第277話:勇者と剣聖と鑑定士 18

 馬で二時間は掛かると言われていた道のりを、俺たちは三〇分という短時間で踏破することに成功した。

 とはいえ、戦場に近づくにつれて戦闘音が大きくなり、風に乗って砂煙がこちら側へも押し寄せてきている。

 剣戟音や爆発音を耳にするに、相当激しく戦っているのかもしれない。


「どっちが反乱軍かわかるか?」

「鑑定してみるか」


 ……ふむ、白い隊服じゃない方か。

 どうやらマリア軍は隊服を統一しているみたいで、わかりやすいな。


「白い隊服じゃない方が反乱軍だな」

「なら、そっちを倒していけば反乱軍から攻撃を受ける可能性は低くなるな」

「敵の敵は味方になってくれればいいんだけどな」


 反乱軍から見れば、俺たちは完全に異物である。

 マリア軍を攻撃しているからといって、反乱軍に攻撃を仕掛けて来ないという保障はどこにもないのだ。


「可能性があるのであれば、やるべきでしょうね」

「だな。一応、クラスメイトがいないかも鑑定しておくよ、先生」


 ……予想通り、いないみたいだな。


「いないですね」

「ありがとう、真広君。これなら――徹底的に魔法をぶっ放せるわ」


 えっ? いや、なんか先生、怖いんですけど?


「私の生徒たちを戦争の道具にした奴らなんて、ぶっ飛ばしてやるんだから」


 ……先生の笑顔が、怖いです。


「なら、初手は先生に任せるとするか」

「俺はどうしたらいいんだ? アラタが行くなら俺もついていくぜ!」

「ギースさんはなんでそんなに戦いたがるんですか?」


 冒険者だからとはいえ、戦闘は命の危険を伴う行為だ。

 ならば、極力避けたいと思うのが心理じゃないのだろうか。


「俺は戦うことに楽しみを覚えた冒険者だからな! Aランクになったのも、魔獣の討伐で活躍したからだぜ!」

「魔獣討伐以外にも活躍の場所ってあるのか?」

「まあ、色々だな! だが今は、突っ込んでいくことを考えるべきじゃねぇか?」


 ニヤリと笑みを浮かべたギースさんに、新も大きく頷いた。

 まったく、この二人は……いや、先生も含めると三人か。


「森谷はライドさんを守ってくれ」

「わかったー」

「ありがとうございます、タイキ殿」

「構わないよー。戦闘はみんなに任せるからねー」


 森谷が守ってくれるならライドさんは安全だ。

 ならば、俺たちは自分の心配をするべきだろうな。


「ギースさん、これを渡しておきますよ」

「あぁん? なんだ、こりゃ?」

「防御用魔導具です」

「…………ま、魔導具だと!?」


 おー! なんか久しぶりの反応だな、この驚き。


「大抵の攻撃なら、魔力が続く限り弾いてくれるはずなんで、持っておいてください」

「こ、壊したらどうすんだよ! 弁償なんてできねえぞ!」

「あ、壊れても大丈夫です。また作れるんで」

「…………作るだあ!? トウリがか!!」


 そりゃそうだよなぁ。驚くよなぁ。

 ちょっと、ライドさん。ギースさんの後ろで何度も頷かないの!


「というわけなので、貰ってください」

「もらっ!? ……はああぁぁぁぁ。なんか、これ分の仕事をするまでは離れられなくなりそうだぜ」

「そんな気にするものでもないですよ? マジで何個でも作れるんで」

「……金の生る木じゃねぇか」


 その言われようは初めてだな。

 ……まあ、悪い気はしないけど。


「それじゃあそろそろ、魔法をぶっ放してもいいかしら?」

「お願いします、先生」

「うふふ……楽しみだわぁ」


 ……ま、マジで怖いよ、先生!

 そして、先生が雷魔法で白い隊服を身に纏う兵士たちへ攻撃を開始した。



※※※※

【一週間の宣伝マラソン!一日目!】

 発売三日前となりまして、1巻の時と同様に一週間の毎日更新! 宣伝マラソンを行っていきたいと思います!

 毎回のことながら、私の地元では三日から四日は書店に並ぶのが遅れるので、しばらく見る機会はありません。。

 なので、書店で拙作を見る機会があればぜひとも教えていただければと思います!


タイトル:職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~ 2

レーベル:MFブックス

イラスト:ゆのひと先生

発売日:2022/08/25

ISBN:9784046816559


 2巻もゆのひと先生のイラストが最高となっておりますし、多くの加筆・修正を加えております!

 皆様、ぜひともよろしくお願いいたします!!!!!

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