夢が叶うと

卵焼き

第1話

幸せなな夢をみた。

君と僕が付き合っていて。ずっと一緒で。

おそろいのTシャツで、幸せなんだ。

すごく、すごく、すごく、すごく。

でも、幸せだけど違うんだ。

そこには僕の好きな君はいなくて。

君の笑顔もいつもみたいに輝いていないんだ。

君の夢は、大きくてかっこよくて。

僕の夢は君の夢が叶う事で、つまり僕が振られるってことで。

かっこよくて、かわいくて。

だから今もずっと好きで。

君もきっと気づいていて。

だから君は僕の前でも笑うんだ。

僕らが住んでんのはちっちゃい町でさ。

電車は1時間に1本だし、カラオケだって一店しかないし、歩いていればすれ違うのは年寄りばっかで、遊びに行くのも1時間かけて隣町まで行かなきゃだしさ。

でも君はこんな場所でも綺麗で。宝石みたいで。

なんて言っていいか分からないけど美人で。

だからきっと、都会なんかに行っちゃったらもっとずっときれいで。

君の夢が叶うと思うと嬉しくてさ。

嬉しくて、うれしくて、嬉しいんだ。

ねえ。君が言うんだ。

「ねえ。私の夢応援してくれる?」

真夏の夜。月が月が高くまで上がって、蛍が飛んで。そう言われた時僕は、あぁ僕の夢が叶う日がもうすぐくるんだ、って確信して。

僕は思わず、「うん」って頷いてしまった。

寂しそうな月の君。僕は君を引き立てる雲。

雲になっていつまでも君を隠していられたら、きっと。

けど違う。これは、僕の好きな君じゃない。

僕だけの君は僕の好きな君じゃない。

そして、翌年の春。一時間に1本の電車の始発。

東京への切符を手に、君は旅立って行く。

君の夢がかなう。この電車のドアが閉まればもう、僕の夢がかなってしまう。

君が最後に言ったんだ。

「夢を,叶えてくれてありがとう」

その瞬間、電車のドアが勢いよく閉まって。

君をのせて走り出す。ただ、風に吹かれて君の列車を見送った。

始発の駅、あたりは誰もいない。

僕の夢がかなってしまった。

あぁ、やっぱり僕は君が好きだよ。

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夢が叶うと 卵焼き @tamagoyaki1230

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