第185話:予定外のサバイバル生活 52
ユリアがポイズンドラゴンの毒に注意しながらちょっかいを出していると、そこにハクも合流する。
ハクは筋力がポイズンドラゴンの耐久力をやや上回っているのでダメージを与えられるが、それでも毒の可能性を考慮すると無理をするには見合わないのでヒットアンドアウェイで回避重視だ。
サニーははっきりと離れた場所から攻撃を加えている。なんと、エンシェントクリスタルドラゴンは闇属性の攻撃以外ならブレスとして吐き出す事ができる。
正直驚きだが、今のサニーだとまだまだ威力が足りない。液体の毒を気体にしないためにも水、もしくは氷のブレスで毒を薄めたり凍らさせたりと攻撃兼サポートに徹していた。
『グルアアアアァァアアァァッ!』
「うおっ!?」
ポイズンドラゴンが竜尾を振り回すと、俺が隠れていた大木がバキバキと音を立てながら叩き折られてしまう。
慌てて移動して潰されるのを逃れたが、どうやらポイズンドラゴンは俺に気づいていたようだ。
うーん、なんとか俺の存在を消してしまいたいんだが、どうしたものか。
「フラッシュ!」
このタイミングで円が眩い光をポイズンドラゴンの目の前に顕現させた。
『グルガガアアアアァァアアァァッ!』
あまりの眩しさに叫び声をあげたポイズンドラゴン。
円に視線を向けるとニコリと笑って頷いてくれたので、俺の意図を察しての事のようだ。ナイス、円!
ぶどうを口に放り込んだ俺は一気に駆け出すと、ポイズンドラゴンの後方に回り込む。
その動きすらも感じ取られていそうだが、そこでユリアとハクが攻撃を加えてくれて嫌がらせをしてくれる。
サニーもブレスを吐き出しており、それが鱗に覆われていない瞳を狙っているのだから面倒極まりないだろう。
さらに円が直撃させないよう魔法を放っていてポイズンドラゴンがウザがっている。
……これなら、いける!
後方からさらに近くの大木を駆け上ると真上まで移動して、俺は飛び降りた。
「断絶の刃!」
すでにバナナを食べている俺の魔力は1200ある。
断絶の刃は魔力400を使って耐久力1000以下なら耐久力を無視して切断できる魔法の刃を放つことができるのだが、実はそれ以上の効果も発揮できるのだ。
それは――さらに魔力を込めて断絶の刃を放つという事。
魔力800使えば耐久力2000以下、魔力1200使えば耐久力3000以下を耐久力を無視して切断できてしまうのだ。
森谷の事だからあえて伝えていなかったのだろう。自分で気づいて、こいつを倒してこっちまで来いという事なのだろう。
飛び出した断絶の刃は今まで放って来た刃よりも倍以上の大きさになっており、ポイズンドラゴンの背中ど真ん中にぶつかる。
どんな魔法も跳ね返すはずの鱗だが、断絶の刃は鱗の効果をものともせずに、まるで豆腐でも切っているかのようにスッと滑り込んでその巨体を両断していく。
その光景を真上から眺めていた俺は、断絶の刃が地面をも穿ちしばらくめり込んでいく瞬間まで見えていて、恐怖の魔導具だなぁと変な感想を思い浮かべていた。
「……やべっ、毒に突っ込む!」
ポイズンドラゴンは確かに倒したが、その血液は液体以上に猛毒になっている。
血だまりの中に落ちようものなら、俺は一瞬で絶命してしまうだろう。
そう思い助けを求めようとしたところ、グッと上に引っ張られる感覚を覚えて上を見た。
「……サニー!」
「……ビ……ビギャ~!」
俺の服に爪をひっかけて、なんとか近くの枝まで俺を運んでくれた。
その場でサニーを抱きしめて頬ずりすると、サニーはまんざらでもないのか嬉しそうな声を漏らしていた。
「桃李ー! 大丈夫ー?」
「桃李くーん!」
「大丈夫! そっちはどうだー!」
「「大丈夫ー!」」
上から見るとハクとグレゴリも問題なさそうなので、俺はホッと一息つく。
だが、ここで予想外の事態が俺たちに襲い掛かって来た。
――ゴゴゴゴゴゴ……。
「……な、なんの音だ?」
突如として地鳴りが聞こえてきて、地面も揺れている。
鑑定を掛けても周囲に魔獣の姿はなく、【アンノウン】と出てくる事もない。
森谷とは関係のない、全く別の何かが近づいてきているのかと警戒していると――
――ドバアアアアァァッ!
……断絶の刃が穿った穴から、水が噴き出したんだが。
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