3話 一歩前へ






放課後、お客もさんも、まばらになってきてダンジョンから戻ってきた冒険者が疲れを癒やしに来たり、友人と放課後団欒に場所として利用したりチラホラとお客さんが居る中で、未だに漆黒の液体のコーヒーを忌み嫌って相変わらず人気が無くわざわざ飲みに来るお客さんは皆無で項垂れる。


またドアがベルの音と供に空けられて、一人のお客さんが来店してくる。


 それは、最近こと喫茶の常連となった魔術学院少女で、この時間に来店するとゆうことはちゃんと助言を守っているなと暖かく迎え入れる。



「マレイちゃん、いらっしゃい。」


「学院の方はどう?行ってみたかい?」


きっと授業を最後まで出て来てここへ来てくれたんだろうとお勤めごくろうさん。とゆう気持ちで挨拶を投げかける。



「いやー、うん。ぼちぼちかな-。」



「そうか、大変なんだね。」


「マスターの言う通り勇気を出して行ってみたんだ。偉いでしょっ!」


そうあざとく言うマレイに俺は、「そうだな。よくやったな、偉いぞ!」


と頭を撫でる。


きっと慣れない学業が大変で追いつかない日々を送っているんだろう。それでも学院へは、勇気を出して学院へ通うなんて偉い!と頭をなでなでして褒めてあげたい欲求に駆られる。


オレは決してロリコンではない。健気な少女を褒めちぎりたいだけだ。


えっ?!それがいけないって?しないっての。人前なんだから。


「う、うん。まあねー。」

心ここにあらずで煮え切らない様子で言う。




「そ、そうかー。」


あれ?なんでさっきから、あまり乗り気な返事じゃないんだろう?ちゃんと勉強し

てきたんだから、もっと胸を張ればいいのに。 と少し疑問に思っていると、再び、ドアが乱暴に

ガシャンと、開け放たれてる。





「こんなところに居た。探したんだよマレイ!」


「午後の授業サボってこんなところでなにしてるの!?」



「ちょっと、エマ!なんでここが分かったの?!誰にも教えていないのに!」


マレイは信じられないといった感じで驚愕なまでに目を見開く。




「ふふ、そんなの簡単だよ。マレイの毛髪を少し拝借しておいたから後は、それを元に追跡魔術を使えば対象の相手の追跡は容易に出来てしまうんだから。」


「私たちはパーティーを組んでいるんだから情報は十分に揃っているんだからね。」



「どこまで、も一緒だよ、マレイ。」



そんな呪詛に塗れた視線をで舐め回す。



「ひぃ!?そんなのストーカーじゃん!」


マレイは恐怖で恐れおののく。



「エマちゃんといったっけ?」


「それはあんまりなんじゃないかな。」


「プライベートの侵害かなって、おにーさん思うなー。」


「部外者は黙っていてください!」


「これは、あたしとマレイの問題なんですから!」



「は、はい。わかりました。」


この年頃の女の子は、怖いなー。ごめん、マレイちゃん。矛先が俺に向かうと悪いから

後は何も言えないよ。



「さあ、戻るよ、マレイ。」


手を引いていこうとするエマにマレイは必死の抵抗を見せる。


「嫌だー。戻りたくないー。」



「ここで、ゆっくり休むんだー!」


と駄々をこねる。



「あのー、こんなに嫌がっているんだから。そんなに無理に戻らなくてもいいんじゃないか」



「せっかく喫茶店に来たんだからゆ


っくり、コーヒーでも飲んでいけばいいじゃないか。」


そうだ、俺に言えることは、一杯のコーヒーを勧めることだけだ。




「うんうん!コーヒー、どんなのか飲んでみたい!」


マレイは、ここぞとばかりに俺からの助け船に乗っかる彼女を見兼ねてか、エマは頭を横に振り



「仕方ないなー。今日だけだからね。」



「明日からはこんなところに来ないでちゃんと、授業を受けること。わかった!?」




「「うん!わかったー。エマ大好き-!」



「まったくもう、調子がいいんだから......」


とヤレヤレと頭を抱える。




俺はとゆうと早急に、サイフォンで二人分のコーヒーを抽出してカウンターにカップに注いだカップを二つ出す。



「うぇーなんか鼻がツンとなって変な臭い!」


「うん、この芳香で上品な香り、悪くないです。」


拒絶反応を示す、マレイとは反対にエマは香り愉しんでから、一口、ホットコーヒーを恐る恐る飲む。



「「こ、これは!?強い苦みがあると思ったらコーヒー独特の風味が鼻を突き抜け、その後に爽やかな酸味と強いコクが残る感じ、これがコーヒーとゆうものなんですね。」



「あ、ああ。ありがとう......」



一口飲んだだけでこ感想は、正直驚きものだ。本当にそこまで分かるのか?と疑うくらいの

テイスティングスキルに、この子はもしかしてコーヒーマイスターの素質を持っているのではと期待してしまう。



マレイはとゆうと、「ほんとにこれが美味しいとかどうかしてるよ。ただ、苦いだけじゃん!」

コーヒーを一口飲んだ彼女はそう言い顔をしかめる。


と微笑ましいぐらいのお子様な舌のようで、こっちの方が年相応の反応で安心感がある。



「ちょと待ってて、マレイちゃん。」


そう彼女に言って、彼女に新しく、ドリッパーで濃いめにコーヒーをドリップして、それをミルクと割ったのを差し出す。



「はい、カフェ・オ・レだよ。」


「カフェオレ?なにそれ?」


何だか分からないといった感じで頭を傾げる彼女に、簡単にコーヒーとミルクを半分づつで

割ったものだと伝える。



「はい、これなら飲めるかな。」



砂糖も入れて甘くしたカフェ・オ・レを差し出す。



「わあ!甘くて美味しいよ!」


そう一口、飲んで味が気に入ったようで、ごくごく飲む。



「まったく、味覚がお子様なんだから。」


そう、呆れて言うエマはどこか、微笑みマレイを見つめる。



「よし!決めたよ。」


カフェ・オ・レを飲み終わったマレイが意を決したように呟く。



「わたし、しばらく学院を休むよ。」



唐突に亮太向けてそう言う。


「世界中を旅して今よりも凄くなって戻ってきて学院の皆を見返したいんだ。」



「旅から帰ってきた時は出迎えてよね、マスター。」




「わかった。その時は、美味いコーヒーを淹れてやるよ。」



この時の俺はどんな顔をしていただろう。


巣立つ子どもを見送る親の心境ってこんな感じなのかな。


とにかく一歩を踏み出すことを決意したマレイのことが嬉しくて嬉しくて......


彼女の前で涙は流せないと上ばかり向いていた。


















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