4話 旅立ち


寒さが厳しかった寒い冬から季節は巡り、春となった。まだ肌寒さが残るこの日、異世界喫茶に最後の来店となった。あれから何度も訪れたこの喫茶とも今日が最後かと思うと名残惜しい。


午前10時。店内は銀鎧のフルプレートの傭兵や猫耳を生やした獣人を給士係の黒髪ロングヘアーをポニーテールに束ねた萌香かんがが接客してオーダーを取りにいっている。異世界で唯一無二の喫茶店は今日も繁盛していた。


カウンターに座り暖かな店内で暖を取る。大きなロッドはカウンターの脇に立て掛けローブを椅子に掛け店内に流れる軽快な音楽を聴きながら魔導帽の下の灼眼を光らせてでメニュー表を見る。だが、もう汁注文するものは決まっていた。



「マレイちゃんもここへ来るのは今日が最後かー」


「はい、お世話になりました。」


そう、この異世界喫茶に来るのは今日が最後なんだ。


これから、自分を鍛える為の旅にに出る。

学院には、あれから行かず退学届のみをを出してきた。長期休暇も考えたけど後戻りする逃げ道を用意しておくと甘えが出てしまうと悪いから。敢えて退学の道を選んだ。 旅が終わったらまた入り直せばいいだけのことだから。



「マスター、カフェオレ」


そう注文してマスターが淹れてくれたのカフェオレをゆっくり味わって飲む。

うん、今日も美味しい。


「いよいよ、今日が最後なんだな。」


「あと、これは俺からのサービスだ。」


そう言うとマスターわたしが初めて来店した時と同様に玉子のサンドイッチを作ってくれた。


「わぁー!パニーノだぁ!ありがとう、マスター。」


これが食べられるのもこれが最後かと感慨深く思いながら、ウオボがたくさん入ったサンドイッチをかぶり付く、、勿論、玉葱チポラは入っていない。


わたしの苦手野菜を覚えていてくれたんだと思うと嬉しくなる。



するとマスターがカウンターの奥から何かを取り出してカウンターの上に置く。


四角い入れ物に入っていてなんだか良い匂いがする。



「玉子サンドを作ったからお腹空いたら食べてくれ。」


「ありがとう、マスター。」

包みを開いてみると、白くて四角くカットされているパンの間に、玉子の細切れがマヨネーズと絡み合ったものが入っていた。



「わぁ!美味しそう。」


「そうか、良かった。これは、俺の国では最も一般的 ポピュラーな玉子サンドなんだ。」



「あとこれも。」そう言いマスター


はゴトンと銀の光沢が輝かしいボトルを置く。



「マスターこれは?」

わたしは、いったい何なのか訊ねる。



「これは、ステンレスボトルに熱々のカフェオレを作っておいたから、サンドイッチと一緒に

飲んで暖まってくれ。」



「なにから何まで、おんぶにだっこですみません。」




「外は寒いから身体を冷やさないようにな。」



「もう行くのか?」


マスターが名残惜しそうに訊いてくる。


そんなに悲しい顔しないでよ。笑って旅立ちたいのに。



「じゃあ、そろそろ行くよ。」



「そうか、表まで見送るよ。」



外は、4月とはいえまだ肌寒く、身震いする。


「風邪引くなよ、身体に気をつけてな。」


「はい、ありがとう。マスター。」


「やっぱり、エマは来ないんだね。」


「そうだな、残念だよな。」



「うん.......」


本当なら最後にエマと笑ってお別れが言いたかった。今日旅立つことはちゃんと伝えておいたのに

それだけがただ一つ心残りだ。

わたしのこと嫌いになったのかな?

きっと、別れが辛いんだろうと諦めてロッドに跨がって空へ飛び立とうとした。


ふとその時このままエマに別れを告げずに飛び立ったら後悔するような気がしてなかなか踏み出せないでいた。


と、その時、誰かが東の通りからが息を切らして走ってきた。わたしは、その遠く見える人影をにエマだと一目に気付き、ロッドから降りる。


「行かないで!置いてかないでー!」エマはそう叫ぶ。マレイは飛び立つのを辞めてエマの叫びに応えるように彼女の元へと駆け寄る。


そして、息を整えてからわたしの目を見て「マレイ、私も旅へ付いていくよ。」


自分の旅へ着いていくと言うのだった。 


「マレイみたいな、世間知らずの子が一人で旅をするなんて危なっかしくて行かせられないし、それに.......」


「それに?なに?」



「うん、それにマレイが居ない学院生活なんて面白くないからさ。」


「エマ!一緒に付いてくるってどうゆうこと?!」


「学院は?」


休学するの?!」


突然のことで頭がついていずにパニックになる。

「いや、あれからよく考えて学院は辞めてきたんだ。」


「だから、一緒にマレイの旅に付いていく!」



「わたしのこと嫌いになったかと思って心配してたの。」


「エマに嫌われたまま旅に出るの嫌だなって。」


「そんなことないよ。大好きだよ、マレイ!」

そうマレイの身体を引き寄せて抱き合う。


もうはなさない!そんな想いがエマから伝わってくる。


「ハハ、これはサンドイッチとコーヒーをもう一人分用意した方がいいな。」


マスターは、そう言い、そそくさと喫茶の中へと戻っていった。



こうして、マレイには一緒に旅をする仲間が出来たのだった。










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異世界喫茶ジェントル 高月夢叶 @takatuki

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