くすぐり好きの幼馴染に、くすぐり返してみた結果
真木ハヌイ
くすぐり好きの幼馴染に、くすぐり返してみた結果
「ねえ、今日は家に誰もいないんでしょ、だったら……」
と、ルリはいつものように、僕に耳打ちしてささやいてきた。
そう、僕たちは今、僕の家で、二人きりでいる。僕の母親は今夜は仕事で家に帰ってこない。父親は僕が幼いころ死んでしまったので、そもそもいない。
そして、そんな夜に、僕の幼馴染のルリは高校の教科書を持って僕の家に来たのだ。一緒に勉強しようと言ってきて。
僕はその言葉が本心からだとはこれっぽっちも思わなかったが、あえて「いいよ」と答えて、ルリを家に招き入れた。
今夜は……今夜こそはきっと、ルリに「反撃」してやるんだと考えて。
※
僕の部屋の、カーペットの上に置かれた座卓に教科書を広げて、二人で向かい合って勉強を(するフリ)しはじめて、約三十分後……僕の予想通り、ルリはいつものように、
「ねえ、タクト、しよ?」
と、僕に耳打ちしてきた。
ルリは昔からいつもそうだ。僕と二人きりになると、いつもすごくしたがって、我慢ができなくなる。
けれどきっと、ルリのこんな面を知っているのは僕だけだろう。ルリも僕も、同じ十六歳で、同じ高校に通う二年生だけど、僕が平々凡々を絵に描いたような男子なのに対し、ルリは誰から見ても美少女だった。
おばあさんがイギリス人ということで、普通の日本人とは違い、亜麻色のきれいな長い髪をしていて、瞳も淡いブラウンで、肌も透き通るように白い。そして、なおかつ成績優秀の優等生だった。
そんなルリが、まさかこんなことが好きだなんて……。
「ダメだよ、ルリ。今日は勉強するつもりでここに来たんじゃないか」
「いいじゃない。ちょっとぐらい。息抜き」
「テストが近いんだよ。成績上位のルリだって今は勉強しておいたほうが――」
「だーめ、するの」
ルリはくすりと笑ってそう言うと、いきなり立ち上がり、僕の背後から自分の体をぎゅっと押し付けてきた。
僕の背中にそのやわらかい二つのふくらみがあたる。僕の首筋にも、ユリの湿った吐息があたる……。
「ル、ルリ! 今はだめだって言ってるだろう!」
「どうして? タクト本当は、わたしにこうされてうれしいくせに?」
ルリは僕の体の正面に両手を回し、僕の体をまさぐりはじめた。
こちょこちょ、こちょちょ……。
そう、これがルリが大好きな、いつもの――くすぐり攻撃だ!
「ちょ、ルリ、そこは弱いって、前から言って……や、やめ!」
僕はその手の絶妙な動きに、びくっと体が震えてしまう。どうして、ルリの指はこんなに僕の体の感じやすいところを知り尽くしてるんだろう。
「そ、そんなところ、さわっちゃ……だめだろう……」
うう……もうがまんできない!
「あ……あはは! あははっ! まいった! 僕の負けだよ!」
ついに耐え切れず、僕は敗北宣言するしかなかった。
うう……今日もルリにいいように遊ばれてしまった……。
「タクトってば、相変わらず感じやすいのね」
僕から離れたルリは、僕を責め続けていた指を舌で軽く
くそう……。なんでこいつはいつも……。
そんなルリの顔に、僕はふと、闘志がわいてきた。そう、メラメラと。
だって、僕は男なんだ。それにもう、高校生なんだ。
子供のころとは――違うんだ!
「ルリはさ、僕にいつもするようなこと、誰かにやられたことあるの?」
「え?」
「どうせ、ないんだろう? だったら、今から僕が――」
僕はルリのほうに手を伸ばした。
「ちょ、タクト! いきなりそんなこと……」
ルリはあわてて腕を胸の前で組んだ。おそらくは誰もが感じやすいわきの下をガードするためだろう。しかし、それは見込み違いというものだ。僕の狙いは初めから……ここだ!
むにゅっ!
「きゃっ!」
突然、僕にお腹の横の肉をつかまれて、ルリはビクッと体を震わせた。ふふ、予想通り。誰だって急にこの部分をつかまれると弱いものなのだ。僕だって、過去に何度もこの部分をルリに責められたものだ。
ただ、何度もそこを責められた人間だからこそ、僕は知っている。おなかの横の肉ってのは、いきなり誰かにつかまれるとビクッとなるけど、それだけなんだ。くすぐったいとは違う感触なんだ。
そう、これは相撲に例えると猫だましのようなもの。ルリの腕のガードが緩くなった今こそ、本命のわきの下を責める絶好のチャンス! 僕はすかさずそこに手を伸ばし……。
こちょこちょ……こちょこちょ……。
「ちょ、や……タクト、だめ……そこは……」
うふふ。効いてる効いてる。
「どうしたんだい、ルリ? まさか僕にこんなことをされて感じてるっていうのかい?」
手を動かしながら、ちょっと偉そうな口調で言ってみた。
「か、感じてなんか……な、ないもん!」
「そうだろうねえ。今までルリはさんざん僕に同じことをしてきたもんねえ。自分がされる立場になったからって、どうってことないよねえ」
こちょこちょ、こちょこちょ……。
「あ、当たり前でしょ……タ、タクトなんかの指で、わ、私が感じるわけな……そ、そこはだめっ!」
「へえ、ここが特に弱いんだ?」
こちょこちょ! こちょこちょ!
「そ、そんなに激しく動かしちゃ、わ、わたし、もう……」
「もう? もう感じておかしくなっちゃう?」
「ち、ちが……」
「知らなかったよ。ルリってば、ここを責められるのはすごく弱かったんだね」
こちょこちょこちょ……。
「や……み、見ないで……」
「ダメだよ、ルリ。目を閉じちゃ。僕をちゃんと見てごらん」
「そ、そんなの無理……わ、わたし、もう限界……」
「我慢しなくていいんだよ?」
こちょこちょちょちょちょっ!
「あ……ああ、もう、ダメッ!」
と、そこでルリの体から力がどっと抜けたようだった。
「あ、あははははっ! くすぐったい! もうダメ、もう無理! 許して! わたしの負けだから! あはは!」
手足をバタバタさせながら、ルリは大声で笑った。
「どうだい、ルリ? 少しは今までの僕の気持ちがわかっただろう?」
「そ、そうね……くすぐられて笑わされるのって、なんだかすごく負けた気持ちになるのね」
「これにこりたら、もう僕をむやみにくすぐらないこと。いいね?」
「むやみに?」
「え」
「それって、たまにだったらいいってことよね」
ルリはいつものように、いたずらっぽく笑った。
くすぐり好きの幼馴染に、くすぐり返してみた結果 真木ハヌイ @magihanui2020
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