第131話:予定外のサバイバル生活 3

 ……シルバーウルフの群れ、ご臨終です。

 魔導師の魔法の弾幕も凄かったが、一番凄かったのは新だろう。

 果物で数値を倍にしているのが一番の理由だが、それでも素早い動きでシルバーウルフを両断し続けていた。

 一振りで五匹が上下に分かたれた時には口を開けたまま固まったものだ。

 数値だけを見ればライアンさんやヴィルさんの方が圧倒的に高いのだが、それでも目を見張る活躍を見せたのには理由がある。


 それは――特級職である剣聖だからだ。

 これは俺も知らなかった事なのだが、職業補正というのが働いているようで、本人の動きに数値には現れない効果が掛かるらしい。

 剣術スキルのレベルが高いからかと思ったが、現状のスキルレベルは新とライアンさんが同じレベル7なので可能性は低くなる。

 現地人と異世界人の違いという可能性も否定はできないが、そこは数値で現れているので絶対ではないが可能性は低いと思っている。

 そこで答え合わせのために鑑定を掛けてみると、職業補正というものがあると出てきたのだ。

 数値だけでも優遇されている異世界人だが、さらに数値に現れない職業補正まで掛かるとなれば、上位の職業の異世界人が重宝されるのは致し方ないのかもしれない。


「回収終わったよー」

「……ねえ、桃李? あんた、何かした?」

「うーん…………素材回収?」

「何もしてないって事ね」

「まあ、戦闘職ではないのだから仕方ないんじゃないか?」

「うふふ。桃李君の事は私が守るから大丈夫だよ」


 お、女の子に守ると言われてしまうと情けなくなってしまうが、俺は俺なのでひとまずは突っ込まないでおこう。

 それに、レベルが上がれば俺が円たちを守る事もできるわけで、それまでは魔の森の開拓指示とレベル上げにだけ重点を置くとしようかな。


「さて、皆さん! 次の魔獣が今回の開拓最後になります! ですが、今までの中で最強の魔獣がやってきます!」


 そう、次の魔獣を相手には気を付けなければならない。鑑定の結果でも最善策で死亡者は出ないものの怪我人は絶対に出てしまうからだ。


「相手はレッサーアースドラゴン」

「ドラゴン……竜種ですか」

「以前にクイーンドラゴンを討伐した時は、アキガセ様が一人で倒してしまいましたからね」

「ああああぁぁっ! 姉御おおおおぉぉっ!!」


 ヴィルさんが先生の名前を出した途端、ミレイさんが絶叫してしまった。

 この人、マジで大丈夫だろうか。怪我をするならミレイさんな気がする。

 というのも、鑑定に関して最近になって分かった事がある。それは――人間の行動を予測できないという事だ。

 魔獣は知能が低く、ある程度の予測を鑑定スキルが立ててくれる。そして、それが確定で起きてくれるのだが、人間の行動はそうはいかない。

 最善の動きがあっても、その通りに動かない事があるのだ。

 それを俺が指示して相手がその通りに動いてくれればいいのだが、それすらもやってくれない場合はどうしようもない。

 その辺りも考慮して鑑定スキルが機能してくれればありがたいのだが、それに関しては候補の中の一つに含まれているので機能はしている、という解釈なのかもしれない。


「……と、というわけで、竜種を相手にする場合は気をつけていきましょう。我々はまだ、実際に竜種を討伐した事はないのですから」

「うぅぅ……あ、姉御おおぉぉぉぉ……」


 ……マジで心配だ。

 ミレイさんには申し訳ないが、こっそりと誰かをサポートに回す事も考えないといけないな。

 そんな事を考えていると――


『――グルオオオオオオオオッ!』


 森の奥から魔獣の雄叫びが聞こえてきた。

 だが、これはおかしい。俺の鑑定結果では、もう少し時間があるはずなんだ。


「す、すぐに臨戦態勢に入ってください!」


 俺はもう一度鑑定を掛け直す。

 すると、おかしな表示がディスプレイ画面に現れた。


【アンノウン】


 初めての表示に、俺は冷汗を流してしまう。

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