第95話:自由とは程遠い異世界生活 33
陛下が何を言っているのかすぐには理解できずポカンとしていると、そのまま説明が継続された。
「神級職とは、神に匹敵する力を持つ職業の事じゃ」
「……神に匹敵する力って言われても」
「その特徴としては、職業の中に神の文字が含まれているらしい」
鑑定士(神眼)って、まさにそれじゃないか。というか括弧って、後付け感が半端ないんだけど本当にこれが神級職でいいのだろうか。
「なんじゃ、随分と困惑しているみたいじゃのう?」
「そりゃそうですよ。最高だと思っていた特級職よりも上があるのも驚きですし、その上である神級職が俺だなんて、すぐには信じられませんって」
「そうじゃろうな。我もアリーシャから報告を受けて改めて調べ直したくらいじゃからな」
陛下が調べ直すくらいに神の名を持つ職業は長い間、生まれてこなかったって事か。
そう考えると、シュリーデン国の王様がこの事実を知ったらどう思う事だろう。こっちからするとざまぁ的な展開なのだが、クラスメイトがあちら側についている状況なので大手を振ってざまぁとは言い難い。
せめて新くらいは助けてやりたいが、あいつも特級職だったから操り人形にされている可能性が高いんだよなぁ。
大本を倒すか、操っている魔法を解除できればいいんだが、その方法を探るにも俺がシュリーデン国に乗り込まないと鑑定も使えない。
「……まあ、今はとにかくレベル上げだな」
「どうしたんじゃ?」
「いえ、なんでもありません。それよりも、そのレベルスライムって弱いんですか? 俺でも倒せるくらいに?」
レベル上げに話を戻した俺は一番重要な部分を確認する。
もしレベルスライムを見つける事ができたとしても、俺が倒す事ができなければ意味がない。
逆に殺されるかもしれないと思いながら問い掛けてみたが、その心配は杞憂だったようだ。
「安心せい。レベルスライムは普通のスライムと同様に弱い。攻撃力も普通に装備を整えれば殺される事もないじゃろう」
「……そ、そうですか」
「護衛として私も同行しますのでご安心を」
「えっ! ディ、ディートリヒ様が護衛をしてくれるんですか?」
まさか一国の宰相様に護衛をさせるのは気が引けてしまうのだが、これにもちゃんとした理由があった。
「北の洞窟の場所は限られた者しか知りません。陛下が案内するわけにはいきませんし、殿下たちも同様です」
うん、そりゃそうだ。
「ですので、陛下から許しを得て北の洞窟に向かった事のある私が護衛兼案内人として同行するのですよ」
「そういう事ですか。……その、ありがとうございます」
「いえいえ。それに、私も見てみたいのですよ」
「何をですか?」
「神級職であるマヒロ様がどれほど強くなられるのかを」
どれほど強くって、元々が戦闘職じゃないしそこまで強くなれるとは思わないんだけど?
まあ、あえてそこを口にする必要もないし黙っておこう。俺としてはレベルと同時に魔力が上がってくれればそれでいいのだから。
「今日は一度魔力枯渇になっておりますし、明日からでどうでしょうか?」
「構いません。アリーシャはどうする?」
「わ、私は北の洞窟には行けませんよ!」
「そうですね。アリーシャ様には大変お世話になっておりますが、王家の秘密をお伝えするのは……最悪の場合、命を狙われる事になるかもしれませんしね」
……ねぇ、ディートリヒ様。それって、俺が狙われる可能性もあるって気づいていらっしゃいますかねぇ?
「私はユリアについておこうと思っています」
「あ、ありがとう、アリーシャさん!」
「ユリアさん。訓練、頑張ってくださいね!」
あ、これ絶対に俺を見捨てたな。だって、全然こっちを見てくれないんだもの。
まあ、王家の秘密と言われれば我が儘も言ってられないか。
「それじゃあ明日はアリーシャと登城して、そこからという事でいいですか?」
「構いません。今日のところはゆっくりお休みになってください」
「ユリアさんの指導はどうなりましたか?」
「今日は初日だからあがっていいって。対人戦って難しいのね。魔獣と戦うのとはえらい違いだわ」
肩を回しながらそう口にしたユリアを見て、俺も覚悟を決めなければならないと思いながら城を後にしたのだった。
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