あたし(5)
配送のお兄さんから、マカロンを貰った。ピンク、イエロー、スカイブルーの三個入り。とても綺麗な配色のマカロンと、一見こわもてなお兄さんとにギャップがあって、ビックリしたあと思わず笑ってしまった。
この前のど飴を貰って嬉しかったから、とお兄さんは照れくさそうに話す。あっ。笑顔になると、えくぼがあるんだ。可愛い。いや、いけない。どんどんお兄さんに傾いていく気持ちを止められない。課長と付き合うようになった時みたいに。
お兄さんは、あたしのことどう思っているんだろう? 結婚してる? 彼女は居る? このお返しは建前? それとも好意? 頭の中で、質問がぐるぐると渦を巻く。
でも結局ひとつも発せずに、笑顔でお礼を言って、いつもの短い世間話は終わった。お兄さんに心惹かれれば惹かれるほど、課長のことを強く思い出してしまう。それはやっぱり人生において課長が一番で、どんなに好きになっても彼が二番だということなのだと思う。
それでも。手の届くところになっている美味しそうな果実を、一年間も腹ぺこのままでいたあたしは、我慢することが出来ないかもしれない。
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