高校生

愛(かな)

第1話

深夜12時。すべてがひっそりと静まり返っている。ここは東北の片田舎。さらに、山奥も山奥で、町というより村に近いようなところだ。

自室の部屋のサッシ窓は歪んでいて、そろりと開けなければキィキィと音がした。全開にすることはできず、靴を履いて数十センチの窓の隙間へ体を捻じ込む。全身が外へ出る瞬間、窓へ勢いよく足をぶつけて存外大きな音が出てしまい冷や汗をかいた。

外灯は無く、月明かりのみに照らされる田んぼ道を夜に降った新雪をそっと踏みしめて歩く。音を立てないように、しかし誰かに見られることの無いように素早さを心がけて。


そうやって向かう場所は二つのうちどちらかだった。

一つめは、付き合っていた彼氏の家。

二つめは、「せんせい」のミニバン。


チカチカとライトの明かりが先に見える。

止めてあるそのミニバンに近づいて素早く乗り込む。乗り込むとほぼ同時に、すーっと車は走り出す。街中のラブホテルへ向けて。


「せんせい」とはネットで知り合った。初めて会った時のことは覚えていないが、最後に会った時のことは覚えている。


ホテルへ着くと、いつもまず一緒にシャワーを浴びた。お湯を溜めながら、体を洗われる。湯船の縁に座らせられて、様々な場所を舐められる。どこを舐められてもくすぐったかった。

それが終わると、制服やベビードールやタイツなど必ずコスチュームを着せられた。そして大体は私を縛ったり拘束具で拘束して、責め立てた。


それはいまでも、私の性的な嗜好に少なからず影響していると思う。この時の経験がなければ、その後経験することの無かったことがあるように思うからだ。


「せんせい」には、妻子があったと思う。ミニバンには、男の子向けのおもちゃや小さい靴なんかが転がっていた。

最後に会った帰り道に、うたた寝をして事故になりかけた、というようなことを話していた。仕事も忙しく、夜が遅くなると眠気が襲ってくると言っていた。

それまで月に1、2回会っていたが、ぱったりと「せんせい」とは連絡が取れなくなった。


ひと月程して家族で街へ買い物へ出たとき、「せんせい」とよく行っていたラブホテルのまわりにパトカーが数台止まっているのを見た。

何の因果関係も無いとは思ったが、なんとなく「せんせい」のことを考えずにはいられなかった。


「せんせい」とは長く関係があったように思っていたが振り返ってみると、初夏から冬にかけての短い間だった。

人生で最初に私の体にも性的な魅力があると、伝えてくれたのは「せんせい」だと思う。

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高校生 愛(かな) @kana8

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