相心流棒術の思い出。(五)
※前回までのあらすじ。
2016年に、相互さんがヤフオクに出されていた相心流の伝書見つけた。
検索したら、伝書売ってる店が他にあった。
相心流が江戸初期に阿波(徳島)に伝わった、柳生流の分派と判明した。
状況が動くと心も動くもので、『相心流』が柳生の流れにあるという事実と判明した直後からの私は、随分とアクティヴになりました。
と言っても、定期的に検索するのを再開した程度のことで、図書館を巡ることなどはしませんでした。
そうです。
私はこの期に及んでもなお、郷土資料をろくに調べなかったのです!
これには一応の理由があり、当時出入りしていた地元の古書店さんに「徳島県内の古武道の事情を研究している郷土史家の方はいませんか?」と話を伺ったことがあって、その時に「いない」と言われたからでした。
私がその頃までに読んでた町史村史にも、武術に関連する記述がろくになかったこともあり、なんとなくですが
「郷土史では武道関連のことはあまり調べられないものなのか」
と思い込んでたのでした。
勿論、このことは勘違いでしたし、その時にも「近代の武道についての研究をしているひとはいるらしい」という話も聞いてました。
こういう郷土史家の情報を、なんで古書店さんが知っているかというと、郷土資料は仕入れるのは新刊書店ではなく、古書店を巡ることが主になるからで――必然、郷土史家は古書店の常連になることが多くなり、古書店は郷土史家のために郷土資料を扱うになる……という好循環が生じるのでした。
そういうわけで、古書店は郷土史家にも詳しくなるもので、私は古書店業界にもちょっと関わっていたということもあり、徳島県内で古武道関連を扱っている郷土史家はいないと思い込んでいました。
ただ、気になっていることは一つあって、前回に切幡寺の寺務所で伺ったところによると、絵馬武道額は本当に移送される前、調べていた郷土史家のひとがいたという証言があったのです。
この郷土史家の情報が、まるで解らなかったのです。
寺務所の方はその時に名字を言っていたような記憶があるのですが、私は覚えていません。
その郷土史家は絵馬武道額の内容を調べ、記録したとのことでした。
そういえば前回に書くの忘れていたのですが、絵馬武道額の文字は経年の劣化もあってほとんど読み取れなくなっていたのです。
私がかつて見た頃は、ギリギリ『相心流』とあるのは読めたものですが……。
この調査をした郷土史家について、古書店さんにも特定はできませんでした。
「うちと関係していないひとも、それはいるでしょう」
郷土史家にも分野はありますし、古書店に通わないひとだっているとのことです。
そのひとが特定できれば、なんとか絵馬武道額の情報がもっと入るかも……と思ったものですが、それにもあまり期待はしませんでした。
この手の武道額の内容も、だいたいは関係者の名前が列挙されているだけで、そう詳しいことは書かれてないのが相場でしたから。
郷土史家という方も、特に武道に興味がなくても記録に残しただけかもしれない。
そんなこんなで、私は気にはなっても調べるあてもなく、とりあえずその時はそれ以上のことは解らないということもあり、ずっと放置していました。
ツイログで確認しますと、この後しばらくは、同じく柳生流から出た『天心流兵法』(注1)との関連を疑っていたようです。
しかし色々と調べていても特に発展することはなく……ただ、この方向から、『阿波武道の広がり』(注2)に記載があった『天真流』と『天心流兵法』の関係を疑ったりもしました。
近世あたりの文書は、同音異字などにはかなりいい加減ですし、『相心流』と同じ地域に伝承されていたらしいというのも、気になります。
「もしかして、柳生但馬守宗矩に由来するという(伝承のある)相心流と天心流は、共通する技法があるのでは?」
この頃の私は、かなり浪漫的な発想の飛躍をしていたようです。
そうこうしているうちに、数年経ち、私は2016年発見の伝書に記載があった「井上恰」を見つけたのです。
(つづく)
注1
「天心流兵法(てんしんりゅうひょうほう)は寛永年間、時沢弥平(※1)師によって創出された古流武術です。
流祖は幼少より後に徳川将軍家の剣術指南役、徳川幕府の総目付となる柳生宗矩公に仕え、柳生石舟斎師に新陰流を学びました。
流祖はその後も宗矩公の側に仕えて、影として護衛やさまざまな役務に携わりました。
役目を許されて後、宗矩公の意向を受け宗矩公が編み出した二百数十の技法を整理し独自の兵法を編み出して、これを天心流と名付けました。
これは単なる武芸の剣技としてではなく、徳川の世を影で支えるため、士林(武士の繋がり)にて用いられる上士(城士)の剣であり、異(い)なる流儀として誕生しました。」
以上は『天心流兵法』の公式サイトからの抜粋https://tenshinryu.net/?page_id=15
何種もの異種武器を使用していたらしいことも含めて、柳生但馬守宗矩との関係などから、この当時は共通点が多いので、『相心流』と何か関係があるのではないかと気になっていた。
注2
相心流棒術の思い出。(三)
https://kakuyomu.jp/works/1177354054907730269/episodes/16817330667973196759
参考のこと。
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