第297話:勇者と剣聖と鑑定士 38

「――……核爆弾、なわけあるかよ」


 そんなことをしたら、俺たちだってただじゃすまないし、この辺りの土地が汚染されてしまう。

 それに、俺がディルクさんに文句を言われてしまうじゃないか。


「さっきのは何だったんだ、真広?」

「あれは単なる爆弾だよ。ただ、効果範囲を絞って威力を凝縮したけどな」

「……そんなことができるのか?」


 驚くのも無理はない。だが、できちゃうんだよな。

 まあ、魔導具だからできることなんだけど。

 レーヴァテイン本来の使い方は俺が使っていた通り、火の玉を撃ち出すこと。魔力量によりその威力が変わる、そんな感じだ。

 だが、一発逆転の方法として魔導具を犠牲にしてしまうものの、今のような大爆発を発動することができる。

 そして、その威力は周囲へ広がるのではなく、発動と同時に結界魔法が発動し、その中に凝縮される、という仕組みだ。


「……えげつないな」

「そうか? まあ、マリアが無事かどうかは置いとくとしても、どちらにしろ生徒会長が守ろうとするだろう?」

「あいつの行動を見るに、そうだろうな」

「なら、問題はないさ」

「……レーヴァテインもそうだが、真広の考え方もえげつないな」


 ……そうか? まあ、生徒会長が守らなければマリアは死ぬわけだが、絶対に捕らえてこいとは言われていないし、結果はどちらでも構わないさ。

 まあ、目の前に人死には見たくないので、生徒会長が守ることを願ってはいるけどさ。


「だが、マリアが転移魔法を使っていたらどうするんだ? 結界魔法とはいえ、相手の魔法を阻害することはできないんじゃないか?」

「まあな。だが、きっと大丈夫だ。マリアはおそらく転移魔法を――使えない」

「……使えない? それはいったい……いや、今はいいか。事実のようだしな」


 爆発が起きてからすぐに結界魔法は解けている。

 黒煙が徐々に晴れていく中、二人の姿がはっきりと見えてきた。


「……かはっ!」

「あなたたち、同郷ではないの!」

「その同郷を引き離したのは、どこのどいつだよ」

「真広の言う通りだ。お前さえいなければ、光也が道を踏み外すこともなかった」

「……に……逃げろ……マリ、ア……」

「コウヤ様……」


 おいおい、生徒会長。

 こんなになっても、新がお前を助けに来ても、お前は新ではなくマリアを選ぶってのかよ!


「……わかりました、コウヤ様」


 ――ゾクッ!?

 ……こいつ、マジか? そこでそんな気持ちの悪い笑みを浮かべることができるのか?

 っていうか、まさか生徒会長を残して自分だけ逃げるつもりかよ!


「くっ! は、早く魔導具を――」

「セイントソード!」

「危ない、真広!」


 光の剣が生徒会長の手の中から顕現すると、一直線にこちらへ伸びてくる。


「新! これを頼む!」

「おい、真広!」

「お前だけでも殺してやる! 真広おおおおぉぉおおぉぉっ!!」


 俺はマリア用に作った魔導具を新へ投げつけ、すぐにバナナを口へ詰め込む。

 正直、一時的に能力を上げる果物を見つけたばかりの頃は間に合わなかっただろう。しかし、今となっては――


「ヴァナナぼひぃちびょうふぃふぁいでふぁふぇふぁふぇる(バナナを一秒以内で食べられる)!」


 魔力を倍にした俺は、防御用魔導具が耐えてくれることを祈りながら、セイントソードの直撃を受けた。


「ぐっ! 負けるかよおおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉっ!!」

「死ねええええ! 真広おおおおおおおおぉぉぉぉおおぉぉっ!!」


 ここで俺が折れたら意味がなくなる。

 俺が勝ってこそ、マリアを捕らえて生徒会長を助けることができるはずだ!

 ……だが、魔力の消費が、鑑定結果以上に、早い!


「追加でバナナを!」


 ……んぐ……んぐぐ……ぷはっ! うっし、いける!


「新! 行け!」

「……任せたぞ、真広!」


 新は行った。ならば、あとは俺が耐えるだけだ。

 さあ、こっちにこい、集中していろ!

 正直なところ気は進まないが、俺がお前を止めてやるよ! なあ、生徒会長!

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