閑話 概念存在、事物存在とゲティア問題について

概念存在、事物存在に関しては以下を参照

https://kakuyomu.jp/works/1177354054908172869/episodes/1177354055017102004


また、事物存在に関してその定義を拡張し、「ナマの事実」を「事物存在」として含めて議論を行う。


1. ゲティア問題について

ゲティア問題とは、知識論上の問題で、正当化された真なる信念(Justified true belief、以下JTB)に対する反例である。


この問題は基本的にはすべての人が関係しうるもので、「信念が知識になるためにはどのような条件が満たされなければいけないか?」というものである。

知識とは、正当化された真なる信念であるという定式がプラトン以来の伝統であり、これを「JTB定式」と呼ぶ。

JTB定式によれば、ある命題についての信念が

(a)その命題が信じられている

(b)その命題が真である

(c)その命題を信じる人が信じるに足る理由を持つ

の場合知識となり、かつこれらが満たされている場合のみ知識となるとされている。

では、この「(a)かつ(b)かつ(c)は知識を持っている」は真であるか。


スミスとジョーンズは、ある会社の採用面接にきた。

スミスは、「ジョーンズが採用され、かつ、硬貨が10枚ジョーンズのポケットに入っている」という事実を確認した。

スミスは、この事実から「採用されるのは、硬貨が10枚ポケットに入っている者である」との命題を信じている。

スミスは知らないことであるが、実際に採用されるのはスミスであり、かつ、スミスのポケットにも10枚の硬貨が入っていた。


(a)スミスは、「採用されるのは、硬貨が10枚ポケットに入っている者である」という命題を信じている。

(b)「採用されるのは、硬貨が10枚ポケットに入っている者である」という命題は真である。

(c)スミスは、「ジョーンズが採用され、かつ、硬貨が10枚ジョーンズのポケットに入っている」という事実から「採用されるのは、硬貨が10枚ポケットに入っている者である」との命題を信じたのであるから、その命題を信じるに足る理由を持つ。

JTB定式によれば、(a)(b)(c)の三つの条件を満たしているから、スミスは、「採用されるのは、硬貨が10枚ポケットに入っている者である」という命題についての知識を持っていると結論付けられるように思われるが、実際には、スミス自身は、「スミスのポケットにも10枚の硬貨が入っていた」ことを知らないのであるから、スミスは、この命題について知識を持っているとはいえない。スミスは、「ジョーンズが採用される」と誤って信じているのである。

したがって、JTB定式によって導かれる「命題」は偽である。


2. 上記に対する私の見解


上記ゲティア問題に概念存在、事物存在の「概念」を当てはめて検討する。

(b)に関して、この場合は命題が真であるという事実より概念存在と事物存在は一対一対応していると考えられる。

しかし、(a)の場合はスミスが「信じている」内容に関するものであり、今回のケースでは概念存在として捉えられるが「事物存在」としては捉えられない。つまり概念存在と事物存在が一対一対応していない。

また(c)の場合も(a)と同様である。

したがって、この場合JTB定式によって導かれる「命題」が偽である理由として、概念存在と事物存在と一対一対応の欠如が考えられる。

また、概念存在と事物存在が完全に一対一対応している場合、JTB定式によって導かれる「命題」が真である可能性が高い。

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