第136話:予定外のサバイバル生活 7
予想外の発言に俺だけでなく、二人も驚き過ぎて声を失っている。
陛下も長い王族の記録を調べ直してようやく見つけだしたと言っていた、神の名を持つ職業の神級職。
俺の鑑定士(神眼)がそうかもしれないという話は聞いていたが、それがもう一人……いや、一人と言っていいのかは分からないが、二人目の神級職が現れるなんて。
「……それは、本当なのか?」
「そうだよー。あれ、もしかして君も神級職なのかなー?」
「それを答える義理は俺にはないぞ?」
「まあ、さっきの発言で分かっちゃうんだけどねー」
「……さっきの発言?」
俺は自分の発言を思い返してみたのだが、別段おかしな事を言った記憶はない。
ブラフなのかと思っていたのだが、その答えを森谷はあっさりと口にした。
「桃李君はさっき、僕の事をアンノウンと呼んでいただろう? あれって、鑑定職の神級職じゃないと出てこなかったはずなんだよねー」
「……マジか」
俺よりも、むしろ陛下よりも神級職について詳しいなんて、ありなのか?
しかし、森谷の言っていることが全て事実であれば、俺たちはピンチをチャンスに変えられるのではないだろうか。
「どうするー? できれば話を聞いて欲しいんだけどなー?」
そう口にしながら体を左右にゆらゆらさせている森谷。カタカタ鳴っているのはお約束なんだろうなぁ。
「……どうする、真広?」
「……信じていいのかな?」
「……俺は、信じてもいいと思っている」
「「……え?」」
「うわー。そっちの二人はすごく酷い反応だねー」
これまたカタカタ鳴らせながら笑っているのだが……非常にうるさいなあ!
「と、とにかく、森谷の話を聞く以外に、俺たちが助かる術はないと思う!」
「……まあ、俺の剣ではこの辺りの魔獣を斬る事はできないからな」
「……私の魔法も同じかなぁ」
「というわけで、話を聞こうと思う」
「ありがとねー! いやー、僕も誰かと話をするのは久しぶりだからなー! 楽しみだよー!」
「ちなみに、そのカタカタは止められないのか?」
再びのカタカタがうるさくなり、さすがに聞いてみた。マジでウザイ。
「あははー。無理だねー。だって、スケルトンだものー!」
……よし、諦めた。このカタカタには慣れよう。
「それじゃあ場所を変えようか!」
「魔獣もいないし、ここでもいいんじゃないか?」
「いやいや! ちゃんとおもてなしをさせていただくよー! ついてきてねー!」
意味もなく楽しそうにしている森谷は、カタカタ鳴らしながら歩き出した。
俺たちは一度顔を見合わせたものの、信じると言った手前ついていくしかない。
それにしても不思議な場所だ。この周辺にだけは何故か魔獣がいないのだ。
「……なあ、森谷。この周辺にはどうして魔獣がいないんだ?」
「んー? 僕が倒してるからねー」
「……そ、そうなのか? でも、この辺りも魔獣はレベルも高いんじゃないか?」
「そうかなー? 僕にしてみればそうでもないんだけどねー」
……いったいどれだけレベルが高いんだろう。
「……鑑定、森谷大樹」
ぼそりと呟いて鑑定を掛けてみたのだが……結果はやはり【アンノウン】である。
そもそも何故に【アンノウン】と出てくるのだろうか。森谷は本当に【アンノウン】なのだろうか。
「……意味が分からん」
「その辺りもちゃんと説明するから大丈夫だよー」
「うわあっ!? ……聞こえてたのかよ」
「この年になるとねー。耳が悪くなるを通り越して良くなっちゃったんだよねー!」
「この年って……森谷って何歳なの?」
鑑定が利かない時点で俺にはどうする事もできないので、素直に質問してみた。
「何歳だったかなー? 百年くらいまでは数えてたんだけど、そこからは気にしてなかったからなー?」
「……は? ひゃ、百年?」
「そうだよー。僕は仲間に裏切られて死にかけた時に、禁忌スキルで不死魔法を使ったんだー。だから、百年以上生きているってわけさー」
……不死って、マジで言ってるのか? そんな存在が魔の森にはいるってのか?
「そろそろ着くよー!」
俺が思考の海に沈みかけていると、前から森谷の声がして顔を上げた。
すると、そこには二階建ての綺麗なログハウスが姿を現した。
「「「…………はい?」」」
「どう? すごい綺麗な家でしょー! 僕の自慢の我が家なんだー!」
……うん。カタカタ、うるさいなぁ。
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