第3話:本当によくある勇者召喚 2
職業に差があれば扱いにも差が生まれてしまう。
全員の職業が確認されると特級職の四名、上級職と中級職の二六名は広間を出て右へと案内されたのだが、初級職の俺だけは左に案内された。
「ちょっと! どうして真広君だけそっちなんですか!」
そう進言してくれたのは数学の先生だ。名前は――
「落ち着いてください、ハルカ様。こちら側の部屋が足りないだけですから」
そうそう、
苗字に秋が入ってるのに名前に春が入ってるってことで覚えやすかったっけ。
「でしたら私がそちらの部屋に行きます! 生徒一人だけが別の部屋になるなんて考えられません!」
「いいえ、ハルカ様。鑑定士の彼はあちらの部屋になるのです」
……これ、絶対に何かあるよな。まさか暗殺されるとか言わないよな。
「……大丈夫ですよ、先生」
「だけど真広君!」
「俺は初級職で、みんなと一緒にいられないってだけですから」
「彼もこう言っているのです、時間もありませんから」
「……私は、納得してませんからね!」
そうそう、秋ヶ瀬先生は優しい先生なんだ。
……まあ、そういうあなたの職業は上級職の
ただし、他の生徒は俺に冷ややかな視線を向けている。ああはなりたくない、そんな視線だ。
そんな中にも心配そうに見つめる視線もあったが、俺はそれを無視することにした。
これ以上ここにいたら槍で突っつかれて無理やり連れて行かれそうだし、あいつに迷惑を掛けたくないからな。
そうしてみんなと別れた俺が連れていかれた先は、意外にも普通の部屋だった。
みんなはもっと豪華な部屋でくつろいでいるんだろうなと思いながらベッドに触れると……うん、前言撤回だ。
「埃まみれじゃん」
指で撫でるだけで埃がくっつき、よく見てみると机や棚の上にも埃が積もっている。
こんなところでくつろげるわけないだろうと溜息をつこうとした――その時だった。
「うわあっ!」
教室で見たものと同じ真っ白な光が部屋の中にも現れたのだが、光は部屋を中心に円状に放たれている。
「暗殺とかじゃないからよかったけど、これって絶対――」
どっか危ないところに放り出されるよねええええええええぇぇぇぇ……――
※※※※
――そして、今に至るわけだ。
いやー、最初はどうしようか本当に焦ったよ。シュリーデン国が魔獣の脅威に晒されていて、それを助けてもらう為に勇者召喚をしたって言ってたからな。
ここが何処だか分からず、聞いたことのない遠吠えや地面が揺れる程の足音が聞こえるんだから、魔獣が跋扈する森の中だということはすぐに理解できたけど。
っていうかさ、いらないならいらないでもっと別の扱い方があるでしょうに。別に国を追放されても、安全なところに放り出してくれたら好きに生きるっての。
「それにしても鑑定士(神眼)、めっちゃ役に立つけど本当に初級職なのか?」
俺が思い描いていた鑑定士は、鑑定する品を見てスキルを発動することで名前や状態を把握することができる、そんなスキルだと思っていた。
もちろん、俺が思っていた通りの能力もあるんだけど、さらに良い方向への予想外もあったんだ。
「鑑定、食べられる果物」
俺が抽象的な言葉を口にすると、視界の中には『食べられる果物』がどこにあるかという案内が表示された。
こうして先ほど食べていた果物を見つけ、そして『危険な魔獣』という言葉で魔獣の位置を把握してこの森の中で生き延びている。
俺自身にもレベルがあり魔獣を倒せば上がっていくのだろうけど、一人では魔獣と戦う術を持たないのでいまだにレベル1のまま。
この森には俺でも倒せそうな弱い魔獣はいないので、どうしたものかと考えているうちに数日が経過したのだ。
「……一時的にも能力が上がるようなものがあればいいんだけどなぁ」
力の実的な、速さの実的な、そんなものが。
……ちょっと、鑑定してみようかな。
「鑑定、能力が上がる食べ物」
……出ないか。まあ、そんな都合よく出てくるわけないよな。
「……か、鑑定、一時的に能力が上がる食べ物」
ちょっとだけ内容を変えてみました。
まあ、そんなんで出てくるはずが……えっ……おいおい、まさか、マジかよ!
「案内が、出た!」
一時的ならあるのかよ!
何でもっと早くに気づかなかったんだよ。能力が上がるなら逃げるなり何なりしてやりようはあるだろうに!
俺は魔獣に注意しながら案内に従って進んで行く。
2キロ……1キロ……500メートル……200メートル……そして、ついに辿り着いた。
「……おぉ……これが……一時的に能力が上がる食べ物か!」
そこには大きく実った果物が大木にたくさんぶら下がっていた!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます