第280話:勇者と剣聖と鑑定士 21

「――俺が総大将とやる」

「――ダメだ! 俺にやらせろ!」

「……おーい。ハクの上で揉めないでくれよー」

「……クゥゥン」


 総大将と副将とやってもらうと言ってからというもの、新とギースさんは誰がどいつた戦うのかで軽く揉めていた。

 当然ながら総大将の方が強いと思っているのだろう、二人ともそちらと戦いたいと引く気がない。

 ただ、実際は副将の方がレベルも高くと強いみたいなんだけど……そこは黙っておこうかな。なんていうか、面白そうだし。


「真広君。私はもう行っていいのかしら?」

「お願いします、先生。サニーは高度を余り下げるなよ。下げ過ぎると、魔法の的になるからな」

「ビギャギャー!」

「よろしくね、サニーちゃん」

「ビギャ!」


 先生を背中に乗せたサニーが羽ばたくと、周囲に砂煙が舞い上がる。

 そのまま上昇していくと、先生が軽く手を振りながら前線へと飛んでいってしまった。


「……本当に乗っていったのだな」

「俺の従魔ですからね」

「従魔か……それは我にも扱えるものなのか?」

「それは、どうでしょうかねぇ?」

「なんだ、わからんのか?」


 だって、基本的には森谷が全てやってくれたようなものなんだよな。

 従魔契約については鑑定を掛ければわかるんだろうけど、俺にはサニーがいるし、追加の従魔が必要なわけでもなかったし、鑑定はしていない。

 というわけで、俺の視線は森谷へ向いた。


「……すみませんが、言えません」


 森谷と目が合うと、彼はニコリと微笑みながら首を横へ振った。

 これは言ってはダメだという合図だと察し、言えないと口にした。


「むっ……まあ、仕方がないか」


 ディルクさんは意外とあっさり引いてくれた。

 何か企んでいるのではないかと疑いたくなるが、今はどうでもいいか。


「ほら、先生も行ったし、二人もさっさと行きなって」

「……はぁ。わかった、俺が副将とやろう」

「おっ! マジか、アラタ!」

「あぁ。どうせ引かないんだろう?」

「当然だ! よーし、やる気が出てきたぜー!」


 やっぱりこうなったか。

 新は相手を見ながら押し引きができる奴なのだ。

 それに、実力的には新の方がギースさんよりも上だし、副将の相手を新がしてくれるのであれば、俺も安心して送り出せるというものだ。


「それじゃあ、気をつけてな」

「任せろ」

「行ってくるぜー!」

「ガウガウッ!」


 ハクが全力で駆け出すと、そのあまりの速度にディルクさんや反乱軍の面々は唖然としていた。


「……な、なんだ、あの速度は!」

「まあ、ハクですからね」

「そもそも、空を飛ぶ従魔など、襲われたら成す術がないであろう!」

「だから強いんですよねぇ、サニーは」

「……どうやら今日は、我の常識が一気に覆されるかもしれんなぁ」


 腕組みをしながら顔を顰めているディルクさんを見て、俺ははははと苦笑いを浮かべた。


「しかし……本当に三人と二匹だけで大丈夫なのか?」

「心配してくれるんですか?」

「皆を助けてくれた者たちだからな。立場上、簡単には信じられないが、無理をしてほしくないとは思っているよ」


 これは意外な答えが返ってきた。

 ライドさんへ視線を送ると、彼はニコリと笑い小さく頷く。

 ディルクさんのことを知っていたわけだし、その性格もある程度は理解しているということだろうか。


「それなら、反乱軍も前に出る準備をお願いできますか?」

「なんだ、助けてほしいのか?」

「まさか。みんなが強いとはいえ、これだけ広範囲の戦場をカバーできませんからね。総大将と副将が倒された後の掃討戦に備えておいてほしいんですよ」

「……なるほど、そういうことか。わかった、準備しておこう」


 そう口にしたディルクさんは踵を返すと、反乱軍が待つ場所へ足早に去っていった。



※※※※

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※※※※

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