第4話出会いの記憶4
一通り授業が終わり、放課後、掃除当番だったので掃除をしていると、さつきちゃんに呼ばれた。
「さつきちゃんどうかしたんですか?」
「また言ったねー?ほんと、どうしたらちゃんと先生呼びしてくれるの?……まぁ、今はいいよ。それより、ちょっと聞きたい事があるんだけど…。」
「いいですよ。それで上条がいるってことは、上条に関係してることですよね?」
先に上条と話していたので多分昨日の出来事についてだと思う。
イベントの事についてか地震についての事か。
どちらにせよいい話ではないかもしれない。
「これ見たことない?」
見せられたのは、1つのストラップを見せてきた。
そのストラップには見覚えがあり、神社の方で見かけたストラップにだった。
「えっ、知ってるの?」
「あ、でも少し宝石の色が違うな?」
よく見たらあの時見た宝石の色とは明らかに違っていた。
「桜城君これと同じものを見たことあるの?」
「偶々神社を散歩してたら落ちてんだよ。」
俺は、持ち主が分からない事、下手に動かさないようにベンチに置いた事など、事実だけを答えた。
「ねえ、桜城君、そのストラップがいつの間にか手元にあったりしないのかな?あと、声がした……とか。」
「どうしたんだ上条?そんな事まったくないぞ。」
「え、じゃあ桜城君は、……違うんだ。」
魔法でもあるまいしこのストラップが勝手に動くわけがない。
しかも声がするだなんて。
てっきり冗談か何かを言っているのかと思ったが、上条の顔が暗くなる。
「それがね、これを持ってると奇妙な事が起きるんだって。」
何だそれ?
このストラップは呪いのアイテムなのか?
でも、だから似た物を見た俺にあんな質問をしたのか。
「上条さんに除霊を頼まれちゃったのよ。で、これを拾ったのが、あの祭りの時らしくて、もし呪われてるんだったら、冬樹君もかなっと思ってね。」
「いや、勝手に呪われてる事にしないでくださいよ。でもそれは、ちょっと心配だな。」
俺の手元には昨日の物は無いわけで、上条と同じ現象が起きてない。
だから呪われていないと思う。
多分そうであると信じたい。
「でも、除霊したって、あんなの気持ちの持ちようを少し楽にするだけで、本当に除霊できてるかどうかも怪しいからね。」
「さつきちゃんがそれ言ってもいいのかよ。」
神社の巫女のくせに、何を言ってんだと言いたくなる。
というか、おじさんにも申し分けないと思わないのか。
巫女としてもっと自覚を持ってほしい。
「だって本当のことだよ?後で治ってないって言われても責任なんか取れないよ。」
いけしゃあしゃあと御託だけを並べるのは昔と変わらず得意なようだ。
これが逆に、自己暗示でも巫女として全う出来るように使ってくれた方がましなのだが……。
「ま、とりあえず今は何も出来る事ないし、帰ってリラックスするといいよ。何事も負の感情ばかり積もってもいい事なんて起きないよ。」
「偶には良い事言うじゃん。」
「でしょ~?それと冬樹君にご褒美上げる。上条さんと一緒に下校してあげなさい。」
「????」
「??!?」
いきなりの事で上条と共に?マークが飛び交った。
俺の聞き間違いかとも思ったが、そうではないみたいだ。
「だって心配なんでしょ?」
「まあ、そうだけど……でも、上条が俺とは嫌だろう。それに、朝の噂もまだ収まってないんだよな。」
「そんなの知ってるよ。私、端に隠れて聞いてたし。」
うわ~この教師、話のネタになるとでも思って黙ってたな!
汚い最低野郎だ!
今度おじさんに言いつけてやる!!
「ま、噂どうこうは抜きにして、私が信頼出来るから頼んでるの。それとも、上条さんに手を出すの?」
「いや、出さないし、俺は上条の気持ち思って言ってるんですよ。」
地味にかみ合わなかったので、そこを念をししながら問いかけた。
が、それぐらい分かっていると言わんばかりの顔をされて少しイラっと来た。
「上条さんはどうかな?冬樹君は、上条さんが嫌がると思ってるらしいけど、実際どうなのかな?」
「わ、私は、気にしていませんので大丈夫です。」
「じゃあ、決まりだね。冬樹君、ちゃんと最後まで送ってあげるんだよ。」
「でも、俺まだ掃除が残ってるんですけど。」
そう、こうやって残っているのも今日は掃除当番だからだ。
冒頭でも言ったが、掃除当番があるので帰れない。
「それは、先生の権限で免除します。だから、すぐさま帰ってください。」
ありがたいが、理由が理由なので何とも言えない。
「それじゃあ上条、校門のところで待っててくれないか?今から荷物をまとめてくるから。」
「うん!待ってるね。」
そう言って上条は、教室を出て行った。
俺は、掃除の続きをしなくてよくなった事を裕司に告げ、後ろでごちゃごちゃ言われながら荷物をまとめた。
「悪い、少し遅くなった。」
「こっちも今来たところだよ。」
上条は校門の前で自転車を置いて待っていた。
「上条って、自転車通学なんだな。てっきり、高級車なんかで来てるもんなのかと思った。」
「えっとね、昔は…そうだったの。でもね、さすがにこの年だと恥ずかしくてね。後、みんなと同じように登校したかったの。」
冗談で言ったつもりだったのだが‥‥。
流石お金持ち、高級車で登校をしていた時期があったんだな。
「それよりカバンを籠に置いて良いよ?」
「これぐらい持って帰るのが普通だから気にしなくていい。それより行こうぜ」
歩き始めようと思ったら後ろから大きな声が聞こえた。
「兄やん待って~~!!」
「げ、この声は!!」
「どうしたの、桜城君?」
嫌な声を聴いて、冷や汗が流れる。
こうしてはいられないと判断し、すぐさま下校するように上条に告げる。
「いや、何でもない。それより少し急ごう。」
「う、うん。分かった。」
「兄やん待ってって言ってるでしょ!!」
「うげっ。」
後ろからグーパンされ、衝撃が走る。
かなり強めで、地面に倒れ込んでしまった。
「桜城君、だ、大丈夫!?あなた、いきなり何するの!?」
「だって、呼んでるのに無視していこうとするんだもん。」
上条が説教をしているのに、それに抗う。
虹は通り魔のような回答をして、思いっきり調子に乗ってる顔をしていた。
「だからって、いきなりグーパンはないだろ、虹。」
「今のは、無視する兄やんが悪い。」
「えーっと、桜城君、この子ってもしかして妹さん?」
説教をしようとしていたが、妹か何かと思うととても驚いていた。
出会い頭に殴るようなのが妹だと思えないのは当然のことだ。
「いや、俺のことを、兄と呼ぶストーカーだ。」
「え、それ大丈夫なの!?」
「いや、だから逃げようと思っ……うっ。」
どうしても2人で帰る邪魔をされたくなかったので、誤魔化そうとするとまた殴られた。
それにしても、これを冗談と受け取らない上条は純粋すぎるだろ。
「何嘘つこうとしてんのさ。こんにちわ、|上条かみじょう》
「これはご丁寧に…って、どうして私の名前を?」
「上条さんって学校でとても有名人じゃないですか?だからですよ!」
「嘘つけ、この間まで知らなかった癖に。」
「兄やんは黙ってて……。」
この前のイベントで教えてあげたのに生意気だ。
この学園で名前を知らない奴は阿保だと言ったが、まさしくこいつの事だ。
「それでさっきのストーカーってどういうことなの?」
「あ~あれは兄やんの嘘です。」
「え、嘘だったの?」
「まー、ストーカーは冗談だけど、『兄と呼ぶ』っていうのは、ホントだけどな。」
「またまた。兄やん、嘘はよくないな~。」
虹がまた拳を握ろうとしていた。
とっさに、口を動かし事情を説明する。
「虹、早まるな。ほんとの話に決まってるだろ。お前、親父から聞いてないんか?」
「なんの事さ?」
「俺たちが兄弟じゃないって話だ。今度親父に聞いてみろ。それより、悪いな上条。それじゃあ行くか。」
流石に立ち止まったままではいけないと思い、帰るように促す。
「今の話って、結構大事な話だよね…??」
「大丈夫だ。気にしなくてもいい。それより、さつきちゃんの頼みごとの方が大事だからな。」
「兄やん、さつきちゃんの頼み事って何?」
「えっとな…。」
全て話す事にした。
いわゆるカクカクシカジカってやつだ。
「私も行く。」
虹なら言うと思った。
だから、逃げようと思ったのだが、無理やり付いて来やがった。
せっかくのさつきちゃんからのご褒美だったので、マジで勘弁してほしかった。
学園の美少女と二人きりで下校なんてめったにないぞ?
「それで上条先輩。」
「名字は堅苦しいから、妃花のほうで呼んで。」
「それじゃあ、
「うん、わかった。虹ちゃん。」
「それで今日は、どこまで送ればいいんですか?」
「そういえば、そこまでは聞いてなかったな。」
「それが、今日はバイトがあるからメモリアルまででいいよ。」
てっきり上条の家までかと思ったが、アルバイトがあるのか。
それなら、そこまででいいだろう。
あそこには上条のお祖父さんがいるわけだし。
「それじゃあ兄やん、ついでにそこで夜ご飯とってから帰ろうよ。」
「時間もまだ早いから却下だ。ま、ジュースぐらいなら奢ってやるよ。」
「やったー!」
そうして公園のところまで来ると、虹がある物を見つけた。
「兄やん、あの公園のベンチにすごいものがあるよ。」
「ん、どこだ。」
「あ、ホントだ。あれ、彫刻かな。」
言われてみると確かに彫刻なようなものだった。
しかしあれは彫刻というより、砂を水で固めたようなオブジェだ。
見た目は中学生ぐらいの少女の像で、ベンチの所に座っているポーズで置かれていた。
「へ~、近くでよく見たら結構細かく出来てるな。」
「それよりも誰が造ったんだろ?」
「これって‥…。」
結構細かいところまで表現されていて、人間が石になったみたいだ。
ここまで出来る彫刻家なら有名な人なんだろうが、いったいどうしてこんな所に?
それに、上条が何か知ってそうな反応だ。
「昨日こんなもんあったか?」
「いや、なかったと思うよ。」
「それじゃあ、上条は何か知ってるか?」
「わ、私も知らないかな……。」
「兄やん、それよりここ見て。」
虹が指さしたのは、手首のところだった。
「なんか、少し欠けて行ってない?」
「ああ、確かにそうかもな。指の先がさっきよりも欠けてきてるな。砂でできてるせいか?」
「確かに、桜城君の言う通りだね。‥‥あれ?これって……それに、ちょっと待って、垂れてきてる!?」
「な、どうなってるんだ。」
初めは何ともなかった。
しかし、欠けた指の部分からだんだんと赤い何かが湧いてくる。
それは血を連想させるような赤色だ。
まるで俺たちが近づいてきたら反応するように作られているみたいだったからさらにたちが悪い。
本当に悪趣味なら限度を超え過ぎだ。
「これって警察に連絡した方がいいよね?」
「ああ、そうだな。連絡を‥…」
「きゃっ?!?!」
目を話した瞬間、虹が勝手にオブジェを倒してしまったようだった。
「ご、ごめんなさい!!」
「そんな事はいいから、元に戻して……は?」
倒れたオブジェは砂漠の砂のように細かくなって砂の山になった。
そして、そのテッペンには赤い血だまりが出来て、砂の山の上から流れるように垂れていた。
「きゃぁぁぁ、っ!?」
叫びそうになった虹の口を塞いで叫び声を止めた。
呼吸もだんだんと荒くなり、冷静状態じゃない。
上条の方は、絶句して声が出ない状態だった。
「虹と上条は、先にメモリアルの方に行ってくれ。」
こんな摩訶不思議な現象を目のあたりにして二人とも動揺を隠せていない。
だから、先にお店の方に行くように命令した。
「でも…」
やっと言葉が出た上条だが、それ以上喋れていなかった。
こんな悪趣味な物を近くで見て心配だろうが、さつきちゃんに頼まれていた事だ。
そっちを忘れるわけにはいかない。
「バイトに遅れたら、悪いからな。」
「そ、それは‥‥」
「ふん、ふん!‥…はぁ~。」
「あっ、悪い。」
虹の口を押えていたのを忘れていた。
すぐに抑えていた口を解いた。
「お兄ちゃん、私は、残る…。」
「駄目だ。忘れたのか?今日は、上条の安全に送るよう言われて下校してたんだ。それなのに、俺らがいなくなったら意味ないだろ?だからお前も先に行け。」
「……う、うん、分かった!先に行ってる。」
虹を説得させて上条と一緒にお店へと向かわさせた。
俺はその場に残ったり、警察へ連絡した。
それにしても、折角上条と帰れてうれしかったのに、今から面倒な事になるのは想像出来るので悲しくなる。
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