第6話 災害

「うぉおおおぉぉお!!!!!」

脚にも踏ん張りを見せ、抑え込みには成功している。が、もう次は約束されていた。

「はい1個追加」

奇妙な棒読みで黒球が追加される。

(キツい…キツすぎる…なんでアイツは悠々とペットボトル緑茶なんて飲んでるんだよ…)

押されて断崖絶壁の状態に追い込まれた。カエデスは余裕を顕にしている。

(僕の手で黙らせないと…後々不味くないかな?)

太田は自分が一番強いと思っているので、ここで負けたら世界が負けたも同然だと酷く恐れ慄いている。

「どうした?相殺せよと言っておるのだ!出来んのなら用済みだな。」

アレの黒いオーラが竜巻状となり、太田を包み込む。

(覚醒してくれ…覚醒してくれ!覚醒してくれ!今の僕じゃ無理なんだ!覚醒して!」

思わず心の声が漏れた。それは迫力と黄金の光を伴っていた。それは美しかった。

「最終覚醒か…まさか黒球と黒巻が消滅してしまうとはなぁ。流石だな。警戒リストは伊達ではないか。」

「喜べ。お前は今まで殺りあった中で10番目に強い。さぁ、存分に誇るがいい。ふっ、3分だけ耐えたら良い事が待っておる。」

太田の更なる覚醒を見てでさえ、一切の動揺を見せなかった。

「閃光剣!」

太田は手に光を集中させて、剣を作り出した。

「様子見といこうか。calamity【雷】」

それに対してカエデスは黒い雷を手に纏い始めた。

「苦手な部類だが、痺れる攻撃だぞ?」

カエデスは雷を纏いし手で、太田の顔面に殴りかかっていた。

「光壁!」

光の壁をピンポイントに作り上げた。

「丁度良い所だな。障壁は小さければ小さいほど強い硬度を誇ってくれる物だ。だが、」

左手の拳が腹に迫っていた。

「他が守れないのは戴けない。頭隠して尻隠さずだ」

左手の電撃が太田の内臓を侵す。頭が真っ白になりかけた。

「死ぬのは早くないか?勝利の旗は立ってただろうに。」

呆れて肩を竦めている。太田は蹲っている。

「良い事が成せないのは宜しくない。」

カエデスは倒れている太田を蹴る。そして踏みつけ。

「まだ立てる…」

太田の言葉にカエデスは刺激が走った様に反応した。(ピクッの事です、すみません。)

最初以上の期待の向け様だった。

「もう倒れるでないぞ?俺を楽しませろ!」

これ以上ない「楽しみだ」との感情を顕にした。

「上等です!!!」

そして何故か太田は敬体になってしまった。それに対しカエデスは少し笑っていた。

「早く態勢を立て直さないと横竜巻が来るぞ?」

「いやもうこう喋んのめんどくせぇな。」

竜巻を超速で顕現し、何故かは詳細不明だが、口調を変えた。

「危な!」

太田は危うく横竜巻に巻き込まれかけた。

あ、因みに服は全部破けてるので全裸です。

「避けちまった?なら次は……………津波かな。」

「津波!?!??」

宣言した瞬間、カエデスの影が泡立つ。それから、高く伸び上がり全方位に伸びる。

それは、吸引力を発生させていた。それに太田は吸い込まれ行く。

「吸われる!!!!」

「恐れんなって。」

太田が焦りを顕にすると、カエデスは人差し指を上に向けて少し曲げると、槍が太田の背中に突き刺さった。

(イッッッ…たいけど耐える…)

泳ぐモーションをしながら次々に目掛けてくる槍を躱す。

「動きが良いな。やはり見込み通りの所もあるね〜。良いじゃん。」

首から音を鳴らしながら評価する。

「何を言ってるんですか?貴方は?」

カエデスに対しての言葉がやはりいつの間にか敬体になる。太田は洗脳に近いものを感じていた。

「因みにさっきの槍は銅にしておいた。いつかはボロが出ると思うぜ。」

伸びをしながら、えげつない事を呟く。

「後この口調は亡くなっちまった俺の師匠が威厳を見せる為にっつー名目でやれと押し付けて来た口調じゃない方の口調だからまぁ軽い軽い。トーンも変えてる。」

死の宣告をしてからの自己紹介。悪魔的であった。

が、太田は銅の神経への影響を受けなかった。

「なぁ!2分この状態飽きたんだが!?いつんなったら銅中毒起こすんだよ!即効にした筈だぞ!?」

カエデスは怒りを顕にする。

それに対しての太田は、

「この覚醒はどうやら状態異常を受け付けないみたいです。あと30秒必ず耐えて見せましょう!」

と自信を顕にしていた。何故かカエデスは津波を解除し、溜息を吐き、アレを地面に突き刺す。

「災害の禊。」

「?」

謎の単語をカエデスは吐く。

「俺はお前の思ってる独裁者って言う奴じゃないけど、確かに虐殺事件起こして追放されて迫害された身だからな。そんな絶望の象徴ってやはり、天災と相性が良いんだよ。」

「相互で喜ばしい存在である。それこそが信頼だと思うんだよね。災害にとっても自らを削らずとも環境破壊をする人間を懲らしめる悲劇の王は都合が良いんだよ。災害が禊によってこちらに力を授けてくれてからはもうあっという間に人類は自然を崇めた。そしてその荒廃した世界を抜け出す事にした。まぁそれは別の話だし、それから先は何故か覚えていないがね。」

カエデスは過去をほんの少し語る。太田は黙り込んでいた。

「行使条件はその災害を司る存在と親交を得ること。そして条件を満たした者の血を飲む事だな。これ以上はサプライズの為に取っておくよ。」

太田に紅い眼を向けた。太田は少し後退りした。

「これを耐えたらお前に禊を施してやる。今まで舐めプで悪かったな。disaster【隕石落下】」

轟音響かせ、空から熱された石が降りてくる。1度瞬きをして改めて見直すと、既に至近距離まで迫っていた。太田は熱に耐えつつ、自己のありったけをぶつける。

「魂ぃぃぃぃぃぃぃ燃やせぇぇぇぇぇぇ!」

光の極太レーザーで押し返そうとする。が、ピクともしなかった。寧ろ重さに負けて押されていた。汗が止まらない。自分の死期が近付いてくるのが分かる。全力で逃げたい、けれどもここで自分も隕石も消滅させた方が良い。それが最善策だ。

「うぉぉぉぉおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!」

さらにレーザーは太くなり、隕石を飲み込める太さになった。が、もう鼻の先には衝突しそうだった。しかし、押し返して行くのが伝わった。微々たる物だが、押し返して行くのが分かった。そしてそれが、もう素人が見ても明らかに押し返しているのが分かる物になっていた。カエデスは目を丸くしていた。

「嘘だろ!?」

驚きを隠せずに居た。それは、太田自身も同じであった。

「砕けろぉぉぉぉぉぉァァァァァァァ!!!!!!!!」

最後の力を振り絞って隕石を貫く。そして…………








凄まじい轟音と共に隕石は塵となった。

太田の視界はぼやけて、2重3重となり、歪み黒く包まれた。倒れていった。

そこにカエデスが拍手をして近付いてくる。

「良くやってくれた!お前は今日から始まる。良かったな。」

不敵な笑みを浮かべてナイフで手首切り裂く。手首から血が垂れていく。

その垂れている血を太田の口に入れようとする。しかし、太田の口は閉じている。

「閉じんなて。めんどくせぇ。」

右手で仰向けにしつつ、左手で太田の口を開けた。

「はぁ…ほぅら!摂取しやがれ。」

太田の口に血を注いだ。

「あ…あぁ…」

ある程度注ぎ終われば、太田の瞼が上がる。

「御目覚めか?新しい朝だぜ?」

手を上に突き、震わせながら太田は頷く。

「先に管理室に戻らせてやるよ。」

混乱している太田を他所にカエデスは指を鳴らした。

直ぐに太田はその場から消えた。

「さぁてと。卵は壊れてねぇな。印印っと。」

バツ印を卵の頂点に付けた。その他の卵にも同じようにマーキングをした。

「よし。宣戦布告の合図でもするか。」

カエデスは大きめの槍を顕現して霧で少し見えにくい山に向かって投げのモーションを取る。草原の卵をバックに。



───────民家にて

そこでは、赤いスライムと俺との話が進んでいた。

「じゃあまず君の名前を教えてくれるかい?」

スライムが俺の人差し指で身体を起こしている。

「桜井翔真だ。よろしく。」

俺は(一応スライムの)腕を動かしながら名乗る。

「大抵は君に動かす権利があるよ。俺が作ったその腕は。殴りとか、握りとかもお手の物さ。」

「あ、俺の名前はステラだ。よろしくね。」


スライムが少し形を変え、頭を下げた。

その瞬間ここは光に包まれ、全て全て全て全て全て壊された。




























































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