第246話:温泉とおもてなしと騒動と 43
鑑定スキルが常時、赤城の居場所を把握してくれている。
ここ数日は本当に移動速度が異常であり、最初の予想通りで二日後にグランザウォールへ到着していた。
「そろそろ見えてくるよ」
俺の言葉に円たち全員が北の門から続く街道の先へ視線を向ける。
まだまだ先の方だが、確かに小さいながらも人影が見えてきた。
「本当に赤城さんだね」
「……さすがはユリア、この距離でも見えているんだな」
「本当にすごいね、ユリアちゃん」
「先生も見えないわ。御剣君はどうかしら?」
「俺も見えている……が、どうやら赤城も見えているようだぞ?」
新も見えているのかとツッコミを入れそうになったが、最後の言葉に俺たちは驚きと共に視線をすぐに前方に向ける。
俺の目には特に変わった様子は見えないが、あれでどうしてこちらが見えているとわかったのだろうか。
「真広、今のうちに赤城に勝利する方法を鑑定しておくんだ」
「それが良さそうね」
「わ、わかった」
見えている二人が低い声音でそう口にしたこともあり、俺はすぐに鑑定スキルを使おうとした。しかし――
――ドドンッ!
「うおっ!?」
「地震か!?」
「違うわ! これは――赤城さんよ!」
俺が鑑定スキルを使う前に、赤城の攻撃は始まっていた。
どんな魔法を使ったというのか、地面が割れてこちらを飲み込もうとしている。
「真広君!」
「早く鑑定をして、桃李君!」
「か、鑑定! 赤城笑奈に勝つ方法!」
実を言うと、俺は以前から赤城に勝つ方法を鑑定しようと何度も試していた。
しかし、鑑定スキルを使う度に方法や確率に変化が起きてしまい、明確な方法というものがわからないでいた。
ならばと直前で使おうと思っていたのだが、まさかあちらから先制攻撃を受けることになるとは思わなかった。
何せ、とりあえず昨日の鑑定結果を信じて北の門に布陣していたのだから。
「まさか、日ごとに強くなっていたわけじゃないわよな!」
「レベルは75から変わっていないから、それはないはずだ!」
ユリアの懸念はもっともだが、ステータスに関しては毎回の鑑定で確認していたので間違いない。
ならばと俺たちみたいに一時的に能力を上げる果物のようなものを持っているのかとも思ったが、そうでもなさそうだ。
スキルによる効果の可能性もあるが、そこは鑑定スキルでも出てこなかったので違うと思いたい。
可能性の話をするのであれば――
「来るぞ、真広!」
「うおっ! 了解、新は前に出て防御用魔導具を一発かましてくれ! 態勢が崩れたらユリアが突っ込んでくれ!」
「わかった!」
「了解!」
くそっ! 思考を巡らせる時間はないってことか!
赤城との戦闘において、サニーたちは北門の入り口で待機させている。
彼らと一緒に戦えばほぼ勝利は確実なのだが、それをしてしまうと俺たちで赤城を止めたことにはならない。
そして、唯一はっきりわかっている鑑定結果から、やはり俺たちだけで赤城を止めなければならいということなのだ。
「御剣いいいいっ! あんた、逃げ出したのねえっ!」
「逃げ出しただと? 違うな! 俺は、一歩前に進んだんだ!」
赤城はどこから取り出したのか、いつの間にか巨大な大剣を握りしめていた。
さらに大剣とは思えない速度で振り向かれるが、新も負けじと直剣を斬り上げてお互いの武器がぶつかり合う。
――ドゴンッ!
鈍い音が響き渡ると、地面を踏みしめていた新の足元が大きく陥没した。
「ぐうっ!」
「受け止め切れたんだねえっ! だけど――これで終わりだよ!」
勢いそのままに横回転を加えた一撃が、新の首へと迫っていく。
――ガキンッ!
「はあっ!? な、なんなのさ、これは!!」
直後、新に渡していた防御用魔導具が発動して赤城の大剣を弾き飛ばした。
予想外の迎撃に大剣は大きく上へと跳ね上がり、彼女は万歳のような態勢になってしまう。
「どっせええええいっ!!」
そこへ一直線に突っ込んでいったユリアの渾身の一撃が、赤城の腹部に直撃した。
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