第100話:自由とは程遠い異世界生活 38

 驚きの中で食事を堪能していると、再びドアがノックされた。

 まだ食事中なんだけど片付けに来たのかな? と思っていたのだが、現れた人物を見て俺はスプーンをカランと落としてしまった。


「……何故に陛下?」

「ん? そろそろ食事も終わる頃だと思ってのう」

「……まだなんですが?」

「であればもう少し待つかのう」


 え、マジで? ちょっと待って、急いで食べるから!


「ゆっくりでよいぞ~」


 陛下を待たせてゆっくり食べられるか! 目の前のディートリヒ様のスピードも少しだけ上がってる気がするしな!

 というわけで食事を終わらせた俺たちは、ディートリヒ様の部屋なのにもかかわらず陛下を上座に座らせて話をする事になった。


「元気そうで何よりだぞ、マヒロ」

「ご心配をおかけしました」

「よいよい、こちらがお願いした事だからな。ディートリヒはスキルについて聞いたのか?」

「いえ、まずは食事をと思いましたのでまだです」

「そうか。であれば、ここで話を聞いても良いかな?」

「分かりました」


 紳士の方がやってきて食器を片付けて部屋を出ると、この場には三人だけとなる。

 最初に得られた情報は脇に置いて新しく得られた情報を羅列していく。何が必要で何がそうでないのかを俺では判断できないので、これだと思ったものがあれば声を掛けて欲しいと伝えている。

 すると、とあるスキルのところでディートリヒ様が声をあげた。


「マヒロ様! 鑑定スキルも後天的に得られるのですか!」

「そうみたいですよ? でも、戦争にはあまり必要なくないですか?」


 これから戦争に行こうというのだが、ディートリヒ様が反応したのはまさかの鑑定スキルだった。

 俺が鑑定士で鑑定スキルを持っているからか、個人的には全く食指が動かなかったが。


「あぁ、申し訳ありません。私個人として、鑑定スキルは欲しいと思っていたのです」

「そうなんですか? それじゃあ、先に伝えても……いいですか?」


 俺は陛下に意見を求めた。

 スキルの情報についてはまだ途中なので勝手に鑑定スキルを詳しく伝えても良いのか確認だ。


「あ! も、申し訳ございません、陛下!」

「はははっ! よいよい、ディートリヒにはいつも世話になっておるからのう、聞いておけ」

「……よろしいのですか?」

「もちろんじゃ」

「あ、ありがとうございます、陛下!」


 おぉ、こんなにも嬉しそうなディートリヒ様を見るのは初めてだな。レベルスライムの習性について教えた時以上に嬉しそうだ。


「分かりました。まあ、鑑定スキルに関しては言葉にするのは簡単ですよ」

「「……言葉にするのは?」」


 そう、言葉にするのはね。非常に根気が必要なんだけどな。


「はい。鑑定士の中でも上級職である聖物鑑定士と一緒に10000回の鑑定を行う。もしくはトータルで魔力を1000000消費して鑑定を行う。ただし、鑑定する物は魔力が50以上消費する物でなければならない」

「「……は?」」


 うんうん、そうなるよね。

 魔力が50以上消費する物を10000回鑑定って、最低でもトータルで魔力を500000消費しなければならないのだ。

 しかも、それをやるのがディートリヒ様ではなく聖物鑑定士の人なのだから面倒この上ない。

 付き合うディートリヒ様も面倒だろうけど、一番面倒なのはやっぱり聖物鑑定士の方だろう。


「……それはさすがに、無理がありますね」

「……う、うむ、そうだな」

「回数も異常だけど、トータル1000000の魔力消費も異常ですよね」

「どっちを目指すにも無理があるじゃろうに」

「……いや、ちょっと待ってください!」


 え? ど、どうしたんですか、ディートリヒ様? 突然の大声は驚きますよ?


「ど、どうしたんじゃ?」


 ほら、陛下も驚いているじゃないですか!


「……これ、マヒロ様と一緒に行動していれば、そのうちトータル1000000の魔力消費っていけるんじゃないですか?」

「……あ!」

「……え?」


 ……え? いや、陛下。あじゃないのよ、あじゃ!


「それならばいけるのではないか?」

「そうですよね、陛下!」


 ディートリヒ様も興奮し過ぎで言葉遣いが若干おかしくなってるよ!


「というわけで、アングリッサにいる間は鑑定をよろしくお願いいたします! マヒロ様!」

「……ええぇぇぇぇ?」

「よろしく頼むぞ、マヒロよ」

「…………はぃ」


 なんか、色々と自由の利かない身になってき始めましたが、気のせいでしょうか?

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