第279話:勇者と剣聖と鑑定士 20
「ちょっと、ライドさん! 自分は戦わないからって、なんでそう力尽くの案ばかり出してくるんですか!」
俺が抗議の声をあげると、なぜか後ろから肩を掴まれてしまった。
「……なんで止めるんだよ、新?」
「あー……その、なんだ」
「もう介入しちゃったわけだし、戦うのは別に構わないかなー、ってね」
「っつーか、その方が話がスムーズにいくんだろう? なら戦おうぜ!」
……そうだった。新も先生もギースさんも、戦闘狂だったわ。
いやいや、ここで俺が諦めてしまったら、今後もライドさんが力尽くの案ばかりを出してきて、俺たちが難儀をする羽目になってしまう。
「介入はしたけど、絶対に戦わないといけないわけじゃ――」
「いいだろう! 貴様らの武勇、見せてもらおうじゃないか!」
…………え、ええぇぇぇぇ? ディルクさん、マジかよぉぉぉぉ。
「だが、我らからは一兵たりとも貴様らに貸し与えるようなことはしないが、構わないな?」
「えぇ、もちろんでございます」
ちょっと、ライドさーん? さすがにそれは無理があるんじゃないですかねー?
「その代わり、私たちが勝利を捧げることが叶いましたら、お話を聞いていただけますでしょうか?」
「約束しよう」
「ありがとうございます」
何やら勝手に約束が取り付けられ、そして振り返ったライドさんがニコリと笑った。
「いやいや、ニコリ! じゃないですよ!」
「皆様ならどうにかなるでしょう?」
「投げやりだなあ!」
「よろしくお願いいたします、トウリ様」
……この場合のよろしくというのは、鑑定をよろしく、という解釈で間違いないよなぁ。
「……はああぁぁぁぁ。わかりましたよ、やればいいんでしょう、やれば!」
「助かります」
俺たちが戦うことで話が進んじゃったわけだし、やらないわけにはいかないでしょうよ。
それに、新たちから戦いたい空気をガンガンに感じているので、ここでやらないと言ってしまうと俺だけが我がままを言っているように見られてしまうかもしれない。
……俺はただ、命を大事にの作戦でいきたいと思っているだけなんだけどなぁ。
「鑑定、俺たちだけで勝利を手にする方法」
「……? 何を言っているのだ、そいつは?」
そりゃそうだろうな。鑑定で勝利方法がわかれば、誰も苦労はしないもんな。
だが、俺にはそれができてしまうのだ。
「……新たち、ちょっと相談だ」
俺が声を掛けると、全員が待ってましたと言わんばかりに勢いよく集まってきた。
「……あの、なんでディルクさんがいるんですか?」
「ん? なんだ、我に言えないことでもあるのか?」
「……ライドさん?」
「よいのではないですか、トウリ様。どのみち、知られることになるでしょうし」
「どういうことだ?」
いや、それは俺が聞きたいんですけど。
とはいえ、ライドさんのことは信頼しているし、彼が大丈夫と言うなら大丈夫なのだろう。
「ひとまず、戦いたいのは新と先生とギースさんだけか?」
「ガウガウ!」
「ビギャ!」
「……ハクとサニーも参戦決定っと。森谷はどうする?」
「僕は見学でいいよー」
「了解」
「……あのような子供がどうして戦場に?」
森谷の正体を知ったら度肝を抜かれるんだろうなぁ。
「それなら……先生がサニーに乗って空から爆撃、新とギースさんはハクに跨って広い範囲で暴れまわってくれ」
「おい、真広。それだと俺たちではなく、ハクが暴れることになるんじゃないのか?」
「そうだぜ! 俺たちも武器を振り回してえんだよ!」
「安心してくれ。ハクには大量の有象無象を倒してもらうだけだからさ」
この二人、手ごたえのある相手とやって怪我でもしたらどうするつもりなんだよ。
だがまあ、二人が直接戦った方が勝率も高いし、そっちを選択するしかないんだけどな。
「敵軍の総大将と副将、そいつらの相手を二人にはしてもらう予定だ」
俺がそう口にすると、二人は顔を見合ったあと――ニヤリと笑った。
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【一週間の宣伝マラソン!三日目!】
発売前日です!
ここまで来ると、緊張でドキドキしているのか、それともドキドキを通り越してバクバクしているのか、わけがわからなくなってまいります。
ぜひとも皆様、書店でお見かけしましたらお手に取っていただけると嬉しいです!
タイトル:職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~ 2
レーベル:MFブックス
イラスト:ゆのひと先生
発売日:2022/08/25
ISBN:9784046816559
何卒よろしくお願いいたします!!
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