第6話奴隷
見知らぬ男性と歩くこと数分。私は今どこに連れて行かれているのか気になったので、質問をしようと男性の袖をくいくいと引っ張る。
「あの……今どこに向かっているのですか?」
そんな当然の疑問をぶつけると、男性はニヤッと
「まあ、もうすぐつくから」
具体的なことは何一つ教えてくれない。正直不安しかない。でも母様が信用した人なら、信用できるかもしれない。そう……思っていた。
男性に質問してからまた少し進んだところで、一台の馬車があった。二頭の馬の後ろには、
私はその見慣れないものの方へと目を向けていると、男性はその場所へと向かっている。もしかしてあれで移動するのかな? と考えていると、男性は
「ついたよ」
と
「え……?」
私が少し戸惑うようなそぶりを見せると、男性は
中にいる人たちを観察していると、ガチャっと鉄格子の扉が閉められた。全く状況が理解できない私は、鉄格子をガンガンと揺さぶって
「どう言うことですか!?」
と男性に聞く。すると男性はまたしてもニヤリと笑う。
「そこにいるのは全員奴隷だよ」
男性は
「ど、奴隷って何ですか? 私はこれからどうなるのですか!?」
慌てた私は、先ほどよりも強く鉄格子を揺さぶる。そんな私の様子をみた男性は大きなため息を吐いた。
「君は察しが悪いなぁ。君は実の母親に売られたんだよ。たったの20
それを聞いた私は絶望と悲しみのあまり力が抜けて、ぺたりと
それに今日母様が急に優しくなったのもおかしい。あれは私が素直にこの男性について行かせるためだったんだ……。それなのに馬鹿みたいに舞い上がって……。
私はうずくまり顔を伏せる。きっといつかはこうなる運命だったんだ。それがたまたま今日だってだけで、母様はどこかのタイミングで私を家から追い出すつもりだったんだ……。
でもその方が良かったのかもしれない。あの地獄のような家で生涯を終えるなら、このまま奴隷として死んでしまった方がいいのかもしれない。そう考えたら、私は運が良かった。あの家から解放されたのだから。それに私がいなくなって困るのは母様だ。あの人は家事も買い物も何もかも私に任せていた。あの家は私がいなくなったら何もできない人間しかいない。
それで兄様がワガママ言って、母様が困って、私がいないから他の何かにストレスをぶつけるようになるんだ……。
ははっと乾いた笑いが口からこぼれ、「ざまあみろ」と口にしていた。
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