第3話恐怖
人が混雑する大通りにあるスーパーへ私は向かう。戦時中であるためほとんどの人は満足に食事も取れない。だいたいの人たちは配給された食料以外は口に出来ないだろう。でも私たちは父様が国の代表ということもあり、多少はお金を持っている。
母様も兄様も配給の食料は不味いと言って食べないから、いつも私が作っている。
大通りにあるスーパーに着くと、今日のご飯の材料を選ぶ。兄様に菓子を買ってこいと言われたので、私は菓子の売っている場所へと歩く。菓子コーナに着き、一通りの菓子を拝見する。
毎度のことながら本当に高い。確かに砂糖は貴重なものなのかもしれないけど、それにしても高すぎる。チョコやキャンディー一つで一食分……、いや二食分の値段する。でもここで妥協すると、兄様に怒られる。でも食料を安く済ませてしまうと、母様に「手抜き」だとか「まずい」とか言われてぶたれる可能性がある。その二つを天秤にかけた時、どちらが嫌かは明確だ。
私は菓子コーナーの中でも一番安いクッキーを手に取ると、その場を後にした。もう残高が少ない。私は材料が手頃な値段のものを探すため、スーパーをうろうろと歩きまわる。そして私の
レジに行き、店員さんに持っている貨幣のほとんどを渡して私は帰路につく。家の前につき玄関を開けようとするが、その扉はやけに重い。体がこの家に帰ることを拒絶してるんだ。いつも、このままどこかへ逃げ出したいと思う。でも行くあてもないし、私にそんなことをする度胸も
だからこの牢獄に、自ら戻るしか選択肢がない。ガラガラと鉄製のドアを開け家の中に入る。
「ただいま戻りました」
そんな報告をして、台所に向かう。台所に向かう途中、母様と兄様、そして見慣れない顔がもう一つあった。父様だ。母様と兄様は私に気が付いても何も反応を示さないが、父様だけは私に気がつくと立ち上がり私の元へ歩いてきた。長身で薄茶色のコートを着て、頭には黒のポークパイハットをかぶっている。
「やあカリーナ、久しぶりだね。今日は父さんもカリーナの食事をいただくことにするよ」
そう言って私の頭を撫で、また母様たちの方へと行ってしまった。一見優しそうに見えるが、私は父様が家族で一番苦手だ。あの薄ら笑いと、それによく似合う顔がとても不気味だ。今現在行われている戦争も、父様が国の代表になってから起こっているし、私にとってあの人は恐怖の対象でしかない。
ブルっと震える体を押さえつけるように、右手で左の二の腕を掴む。少し落ち着き、私は台所へと向かうと買ってきた材料を取り出して早速調理を開始した。
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