翡翠の風
石川 新緑
第1話
そよそよと流れる風が全身を包む。太陽の光で暖まった優しい草がそっと背中を撫でる。この大自然のベッドの上で寝転ぶ真昼間に、草の香りと花の香りがそっと華を足す。木々を掻き分けて訪れるこの場所は、まるで隠れ家のような場所であった。
「ベート、そろそろお昼だよ。戻ってきなさい。」
父イェシルの足音と共に声がする。
「すぐに戻るわ。」
そう言ってベートはすぐに起き上がった。所々つぎはぎのしてある黄色いワンピースについた草を払って、父の後をかけていった。すぐに追いつくと、高齢である父に手を添えて一緒に家に向かって歩いていった。
「おまえは本当に心優しい子だ、いつも苦労をかけてすまないな。今日のお昼はおまえの好きなカボチャリゾットだ。家に付いたら私の分も温めて準備しておくれ。」
「はい、とうさま。久しぶりのとうさまの手料理、楽しみでたまりませんわ。すぐに食べちゃわないように、少しずつ食べなくちゃ。」ベートは楽しそうに笑う。
翡翠の風 石川 新緑 @baby99
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