第201話:温泉とおもてなしと騒動と 3
昼食を終えると自由行動になり、俺はレレイナさんに声を掛けてスノウと共に出かけることにした。
向かった先はレレイナさんの希望で……まさかの魔の森である。
「あの、レレイナさん? どうして魔の森?」
「レベル上げです!」
「どうしてそこまでレベル上げにこだわるんだ? 最初の頃はそうでもなかったのに」
「それは! ……まあ、そうですけど」
ふむ、やはり何か理由がありそうだな。
「せっかくだから俺に相談してみないか? レベル上げをするためだけにここに来たわけじゃないんだろう?」
俺が話を促すと、レレイナさんは少しだけ下を向いてしまったが、しばらくしてゆっくりと口を開いてくれた。
「……実は、実家のことで問題がありまして」
「円からも聞いたけど、マグワイヤ家が何か言ってきたのか?」
「……はい」
話を聞くと、どうやらグランザウォールでの仕事が上手くいっていることをいいことに、レレイナさんを戻して長男をこちらへ派遣したいと思っているらしい。
そして、レレイナさんの成果をそのまま長男に与えるつもりなのだとか。
「いや、レレイナさん以外は全くいらないんだけど? というか、間に合ってます」
「そう言ってもらえるのは嬉しいんですが、実家はそう思っていないんです」
「だからレベルを上げて実家の人間に負けない強さを得ようとしているのか?」
「……はい」
ふむ、ということはすでに問題はないのではないだろうか。何せ、レレイナさんは魔の森でこれでもかと魔獣を狩り続けているのだから。
「親父さんとか兄貴にのレベルとかわかっているのか?」
「それが、わからないんです。ですが、お父様もお兄様も王城で働いておりますし、きっとレベルも高いのだと思います」
「なるほどなぁ。それに、上級職だってか?」
「その通りです」
現状、レレイナさんのレベルは50まで上がっている。
このレベルは俺が王都へ始めて行った時に見た上級職、副団長のナルセンさんのレベルを大きく超えている高さだ。
魔導師の名門とはいえ副団長よりもレベルが高いとも思えないし、同じ魔導職であればレベル差で絶対にレレイナさんの方が強いと思う。
「レレイナさんはすでにレベル50ですよ? それよりも高いとは思えないんだけどなぁ」
「私もそう思うんですが、それでも不安で……」
長い間虐げられてきた反動だろうか、自分に自信を持てないんだろう。
知識については博識スキルを多用して自信を持てるようになっているが、強さに関しては比較対象が近くにいないのでどうしようもないのかもしれない。
……やっぱり、ディートリヒ様にマグワイヤ家がどうなったか聞いてみてもいいかもしれないな。
もしくは、マグワイヤ家当主の父親を呼んでもらうか? その方が真正面から否定できそうだし。
「ねぇ、レレイナさん。親父さんや兄貴もこっちに呼んでいるか?」
「えぇっ!? ダ、ダメですよ! そんなことしたら、すぐに連れて行かれちゃいます!」
「それをレレイナさんが力づくで否定したらいいんじゃないのか?」
「ち、力づくでって……それをして、負けたらどうするんですか? 私はまだ、ここを離れたくありませんよ!」
そこまで心配することなのかなぁ。
まあ、無理やりやらせるわけにはいかないし、今はやりたいようにやらせるのもありかもしれないな。
「わかった。それじゃあレベル上げに関しては止めないけど、無理だけはしないでくださいね。俺たちにはレレイナさんが必要なんですから」
「あ、ありがとうございます、トウリ様!」
「……本当に大丈夫だと思うんだけどなぁ」
「あはは、すみません」
レレイナさんもなんとなく察しているとは思う。最後は苦笑いを浮かべながら否定しなかったからな。
あわよくば、陛下たちがマグワイヤ家から派遣しているということでレレイナさんの親父さんだけでも呼んでくれていたら、やりようはあるんだけどなぁ。
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まだ話数は短いので、お時間ある方はぜひ読んでみてください!
よろしくお願いします!!
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