第228話:温泉とおもてなしと騒動と 27

 ドラゴンステーキで大満足した陛下たちだったが、今度は別の意味で大興奮の品物が出されることになった。

 それは――日本酒である。

 森谷が長年……まあ、彼からするとそれほど長い年月ではないのかもしれないが、それでも時間を掛けてようやく完成した日本酒は、透明度が高く甘味もあってとても美味しい……らしい。

 大人組が美味しそうに飲みながらそう口にしていたのだが、その中に三歳児の姿をした森谷が交ざっていたのは非常に違和感を覚えてしまった。

 ホムンクルスの体だから問題ないのか、それとも森谷だから誰も言及しなかったのか、あの場で確認できなかったから放っておいたのだが、まさか陛下たちの前でも同じ光景を目の当たりにするとは全く考えていなかった。


「これは美味いのう!」

「美味い! うむ、美味いぞ!」

「……美味なだけではなく、透明でとても美しいですねぇ」

「でしょー! 僕もこの味を出すまで苦労したんだよねー!」

「ほほう! モリヤよ、これは王都でも作れるものなのか?」

「環境を整えることができれば可能だね。でも、結構難しいよー?」

「その製法、買わせてくれ! なんなら利益の四割……いいや、この美味さならば半々でも構わんぞ!」


 ……大人が子供を相手にお酒の交渉をしている構図。傍から見たらごっこ遊びでもしているのかと勘違いしてしまいそうだな。もしくはものすごく困惑する敵な。


「「…………あれ、何?」」

「あー、気にしないでくれ。あれ、俺たちより何百年も前に召喚された日本人だから」

「「…………子供だけど?」」

「……若返った、以上!」


 よし! 説明が面倒くさい! 間違っているわけじゃないし、構わないだろう!

 ……まあ、まだまだ困惑顔は崩れていないけどな。


「して、トウリよ!」

「えっ? あっ、はい!」

「これはなんじゃ!」


 っと、若干酔いが回った感じの陛下がにへっと笑いながら呼び掛けてきた。


「これはお酒のつまみです。軟骨系のコリコリ揚げ物、塩辛くしたスナック系、お酒を使った大人のお菓子、などなどです」

「お酒を使った菓子があるのですか?」


 おや? 予想外にも食いついてきたのはディートリヒ様だった。


「はい。こちら、チョコレートボンボンと言いまして、日本酒もそうですがその他のお酒も使った大人のお菓子になります」

「ふむ。では、一つ」

「俺はやはり揚げ物だな! うむ! これは! ……面白い触感だなぁ」

「では、我はスナックと言ったか? これを……ほほう、これも美味いのう」


 騎士団長は軟骨の触感が気に入ったのか、でかい声を発しなくなり軟骨のから揚げと日本酒を交互に口へ運んでいき、陛下は日本酒よりもポテチやフライドポテトに手を伸ばす回数の方が多い気がする。

 そして、ディートリヒ様なのだが……うん、ものすごく気に入ってくれたみたいだ。


「……あぁぁ。これは、なんとも濃厚でありながらも繊細で、だからこそ癖になってしまう悪魔の菓子ですねぇ。味が変わることもあって、次へ次へと手が伸びてしまいます」


 饒舌になっているだけではない。やや上を見つめながら語り出しているのだ。

 こんなディートリヒ様、見たことがないぞ。


「……さ、最後に、本日の料理を取り仕切った二人の料理人を紹介したいと思います」

「「「ぜひ!!」」」


 俺の言葉に三人の視線が一斉にこちらへ集まり、真宮と屋嘉さんがビクッとしていた。

 屋嘉さんはまだしも、真宮までビクつくとは思わなかったな。


「ま、真宮漣、です」

「や、やややや、屋嘉、すすすす、すみれ、ででです!」

「おぉっ! お主たちがか!」

「ドラゴンステーキに!」

「この繊細な菓子まで!」

「「は、はい!!」」

「「「ぜひ王都へ!」」」

「「む、無理です!!」」

「はいはーい! 料理人にレシピや調理魔導具を提供するのでその辺にしてくださーい!」


 まあ、こうなるわな。先に手を打っておいてよかったわ。

 陛下たちも約束を思い出したのか、ハッとした顔をしてすぐに乗り出した体を引っ込めてくれた。


「……お、おぉ、そうであったな、すまぬ」

「いえいえ、そうなるかなーとは思っていたので」

「料理人への指導、是非に頼むぞ!」

「「は、はい!!」」


 二人の平穏が守れたところで、今日の晩餐はお開きになったのだった。




※※※※

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イラスト:ゆのひと先生

発売日:2022/03/25

ISBN:9784046812827


書店でお見かけしましたら、ぜひともよろしくお願いいたします!!!!!

※※※※

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