第174話:予定外のサバイバル生活 42

 翌日、俺たちは急ぎグランザウォールへと戻っていった。

 もちろん、出発前に陛下へ報告も行ったのだが、その場には何故か騎士団長もいて面倒この上なかったが。


「サニーと一戦交えるまでは、帰さんぞ!」

「失礼します、陛下」

「な、何を淡々と言っておるか! サニーと一戦――」

「さあ行こう、さっさと行こう、迷わずに」

「五七五」

「なんでしょう、良い響きですね」

「俺を、無視するんじゃなああああい!」


 ……面倒というか、暑苦しかったな。

 最終的にはディートリヒ様が騎士団長を止めてくれたから良かったものの、そうじゃなかったら無駄に時間を取られるところだったよ。

 別れ際にちゃんとメールバードも献上してきたし、やり取りの際にこっちから追加分を渡す事もできるし、連絡手段についても問題はない。

 これなら、なんの憂いもなく魔の森の開拓を進める事ができるはずだ。


「戦わせてあげたらよかったのに」

「サニーまで脳筋になったら大変じゃないか」

「……ちょっと。サニーってどういう事よ!」

「言葉の通りだが?」

「あんたねえっ!」

「お二人は本当に仲良しなのですね」

「「どこがっ!?」」


 こんな感じのやり取りを続けながら進んだ帰路は、なかなかに疲労困憊となってしまった。


 ◆◇◆◇


 グランザウォールに到着すると、グウェインが笑顔で迎えてくれた。


「お疲れ様、みんな。トウリも戻ってきてからそうそう大変だったね」

「俺を本当に労ってくれるのは、グウェインだけだよ~」

「こっちは心労があったってのー」

「ユリアさんの言う通りですよ、トウリさん」

「……すみませんでしたー」

「はいはい。立ち話もなんだし、中に入って。みんなも集まっているから、報告会といこうじゃないか」


 報告会って言われても、陛下から森谷を連れて帰る許可を得られた事、そして従魔を認めてもらえた事くらいしかないんだけどなぁ。

 そんな事を考えながらリビングへ向かうと、そこには新に先生にレレイナさん、ライアンさんも集まってくれていた。

 円とヴィルさんとリコットさんはいないけど、宿場町で待機中かもしれないな。


「それじゃあ、報告会を始めようか。最初にトウリからお願いできるかな?」

「分かった。だけど、報告する事なんてあんまりないぞ?」

「え、あるでしょうよ」

「そうですよ、トウリさん」


 ……え? 森谷の事と従魔の事以外で、何かあったっけ?

 俺が困惑していると、小さくため息をついたアリーシャが報告をしてくれた。

 森谷の事と従魔の事は予想通りだったが、続けてメールバードで王都とやり取りする事も伝えられた。


「……それって重要か?」

「重要ですよ! 王都とやり取りするって事は、陛下とのやり取りなんですよ? 書面に残るものですから、失礼がないようにしなければなりません!」

「それに、献上する時にディートリヒ様も言っていたでしょう。決められた時間に届くようにする事が大事だって」


 ……あー、別れ際にそんな事を言っていたっけ。

 確か、突然謎の飛来物が王都、しかも王城目掛けて飛んで来たら騒ぎになる、だったか?


「……あ、確かに重要だわ」


 俺が作るメールバードもそれなりに強固なものになってきたが、それでも王都の騎士たちから総攻撃を受ければ撃ち落されてしまうだろう。

 受け取る時に合わせてディートリヒ様が王都から離れてくれるんだったよな。


「ディートリヒ様に無駄足を運ばせてはなりません!」

「それに、騎士団が総出で出て行くような事にもね!」

「……すみませんでした」


 どうしよう、今日の俺って、謝ってばかりじゃないか? いや、俺が悪いんだけどさぁ。


「それと――」

「え、まだあったの?」

「「……はあ?」」

「す、すみませんでしたああああっ!?」


 二人が、マジで怖い!?!?


「……はぁ。それと、トウリさんが魔導具を作れるという事について、陛下たちが非常に興味をお持ちのようです」

「ほほう。という事は、トウリ様は頻繁に王都へ出向かれる機会が増えそうですね」

「その通りです、ライアンさん。なので、トウリさんがいない間は我々だけで魔の森の開拓を進める事になります」


 ……え、そうなの? 俺、頻繁に王都へ行かなきゃならないの?


「聞いてないんだけど?」

「絶対に呼び出しが多くなるわよ? 賭けてもいいけど、何を賭ける?」

「いいえ、何も賭けません」


 マジかー。まあ、何か条件でも付けて魔導具を卸すのもありかもなー。

 ……サニーのレベル上げのためにレベルスライムの討伐をやらせてくれないかな。うん、それがいい、それを提案してみよう!


「……あんた、まーた変な事を考えていたでしょう?」

「変な事じゃない、俺とサニーに有益な事を考えていたのだ」

「はいはい。それじゃあ、こっちからの報告はこれくらいかしら、アリーシャさん?」

「そうですね」


 ……ん? ってか、最終的にユリアとアリーシャさんがまとめた感じになったけど、俺っている意味あったかな?

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