな。

 ということは、さっきの爆発は森谷か、相手の攻撃ってことか。

 森谷なら納得できるが、もしも相手の攻撃であれば、なかなかに脅威だな。


「……まあ、森谷には絶対に敵わないんだけどなぁ」


 支援職の神級職とは違い、森谷は戦闘職の神級職だ。

 魔導士ということで接近戦は苦手かもしれないが、今の森谷にはハクがついている。

 先生たちを守るために下がっているが、いざとなれば前線に出て森谷を援護することも可能だろう。

 というか、ハクだけでも勝てると思う。

 おそらく先生が森谷とハクにお願いして、一人で戦っていたんだろうな。


「あとから先生に文句を言われそうだな」

「先生も真広や俺たちの気持ちを汲んでくれるさ」

「だといいんだけどなぁ」


 俺としてはやはり、先生の命とあいつら三人の命は平等ではない。一対三とはいえ、先生の命の方が断然重いのだ。


「新。あいつらの職業ってわかるか?」

「あぁ、わかる。上級職だったから、訓練で組まされることも多かったからな」


 そこから教えてくれた内容は、土門力が鋼鉄人メタルマン、渡辺忍が隠密頭シャドウ、小田春樹が多彩武器ウェポンマスターだとか。

 全員が戦闘職であり、さらに接近戦を得意としている。

 ……どうやら、動き出したみたいだな。

 土門が全身を鋼鉄に変化させて突っ込んでいき、渡辺が影に潜り森谷の死角へ移動、小田が様々な武器を魔法鞄から取り出しては投擲して攻撃を仕掛けている。

 魔導士にとっては大問題なはずだが、森谷は涼しい顔で立っており、軽く指を鳴らすしぐさをすると同時に突風が吹き荒れた。


「おぉ、影の中にいたはずの渡辺が無理やり引きはがされて吹き飛んだぞ」

「渡辺だけじゃない。鋼鉄化していた土門も、小田は武器と一緒に吹き飛んだ」


 特に土門は重量も鋼鉄と同等になっているようなので、その重量は相当なものになっているはず。

 俺なんかが圧し掛かられたら全身の骨が粉々になってしまうだろう。

 そんな重量の土門ですら吹き飛ばすなんて……あの突風、相当すごい魔法なんだな。


「あの三人の戦い方を見ていると、さっきの爆発は間違いなく森谷だな」

「この勝負、森谷さんの勝ちだな」


 そもそも負けると思っていなかったけどな。

 あとは先生にも渡しているプリズンロープで三人を縛り上げてくれれば、万事解決だな。


「それじゃあドローンをディルクさんたちのところに飛ばしてみるか」

「もしも危険な状況であれば、駆け付けないとな」


 正直なところ、ディルクさんたちの方が心配ではある。

 魔導具を渡しているものの、全員が現地人なので以上に強い人間が一人もいない。

 三人とも実力者なので問題ないとは思うが、果たしてどうなっているか。

 俺は急ぎでドローンを宿舎の方に飛ばした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る