第227話:温泉とおもてなしと騒動と 26
その後もコース料理としてスープや魚、肉料理などが次々と運ばれてくるが、陛下たちはそれをあっさりと平らげてしまう。
騎士団長に至っては何度もお代わりを申し出ており、作った分を全部腹に収めてしまうんじゃないかと心配になってしまう勢いだ。
しかし、ここに騎士が団長しかいないからこの程度で済んでいるのかもしれない。
騎士たちが固まっている宿ではもっと悲惨な料理の取り合いが起こっていたりして……よし、考えないでおこう! きっとみんながどうにかしてくれているはずだ!
「本日のメインディッシュになります」
先生がそう告げると、一際大きなお皿に乗せられた料理が陛下たちの前に並べられていく。
「ほほう? またしても肉料理か。じゃが、先ほどの料理も美味であったぞ?」
「はい。ですが、こちらはさらに良質な肉に多くの手を加えて調理しております。きっと陛下にもご満足いただけるかと」
「ふははははっ! 面白い、我はすでに満足しているが、それをさらに満足させるということか!」
「陛下! 早く食べましょう! というか、先に食べてもいいでしょうか!」
「落ち着いてください、ヴィグル団長。さあ陛下、ぜひとも先にお召し上がりください」
ディートリヒ様は落ち着いているなぁ。
「さあ、さあ!」
「圧がすごいぞ、ディートリヒよ」
……前言撤回。陛下に声を掛けているのに視線は肉にしかいってないわ。
「で、では、いただくとするかのう。……おぉ、ナイフが抵抗もなく入っていくぞ。まずは一口……ふおっ! こ、これは!!」
「「いただきます!!」」
「わ、我の感想の前だぞ、お主ら!」
陛下の言葉まで我慢できなかったようで、ディートリヒと騎士団長がステーキに食らいついた。
「こ、これは!」
「う、うううう、美味いぞ! 美味すぎる!」
ふふん。どうだ、うちの真宮の腕前は。
この肉を料理できたのも、上級職である真宮がいてくれたからだろうなぁ。
どうやっても調理することができず、ずっと魔法鞄の肥やしになっていた食材だし。
「ハ、ハルカよ! この肉はいったい何の肉なのじゃ!」
「うふふ。気になりますか?」
「「「なる!」」」
三人が声を揃えて返事をしたので、先生が笑みを浮かべながら答えた。
「こちらは――クイーンドラゴンのお肉になります」
「「「ド、ドラゴンだと! それも、クイーンドラゴン!!」」」
「はい。言ってしまえば、ドラゴンステーキですね」
「「「ドラゴンステーキ!!」」」
……いや、三人とも、先生の言葉を繰り返しているだけなんですけど。
しかし、陛下たちがここまで驚くということは、ドラゴンの肉というのは王都でもそこまで流通していないものなんだろうか。
「ドラゴンの肉って珍しいんですか?」
「そうですね。少なくても、私は初めて食べました」
「俺もだ!」
「儂は過去に一度だけ食べたことがあるが、それも他国の王を招いた時の席で、特別な時以外では食したことはないぞ」
「そうなんですか? ……先生、ドラゴンの肉って余ってます?」
「えぇ。ドラゴンステーキだけはこちらにしか出していないので、まだまだ余っているわよ」
「「「もっと食べたいです!」」」
……そんなに目をぎらつかせないでほしいんだけど。
「だ、大丈夫かな、先生?」
「うふふ、もちろんよ。真宮君に伝えて来るわね」
そう口にした先生が台所の方へ姿を消すと、三人はお互いに顔を合わせると、グッと拳を握りしめていた。
――その後、最初のステーキよりも特大に焼かれたドラゴンステーキが出されたのだが、陛下たちは難なく平らげてしまった。
……ドラゴンステーキ、恐るべしである。
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タイトル:職業は鑑定士ですが【神眼】ってなんですか? ~世界最高の初級職で自由にいきたい~
レーベル:MFブックス
イラスト:ゆのひと先生
発売日:2022/03/25
ISBN:9784046812827
よろしくお願いいたします!!!!!
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