第9話出会いの記憶9
?月?日
「ここは…?」
気が付いたら辺り一面何も無い真っ白な空間にいた。
「ここは、どこなんだ。どうしてここにいるんだ。誰かいないのか?」
「目覚めたようね。」
その時、どこからか声が聞こえた。
「その声は、あの時の……!」
犯人が暴走する直前に聞こえた声。
しかし周りには誰もいない。
「あの時は本当にくだらなかった。あいつも使えなかった。やはり私を使いこなせるのはあなただけのようね。」
その瞬間、一人の女性が現れた。
「
「あいつで2人目よ。私を使うには相当の才能がいるからね。早々使える人なんていないわ。それと、1人目とは会っているはずよ。」
「どう言う事だ。俺は、あの力を見たのは初めてだ。」
「そうね。あっちの力を見せてあげればわかるかしら。」
彼女が指を鳴らした瞬間、足元の白い空間に色が加わった。
その色は炎が燃えるような炎色だった。
「これはあの時の!?」
「気づいたようね。」
「じゃあ、あの時のもお前がやったのか。」
「私は、やってないわ。力を貸しただけ。あの人間がやった事だから私にあたっても意味がないわよ。」
足元に広がった炎色は、あの日見た情景を思い出させた。
4人で遊びに行った日に見た火の海そのものだ。
「お前の力はどっちが本当なんだ。」
「あら、私の力はどちらも本物よ。ただ、どちらかと言うと、こちらかしら。」
そしてまた指を鳴らした。
次の彩られたのは、まるでダイヤモンドのような、氷色だった。
「それでそろそろ話しを進めていいかしら。」
「ああ、そろそろこの場所についても聞きたいからな。」
「じゃあ、まずこの場所についてだけど、そうね、夢の中という表現が一番近いかしら。」
非現実な世界。
夢と言われれば納得は出来る。
「夢の中ね…。じゃあ、どうして俺はここにいるんだ。」
「なんて言ったらいいかしら。今あなたは、生死の境にいるの。」
「生死の境ね。まるであの時のようだ。」
「あなたの記憶を見たら、確かに似たようなことが一度あったようね。」
「かってに人の記憶を見ないでほしいんだが。」
まぁ、別に見てもいいが、いい気分にはならないだろう。
「しょうがないじゃない。今のあなたは私と一心同体なのだから。」
「一心同体ってどういうことだ?」
「簡単に言うと、今あなたは私とつながっているから死んでいないの。」
「つまり、そのつながりを切ったら死ぬというわけでいいんだな。」
「ええ、間違っていないけど、セリフを取らないでくれる?」
「悪かった。」
全然悪いなんて思わないし、思ってないんだろうな。
余裕で満ち溢れている。
「ここからが本題なのだけど、あなたは生きたいと思っているのかしら?」
「そりゃ、そうだろ。死にたいと思うわけないだろ?」
「そう、わかったわ。それじゃあ、契約をしましょう。」
「契約?何をするんだ?」
「特に何もすることはないけど、契約をすれば、あの二人が使ったような力が手に入るわよ。」
そう言いながら、不敵な笑みをこぼした。
「あんな力要るわけないだろ。それなら中止だ。」
「あら、それでいいの?さっき言ったわよね。つながりを切れば死ぬと。」
その笑い文句は、契約しろと脅していた。
「そう言うことか。だがそんな力を手にするぐらいなら……」
「あら、あなた馬鹿なのかしら。無駄死にすることだけなのに。」
「どういうことだ!?」
まだ余裕の笑みに浸っている。
無駄死にだと言うのも、本当なのかもしれない。
しかし、契約をしなければあいつは……待てよ?
どこかおかしい。
あいつの笑みは、必ず契約することが分かっているという事だけではないかもしれない。
「そうそう。あなたが死んだところで、私は、力を使える者の所に行くだけだから。また、いずれ誰かがこの力を手にするのよ。それなら、私を持っていた方が、心配はないんじゃないの?」
「それは、脅しているのか?悪魔に魂を売れと?」
まさか、俺が死んでも次を見つけるだけで、俺が契約を破棄しても意味がなかったとは。
しかし、考えれば当然だった。
なぜなら、契約者は俺で3人目になるんだ。
しかし、契約者の人数に制限があると言ってないない以上、何回でも契約できるかもしれない。
とすれば、俺が契約しなければ4人目、5人目と増え続けるかもしれない。
「まあ、どう受け取っても構わないわ。だけど、契約すれば、お互いにメリットだけしかないわ。あなたは、力を手にできて、管理もすることができる。」
「お前は、一番うまく使ってもらえる。こういうことか?」
「だからセリフを奪わないでって言っているでしょ?ま、でもそう言うことよ。ねえ、どうする?これでも中止する?」
「恐ろしいほどの脅しだな。だけど、今回だけは悪魔に魂を売ってやるよ。」
「それじゃあ、契約をする方向でいいのよね?それじゃあ、契約を始めましょう」
そう言ったとたん、足元に魔法陣が現れた。
これから契約しろって事だろう。
「どうすればいいんだ?」
「静かに。それと、私の真似をして。」
「ああ、分かった。」
「フラウ、今この時をもって、桜城冬樹と契約を結ぶ。」
「桜城冬樹、今この時をもって、フラウと契約を結ぶ。」
そうした瞬間、あたりが光に包まれ、
「ち、力、が、……、」
「あら、そろそろ限界のようね。それじゃあ、向こうで会いましょう。」
「まて、まだ、話したい、こ、と、が、…………」
そのまま、また意識は途絶えてしまった。
記憶を届けて 雪の降る冬 @yukinofurufuyu
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