第18話:本当によくある勇者召喚 16

「そういえば、アリーシャの職業って何なんですか?」

「私の職業ですか?」

「はい。グウェインは鑑定士だと聞きましたけど、アリーシャの職業は聞いてなかったなと思って」


 領主になるくらいなのだから初級職ということはないだろう。中級職とか、もしかしたら上級職なんてこともあるかもしれない。


「私は魔導師と領主で二つの職業を持っています。ちなみに、魔導師は下級職で、領主は中級職ですね」

「……えっと、職業って二つも持てるものなんですか?」


 どうやって職業が決まるのかは分からないが、基本は一つだと思っていた。

 しかし、俺の考えは間違いではないようで、二つ目の職業を得るには特別な条件が必要なのだとか。


「簡単に言うと、どこかの国の王様になるとか、私のように領主になることですね」

「……それだけですか?」

「そうですよ。ですが、それだけのことで多くの民の命を預かる身になるのです」

「なるほど。責任を負うことで、二つ目の職業を得ることができるんですね。でも、それには何かメリットがあるんですか? 正直、領主という職業がどのように役立つのか分からなくて」


 俺のような鑑定士なら物を見極めることができるだろうし、勇者や賢者ならそれだけでとても強いステータスを持っているんだろうと想像がつくものの、領主がどのように役立つのかさっぱりなのだ。


「領主になると、目に見えない効果を発揮するスキルを得ることができます。それが――カリスマというスキルです」

「……カリスマ? カリスマって、人を惹きつけるとか、引っ張っていくとか、そういう人間が持っているって言われている、あのカリスマですか?」

「その通りです。ですが、私のカリスマスキルのレベルは1なので問題が多いのは事実ですけど」


 ということは、前領主はそのカリスマスキルのレベルが高かったんだろうな。


「どうやったらスキルレベルって上がるんですか?」

「私は領主ですから、民をまとめることでレベルは上がります。鑑定士の場合は多くの物や珍しい物を鑑定することでレベルが上がるとグウェインから聞いたことがあります。ちなみに、トウリさんの鑑定スキルのレベルはどれくらいなのですか?」

「鑑定スキルはレベル10ですね」

「……えっ? す、すみません、また聞き逃してしまったみたいです。もう一度聞いてもいいですか?」

「ですから、レベル10です」

「……限界じゃないですか!?」


 えぇ、その通りです。限界なのです、カンストしているのです。


「でも、最初から鑑定スキルはレベル10でしたよ?」

「……もう、トウリさんが神様に見えてきました」

「なんでですか!」


 初級職のレベル10で神様って意味が分からないよ。


「実を言えば、鑑定士は初級職なんですけど、鑑定と名の付く職業でも中級職や上級職はあるんですよ」

「えっ! そうなんですか?」

「はい。古代鑑定士というのが中級職、聖物鑑定士というのが上級職になります」

「特級職はないんですか?」

「私は聞いたことがありません。ですが……もしかしたら、トウリさんの鑑定士(神眼)が鑑定職の特級職ではないかと思っております」


 ……はい? 俺の鑑定士(神眼)が、特級職ですと?


「……いやいや、まさか、それはないんじゃないですか?」

「いえ、最初から鑑定スキルのレベルが10というのがまず異常です。どのスキルであれ、スキルレベル10というのは英雄レベルなんですよ」

「……鑑定スキルでも?」

「スキルは全てです。聖物鑑定士でもレベル10に至ったという話は聞いたことがありませんから」


 おぉぅ、俺ってもしかして、王城でちゃんと説明していたら特別待遇を受けられたっぽいのか?

 ……いやいやいやいや、あんな王様の下で働くとか絶対に嫌だし、その点に関しては何も文句は言うまい。


「仮に俺が特級職の鑑定士だとして、レベルが上がった時の能力値の上昇は結構なものになりますかね?」

「……正直、予想が付きません。特級職に出会える確率なんて、一生の人生で一度あるかないかですから」


 ……俺ってもしかして、円や他の特級職と同じくらい貴重な存在だったのかもしれない。

 自分のことで驚きはあったものの、今日は多くのことを知ることができた気がする。

 そして、二人が俺のために動いてくれていることに感動したと共に、やはり何かお返しをしなければと強く思ったのだった。

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