第286話:勇者と剣聖と鑑定士 27

「鑑定、マリア・シュリーデンの居場所」

「「……は?」」


 ディルクさんとフィリアさんが同時に困惑の声をあげた。

 そうでしょうね。まあ、この反応はすでに見飽きたので、俺は気にせず鑑定結果が出るのを待つ。


「……マリアはロサリンドという都市にいるみたいですけど、そこはロードグル国の首都ですか?」

「……」

「あの、ディルクさん?」

「……ん? あ、あぁ、そうだな」

「真広君、神貫君たちの居場所もわかるかしら?」

「ちょっと待ってね、先生」


 魔力を確認。……あと一回は、このままでも大丈夫そうだな。

 他の奴らもきっと同じ場所にいるだろうと考えて、俺は生徒会長の居場所を鑑定することにした。


「鑑定、神貫光也の居場所」


 ここでもディルクさんとフィリアさんは何をしているのか理解できない、といった感じで俺を見ている。


「……うん、生徒会長もロサリンドにいるみたいだな。他の奴らもきっと同じじゃないかな」

「そっか。ありがとう、真広君」

「ちょっと待ってくれ! ……おい、トウリ。お前まさか、鑑定でマリアたちの居場所を見つけ出したのか?」

「そうですよ」

「……神を冠する職業、なのだな?」


 おっと、どうやらロードグル国にも神を冠する職業については伝わっていたようだ。

 ……ってか、それならどうしてシュリーデン国に伝わっていなかったんだ? もしくは、伝わっていて俺の職業をちゃんと確認もせずに追放したのか?

 だとしたら、ゴーゼフ・シュリーデンはマジで頭が悪いとしか言いようがないな。


「……その通りです」

「なるほどな。であれば、マリア・シュリーデンが何者か知らない人物……この場合は異世界人か。彼らを側に置いている理由も納得だ」

「どういうことですか?」


 そこからの説明は、グランザウォールで赤城から聞いた内容とほとんど同じものだった。

 一緒にいる異世界人の中の誰かが力に目覚めるのではないかと近くに置き、その目覚めを今か今かと待っていると。

 実際は生徒会長一人だけなのだが、それをディルクさんたちが知る由はない。


「――となると、やっぱり早いところ救出するか何かしないと、生徒会長たちの命が危ないかもしれないな」

「用済みだからといって、簡単には殺さんだろう。我は首都近郊での戦闘を外壁の上から見ていたが、あいつの一撃は恐ろしく強かった」

「あいつ?」

「黒髪の若い剣士、光の剣が天を貫くほどに伸び続け、それが振り下ろされたのだ。光の直線状にいれば、我もここにはいなかったであろうな」


 ……天を貫くほどの、光の剣か。

 そんな規格外な芸当ができるのは、きっと特級職だけだろう。となれば、生徒会長以外にあり得ない。

 そう感じたのは俺だけではないようで、新と先生もやや俯き加減になっていた。


「……ご無事で何よりです」

「その者とは別は四人の強者がいたとも聞いた。その者たちもきっと異世界人であろう」


 四人? ……あぁ、そうか。その時は赤城もまだマリア軍の一員だったんだ。

 生徒会長を除くと残りは三人。土門どもんちから渡辺わたなべしのぶ小田おだ春樹はるきだったか。

 ……うーん、正直なところ、顔が思い出せない。全く関わってこなかった奴らだわ。


「新、他の三人の顔って覚えているか?」

「覚えているが……真広、まさか忘れたのか?」

「いやー、全く関わってこなかったからさー」

「お前なぁ」


 なんだかものすごく呆れられてしまった。

 まあ、最終手段では鑑定スキルが役立つだろうし、顔を忘れていても問題はない……よな?


「そ奴らはもしかすると、お前たちよりも強いかもしれんぞ?」

「レベル差は多少あるかもしれないけど、まあ大丈夫じゃないかな」

「自信ありげだな。それも先ほどの魔導具が関係しているのか?」

「いいえ、違います。単に――実力差ですよ」


 新は特級職だし、先生は俺たちとは違ってレベルも高く、同レベルでやり合えるだろう。

 そうなると、装備の質がものをいってくるだろうけど、こちとら魔の森で狩った魔獣の素材をふんだんに使用した装備を身に付けているのだ。

 そう簡単に負けてやるつもりはないさ。


「なるほどな。まあ、あれだけの実力を見せつけられては、文句も言えんか」


 最後にニヤリと笑ったのがどういう意味だったのかはさておき、話し合いはこれで幕を下ろした。


「今日はもう遅い、ここに泊まっていけ」

「でも、いいんですか?」

「あれだけの食糧を提供してもらい、こちらからの情報はほとんど必要なかっただろう。他にできることといえば、これくらいしかないからな」


 鑑定スキルを使えば得られる情報ではあったけど、無駄に疲れなくて済んだのでありがたかったんだけどなぁ。

 とはいえ、せっかく寝床を提供してくれるというのだから、断る理由はなかった。


「それじゃあ、お言葉に甘えます」

「今回は本当に助かった、礼を言うぞ」


 そして、ディルクさんが改めてお礼を口したところで、俺たちは解散したのだった。

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