第282話:勇者と剣聖と鑑定士 23

 さて、ディルクさんとのやり取りは置いておくとして、戦況の確認に集中しよう。

 新たちを信頼しているし、サニーやハクがいるのだから万が一ということもないだろう。

 とはいえ、この目で確かめなければやっぱり安心できない。

 三人で端末を見るのは暑苦しいかもしれないが、そこは俺が気にすることではないだろう。


「さて、空中爆撃は問題なし。相手の魔法もサニーまでは届かないみたいだ」


 となれば、やはり気にするべきは新たちのところか。

 この戦場の中では敵陣の実力者と相対するわけだし、万が一がないとも言えない。……主に、ギースさんの方で。

 ギースさんは二番手との戦闘なのだが、それでもレベルという面で見れば拮抗している。

 職業もどちらも上級職だし、果たしてどうなることやら。


「……おっ! そろそろぶつかるみたいだな」


 あちらの総大将と副将が動き出した。


「ふむ、あの二人を止めるつもりなのだろうな」

「ふーん、無理だと思うけどねー」

「部の心得を持たない私にはわかりませんが、トウリ様が送り出したのですから大丈夫なのでしょう」

「ほほう? 相当な信頼を寄せられているようだな、お主は」


 もう、ライドさん! 余計なことを言わないでくれよ!

 ほら、ディルクさんが横目でめっちゃ見てきてるんですけど!


「そ、そんなことより! ぶつかりますよ!」


 先手を仕掛けてきたのは敵側の総大将だ。

 大剣に真っ赤な炎を纏わせており、それを振り下ろして強力な炎を前方に放出した。

 ……おいおい、こいつ。仲間を犠牲にしながら新たちを攻撃しやがったぞ!


「こいつ、最悪だな」

「本当ですね」

「僕が魔法を一発落とそうか?」

「「……え?」」

「あーはははー! 森谷、冗談が面白いなー!」


 お前が手を出したらさらに面倒が増えそうだから止めてくれ! 特にディルクさんからの追及がヤバそうだから!

 ……だからこっちを見るなっての!


「おっ! ギース様が仕掛けましたよ!」

「相手も二手に分かれたみたいだねー」

「ふむ……あの副将、強いな」


 おっと、ディルクさんは気づいたみたいだ。

 マリア軍の総大将と副将だが、その実力は大きな差がある。それも圧倒的な差がだ。

 それにもかかわらず弱い方が総大将で、強い方が副将って、どういうことだろう。

 先に剣を合わせたのはギースさんと総大将か。

 筋力は総大将に分があるが、速さと器用はギースさんの方が高い。

 どちらも自らの土俵に持ち込めれば、という感じだが……まあ、ギースさんの方が上手っぽいな。

 おそらく総大将は先ほどの魔法で片付けられると思っていたのだろう。

 もしくは、実戦経験があまりないか。

 もしも後者であればギースさんが負けることはないだろう。彼は実力でAランク冒険者の座を手にした本当の実力者なのだから。


「それじゃあこっちは……へぇ、あの副将、あるじゃないか」


 新と正面からまともにやり合っている。

 鑑定した時に出てきた身体強化魔法を使ってステータス差を埋めているのだろう。

 だが、魔法はあくまでも魔法だ。魔力が尽きてしまえば本来のステータスで戦わなければならなくなるし、魔力枯渇もあって普段通りの動きができなくなるはず。

 新としては時間を掛ければ掛けるほど、相手が自滅するという状況なのだが……まあ、そうなるよな。


「あいつ、真正面から副将を叩き潰すつもりだな」


 ここまでされれば相手も心が折れるに違いない。

 ……まあ、逃がすつもりは全くないんだけどな。


「……ふむ、これは約束は果たさなければならないようだな」

「……よろしくお願いしますね」

「いいや、こちらの方こそよろしく頼むぞ、トウリよ」


 ……この人、いつの間に俺の名前を覚えていたんだよ。

 そんなことを考えていると、ギースさんが総大将の首を刎ね、新が副将を叩き潰したことで、この場での勝利が確定した。



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