俺(2)
我ながら、不器用な人生を送っていると思う。愛想がないせいで人間関係が上手くいかず、幾つもの会社を転々とした。
やっと落ち着いたのが、人間関係の比較的薄い配送業で、ようやくひとの目を気にせず働けている。
俺はコウタ。あと半月で三十になる。彼女居ない歴は五年。こんな俺でも婚約していたことはあったけど、その彼女と別れてから五年になる。
彼女とは、高校からの付き合いだった。だから、八年間付き合ったことになる。
幼い頃は話さなくても遊びの中で、友だちもそこそこ出来ていた俺だったけど、高校一年の時に両親の離婚で転校になった。それも三学期からというご丁寧さ。仏頂面で無口な俺に、当然友だちが出来ることはなく、粛々と二年に進級した。
この仏頂面は、父さんにそっくりだ。母さんが、もうウンザリと言っていた、父さんに。俺はそうやって父さんを責める母さんにへきえきして、自分の意思で父さんについてきた。
母さんについたら転校せずに済んだのに、無口であることをヒステリックに責める母さんとは、一緒に暮らせないと思った。自分に言い訳する訳ではないが、仏頂面で無口なのは、ただ不器用なだけなのだ。だから父さんについてきた。
身近な女性は母さんだけだったから、俺は何処かで女性というものを嫌悪していたんだと思う。本が好きだったから図書委員になったけど、まさか推薦されて委員長になるとは思わなかった。副委員長は女子で、話をしない訳にはいかず、渋々と事務的に言葉を交わした。
だけどその渋々は、筒抜けだったらしい。ひょっとして女性に興味がないの? と訊かれ、深く考えずにそうだと答えたら、じゃあ友だちになりましょうと言われた。
この時のことは、私一生覚えてるわと彼女に散々笑われた。ゲイなのかという意味で一大決心して訊いたのに、涼しい顔で肯定されて仰天したと。
友だちになれて尊敬出来るひととでないと、男女の付き合いは出来ないと思っていた。彼女は、転校してから初めての友だちで、俺よりも本に詳しく尊敬出来る盟友だった。
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