第150話:予定外のサバイバル生活 20
しばらくサニーのレベル上げを行い、俺たちは森谷の家に戻ってきた。
最終的にサニーのレベルは24まで上がったのだが、レベル90台を結構倒したはずなのにレベルが4しか上がらなかったのはどうかと思う。
まあ、新もこっちに来てから結構な日にちでレベル上げをしているけど、最初から比べて12しか上がっていない事を考えると、上がっている方なのかもしれない。
「職業にランクがあるみたいに、魔獣にもランクがあるからねー」
「「「……そうなの?」」」
その日の晩ご飯の最中に森谷が当たり前だよー、的な感じでそう口にした。
もちろん、俺たちは分からなかったので全員が同時に疑問を口にする。
「そうだよー。だって、人間にランクがあって魔獣にないなんて、誰が決めたのー?」
「いや、そもそも、倒すべき相手と認識されているから魔獣は魔獣なんじゃないのか?」
「うーん、倒すべき相手かー」
俺が世間一般的な意見を述べると、森谷は腕組みをしながら考え込んでしまう。
まあ、サニーやハク、グレゴリを見ていると愛嬌もあり手を取りあう事もできるんじゃないかと思ってしまうが、あくまでもこれは従魔契約をしているからだ。
彼らが単なる魔獣として俺たちと対峙していたのなら、まず間違いなく攻撃してくるだろう。
「……違うのか?」
「まあ、間違いではないかな。でも、中には高い知能を持っていて僕たちと対話できる魔獣もいるんだよ?」
「……そんな魔獣が、いるんですか?」
「……聞いた事もないぞ?」
人間との対話という点には円と新が驚いている。
俺としては知能の高い魔獣というのは定番の存在だからあり得るとは思っていたので、やはり魔獣のランクの話が気になってしまう。
「そのランクってのは、冒険者のランクとか、人間が勝手に決めたものか?」
「違うよー。その存在のランクっていうべきかな? さっきも言ったけど、人間の職業ランクと同じものだよー」
「……それって、初級魔獣とか、下級魔獣とか、そんな感じのランク?」
「そうそう。ちなみに、彼らで言うとグレゴリが中級魔獣、ハクが上級魔獣、サニーが特級魔獣だよー」
それぞれの名前が口にされたからか、三匹がこちらを振り向いて首を傾げている。
その仕草だけで可愛らしさは伝わってくるのだが……サニーよ、お前は特級だったのか。
「……あれ? もしかして、特級だからレベルも上がり辛いって事か?」
「そうそう。新君もそこまで一気には上がってないだろう? そういうものだよー」
森谷が間違いなく強くなると言ったのには、特級魔獣だという事もあったのか。
そうなると、ハクと同じようにサニーのレベルが150とかになったらどれだけ強くなるんだろうか。
「僕としては桃李君と一緒になって育ってくれたらありがたいかなー」
「……すでにレベル24になっちゃってますけど?」
「あー……まあ、この辺りの魔獣はレベルが高いからね!」
「そうだけどさ!」
「まあまあ。でもさ、これで新君も桃李君もレベルが上がりやすくなるはずだから、気を長く持とうよね」
「新は分かるよ、剣聖だしさ。でも俺は自分で戦えないし、無理だろう」
「そんな事はないよー。だって、従魔契約しているんだよ? 経験値が割り振られるじゃん」
「「……は?」」
「……あれ? 桃李君、伝えてないの?」
いや、俺はその話を聞いていたけどさぁ、それを伝えるのは俺の役目じゃないだろうに。
「なんで俺が伝えないといけないんだよ! こういうのは、森谷が伝えるべきだろうが!」
「……え? そ、そうなの?」
「そうだろう! そもそも、俺も従魔契約については知らない事の方が多いっての!」
俺の言葉に円と新が同時に頷いている。
「ぼ、僕がいた時代は、普通に従魔を連れて街中を歩いていたんだけど? 従魔って存在自体が普通だったんだけど?」
「当時はそうかもしれないけど、今は違う! 魔の森を管理しているグランザウォールにもいないし、王都にも従魔なんて影も形もいなかったっての!」
「あー……うーん、そっかー。世界はだいぶ、こじんまりしちゃったんだねー」
何やら考え込んでしまった森谷だが、従魔がいなくなった世界はこじんまりした世界になるのだろうか。
「……なるほどなぁ……うんうん、きっとあいつらのせいだろうなぁ」
そして、何やら一人で納得している節がある。
「どうしたんだ?」
「んー? あー、なんでもないよー。ちょっと懐かしい人の事を思い出してた」
それって十中八九、森谷の事を裏切った奴らの事だよな。
もしかして、魔獣は滅ぼすべきだとか言って、従魔が闊歩していた時代から改革を起こしたのかもしれない。
王都に向かう機会があったら、ディートリヒ様にでも聞いてみようかな。
「そんな事よりもさ、これからについてを話し合おうよ! 僕としてはこっちにいてくれるのはありがたいんだけど、ずっといられるわけでもないんだろう?」
なかなかに無理やりな話題転換だったが、森谷に語るつもりがないなら仕方がない。
俺たちは食後の飲み物を口にしながら、森谷の言った通りこれからについてを話し合う事にした。
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