第5話 下見攻撃
「案の定あるではないか!」
最高の表情に最高の歓喜の声。
紅き眼が空で輝く。
「空の都市か…やはり安定の繭もある!となれば深海にも卵があるのが確認せずとも分かるな」
昂りを抑え切れていない。風が軽く吹く。
「何者だ!侵入者か⁉︎」
誰かの怒鳴り声が聞こえる。どうやらここは誰かの私有地らしい。
「連れないことを言うでない!俺は観光に来た者だ!歓迎するのがマナーではないのか!」
「観光客もマナーを守ってほしいですよ!」
手を横に振って「退け殺すぞ」との意向をぶつけた。それに衛兵(鎧)姿をしている人物が同じ意向で返した。
「はっはっはっ!知名度が低いのは不便な物よなぁ。無知な貴様にはそれ相応の罰を与えないとなぁ!」
「常識のない観光客だなぁ。良いだろう殺してやる。国の威信にかけてな。」
お互いに退かず、ぶつかる事となった。
「先制を譲ってやろう。ほれ、先に攻撃するが良い。」
「何を言うかと思えば、随分と強気だな。」
不敵な笑みで見合う。しかし、紅き眼が相手の劣勢を顕著にする。
「お言葉に甘えるとしようかな!」
そう衛兵の男が宣言すると既に拳が厨病男の眼前に迫っていた。が、
「今の接近で貴様は大量の傷を負った。そして今貴様の拳は斬り落とされている。これが意味する事は何だと思うか?愚者よ。」
衛兵の顔が青ざめている。腹には人間と同じ背丈の槍が刺さっていて、何処からか現れた武器により身体には複数の斬られた痕もある。
「先制をやると言うのは嘘だったのか?」
「愚か者め!自衛をしない馬鹿が何処におるか!」
困惑を浮かべる衛兵にとんでもない屁理屈的常識がぶつかる。
「嘘だろ…」
「無念」と言い残して衛兵は息を引き取った。
「弱いな。思考にロックすらも掛けれん程度の実力か。」
大きく溜め息を吐いた厨病男は近くにあった屋敷に飛び去った。
「侵入者は殺れなかったのかな〜〜〜」
語尾が凄く伸びる男が扉の前に立っている。
「変人の相手をしている暇はこちらにはない。」
紅き眼で睨みつける。
「ほう。よっぽど俺のパイロキネシスをお見舞いされたいようだ。マゾヒストかな?」
変人の足下が炎上し始める。
「先ずは蹴りを入れてっと。」
接近して蹴りを入れようとしたその瞬間、肉が抉れるような音がした。青い波紋が空間に漂っている。
「そう言えば武器のストックを切らしていたな。」
不敵な笑みで圧倒する。
(負けるな俺〜!パイロキネシス使いの男が冷えてどうすんだ〜)
震えながら考え込んでいる。
「ま、パイロキネシス!パイロキネシス!パァァァァアイロキィンネーーーーシスゥゥゥゥ!」
変人は取り敢えず適当にパイロキネシスを打っておけば良いと思ったそうだ。
すると、
「ぁ」
銃声が聞こえたのも束の間。一瞬で心臓が貫かれ息を失った。
「無様だな。」
あまりの呆気なさに呆れて嘲笑する。
───────その頃
「まずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずいまずい」
外の様子を覗いていた女性が焦りを露わにする。
「どうした?」
その家の当主であろう人が様子がおかしいのを見兼ねて訊く。
「つ、強すぎるの!あのパイロキネシスの竹中が一瞬で死んだんです!」
焦りながら説明する黒髪の女性に赤髪の青年は、
「大丈夫だよ。今から僕が彼と闘うから、不味そうだったら逃げれば良いさ!」
落ち着いた声で励ました。
「どうかご無事で。」
「勿論!大丈夫!」
剣を持って一階に下りた。
───────場は戻る
「また雑魚か?つまらんなぁ。」
白髪は肩を竦める。freak相手に使った白い怪しく光る玉を顕現している。
「僕の部下達がお世話に。」
「貴様がこの家の主人か。一体全体何なんだこの訓練不足の部下達は?本気で部下を思うなら、自衛手段は教えておけよ。」
挨拶は受けず、白い玉からレーザーが打ち込まれた。が、
「危ないですね。先ずはお互い名乗るのが礼儀ではないでしょうか?」
透明なバリアで弾かれた。
「面白そうだな。では名乗ろう。俺の名はカエデス。虐殺嗜好者だ。よろしくだ、これから死に行く者よ。」
「僕の名前は太田直輝だ。魔剣使いだ。」
お互いの紹介で、血の闘いは幕を開けた。
「日本名か…やはりあの世界と似ているのだな。」
カエデスは不敵な笑みを浮かべる。太田は終始真剣である。
「転生者って言ったら分かる?」
既に懐に剣が入り込んでいた。が、轟音が突如として流れ、
「障壁否、バリアって知ってるか?子供のあるあるのひとつだが。まぁさっき防いだから知ってるだろうが。」
依然として不敵な笑みを浮かべる彼が語る。
「でもまだ剣は残ってるよ。」
少し焦った太田は折れた剣を捨て、新たな剣を腰から取り出す。
「精々2本か。馬鹿馬鹿しい。子供の遊戯に付き合ってる訳じゃない!」
不敵な笑みが崩れ、怒りを露わにする。
「俺の猛攻を受けきれた物は居らんぞ?覚悟は出来ておるか?」
「キレ症だね。」
「五月蝿い小僧だ。」
少しやり取りをすると更に気に障ったのか、槍を無数に召喚した。
「ピーピー囀るでないぞ!」
それがシャワーのように降り注ぐ。が、剣で全て弾いている。
「加護は知ってるかい。子供おじさん。」
「んなっ!?最高権限だぞ?」
「加護の前では武器の実力は無意味。」
カエデスは驚いているが、直ぐに表情を立て直した。
「期待通りだな。警戒リストに載ってる奴は」
再び不敵な笑みを顔で形成し始めた。
───────ダイブ前
「リスト覗くけど貴様らもどうだ?」
「遠慮しませーん。」
「そうだな」
これには賛同が溢れた。自分でも粋がりを実感していた。
「えっ〜と、この毒ガス人間と称されてる人間は脅威かな?」
freakが日本人っぽい人を指差す。
「完璧か、我は興味無いが調査は進めておけ」
「相変わらず偉そうだね。」
「るせぇよガキ」
「oh!昂ってるねぇー笑」
freakは挑発的に、カエデスは威圧的に話す。それがもう相性が悪すぎるのだ。
「そう言えばさ、なんで僕らはこの世界に来たんだろうね。ほら、僕らの目的は異常をはk…」
(何言ってんだろ…?僕らはただ破壊衝動に駆られてるだけじゃ…?)
「確かに違和感はあるな。だが気にせん方が良かろう。苦しいだけだ。」
ポケットに手を突っ込んでいたが、一旦離して頭を抱えているfreakを撫でた。
「何すんだよ!?」
「気にすんな」
唐突なおかしな話を傍から聞いていた者がいた。
「………そうか。」
本を読みながら呟くといった雰囲気は出したが、独り言で完結してしまった。彼は秘密結社Wのボス、ワルト。濃い青の髪を持っており、光が多い碧の瞳も持っている。青づくしの男である。
「ほう?興味深い輩が居るではないか。」
そう言ってカエデスは赤髪の青年を指す。
「へ〜パーフェクトヒューマンかぁ…!」
freakは興奮を隠しきれていなかった。が、
「残念ながら狙い定めたのは我だ。」
ニヤリと笑ってダイブボタンに触れた。
「(・д・)チッ」
「それでは我は下見に行こう!」
「いんじゃない?もうどうでもいい〜」
カエデスは光に包まれた。
「実は女なんだよな〜僕。何を思って撫でたんだろあの人」
カエデスが行ったのを確認して小さく呟く。
───────現在
「期待通りって、君まだ僕に勝てるとお思いで?お花畑だね。」
「フン!ただの挨拶で粋がるなよ?雑種。」
互いの威圧で空間が激しく揺れる。
と、しばらく睨み合っていたが、瞬く間に戦闘に入っていた。
「“時間停止”」
太田がそう口を開いた瞬間辺りの動きが止まった。が、
「時間停止程度の力で勝てると?」
もう直ぐにカエデスの蹴りが太田の側頭部に迫っていた。
「圧倒的魔力で辺りを止める原理だと、強い奴には及ばない。僕はとんだ誤算を見過ごしていた物だよ。」
そう呟くと、しゃがんでカエデスの蹴りを避け、カエデスの腹を殴ろうとした。が、
やはりこれもバリアによって弾かれ、腕が普段曲がらない所まで曲がっている。
「っ…ぁ!」
血の噴射は止まる気配がない。その焦りからか、息が自然と荒くなる。
「貴様の攻撃が当たらない加護。その力は認識の範疇内にのみ作用する。下らない、興醒めだぞ」
腕を組んで空間から武器を取り出す。やはりこれも波紋を伴っていた。
「銃だ。転生者なら知っておろう。」
「この世界にも一応あるぞ。」
「そっか。だがどうでも良いのだ。」
銃を向け、引き金を引こうとする。
「絶命せよ」
鼓膜を破りそうな程の発砲音が鳴り響き、太田の頭を貫く。
「ぁ」
太田はそのまま地面へと倒れ行く。時間が止まった白黒の世界で。間違いなく彼は死んだそう思っていた。
「呆気ないな。」
「それはどうかな?」
諦めて背を向け、その場を去ろうとした時だった。そこには蒸気を纏いながら立ち上がる太田の姿があった。
「ん?不死身か!」
「初見の攻撃で死なない加護。もし致命傷の即死技なら今までに受けたダメージを自らのパワーに変換する勿論再生も兼ねて。君は態度のわりにはこれを見抜けなかった凡人だよ。でも、さっきの銃は良く効いたね。」
首を回し骨の音を鳴らしながら迫る。
「はっはっはははは!貴様は俺を楽しませてくれそうだな。」
大きく高笑いをする。
「何百年振りかな。ここまで強い奴がいる世界は!」
カエデスは親指を下に突きつける。
「満足出来なかったら殺す」
「詰んでる奴が偉そうに。」
呆れながらカエデスの相手をする。
「馬鹿な君にハンデをあげよう。それはね。僕の加護の一部を教えてやる。その概要までは言わないけどまぁ頑張れば分かる。忍耐の加護。回避の加護。不死鳥の加護。反射の加護。死神の加護。吸引の加護。運命の加護。
これ以上にも恐ろしいのはあるさ。」
かなりの舐めた態度だ。それに苛立ちを覚えたカエデスは、
「貴様否、お前。屈服させてやるから覚悟しろ。」
啖呵を切って赤黒いオーラを放つアレを顕現した。
「結局僕には効かないだろ。」
太田はなろう顔負けの余裕ぶっている表情を見せた。が、
(は?あんなの受けたら加護が破壊されちまうだろ…助けて!ライダー!)
いやライダーって誰だよ。まぁそれは置いといて、彼は内心大焦りしていた。
「まずは軽めに行くぞ!」
まずはアレの打撃がお見舞いされた。運命の加護(未来予測)で避けようとしたが、それは叶わなかった。
「ぉ ぁ …」
一気に宙に浮かされ、都市の外へ投げ出される。
「フン!やはり虚勢か…腑抜けめ!」
森に落ちて行く所をカエデスは蹴り上げで都市に戻した。
(痛い…気絶しちゃうかも…)
口からは大量に血が。太田はダメージを負う度に吐血していってるのだ。
「次は回避しないと命が不味いんじゃないか?」
アレが即座に振り下ろされていく。
が、膝を着く太田の頭上僅かでアレは静止した。そして少し溜息を吐いて口を開いた
「しかし、貴様の加護達のまぁサファオンと言う奴は次々に世界を動かして来たのだな。」
カエデスは気に食わない言葉を使ったかのような苦側の歪んだ表情になる。
「何を言っている?」
太田は首を捻る。
「貴様はここで終わりだ。加護という有害概念を消し飛ばす良い機会になったな。と言いたいのだよ」
そう宣言してアレの禍々しいオーラを太田の額に向ける。細胞全てが警鐘を鳴らしているのが分かったそうだ。冷えた汗が垂れ、溢れる。自分は助かる。そんな有り得ない世界線に縋る姿はカエデスにとっては滑稽な図面であった。
「くたばれ。楽になるぞ。」
禍々しいオーラのアレに脳天を破滅させられた。その様子は鼻から致死量の大量出血。口からは言葉としてゴフッとの断末魔。目玉2つは可愛く転げ落ち地面で赤い水鏡を創り出していた。
「なんだ…妙に静かだっ…!なるほどだ。」
突然光に包まれ、そこには真っ白の硝煙の様なものが発生して居たのが確認出来る。転げ落ちていた眼が低速度で元の場所へと再び帰還して行くのが理解出来た。
「不死鳥の加護は苦肉の策だったけど仕方ないよね。君が相当僕の本気を見たいらしいから。」
首を鳴らしながら接近してくる。そこには威圧がまた一段階上がった完璧人間が居た。ゆっくりと煙から出てくる。
「馘首記念日とでも名付けようかな。カレンダーに記しておくよ。特に君の恐ろしく強いゴリ押し性能を。」
剣心を持ち、剣を振り回して呟く。大きな伸びをして。
「不死鳥の加護は初使用だよ。まだまだ僕は経験が浅いな。」
肩を竦めて太田は呟き続ける。
「泡沫の魂と。俺はそう感じていたが、やはり大きく外れたな。予想より貴様はしぶとかった。」
軽く頷き感心していたが、冷やかしの様な拍手をした。
「潰す価値はあるな。」
そう言い、カエデスは黒いオーラを竜巻状に変化させた。
「3分耐えてみろ。」
竜巻状のオーラを太田に向ける。大きな横方面への竜巻が街の縦一部分を覆った。大きな衝撃波が発生し、その場は消滅してしまう。間一髪でその範囲から逃れる事が出来た太田は少し冷や汗をかいている。
「どうした?酷く恐れているな。」
首を傾げながらカエデスは迫り来る。ドス黒いオーラを放ち来るその姿は太田が過去に見た独裁者の気配に似ていた。
(はぁはぁ…あれは元の住んでた世界の地球の…戦争を彷彿させるね…)
少し過去を思い出し、身震いをする。
「天誅だ!遠慮なく喰らうがいい」
大きくカエデスは黒いオーラを放つアレを振り落とす。
(あれ食らうのはダメ絶対。だがどうする?不死鳥の加護で身体は一応強化されてるんだが…僕の技で相殺は出来ないし…ホントの最期になるけどあの技を使わないと詰むかな?ゴメンね。まだ見守ってくれてる新人メイドさん。僕は君を守れない。あ〜あまただ。自分は守れないのかもな。恋人を守れなかった過去の自分を恨んだけど、はぁ……彼女は無駄死だったのかな。いやだあんなのはもう……嫌だ!!!)
「そうはさせない!!!!」
覚悟に満ちた顔になり、青みがかった透明のオーラを放ち出す。
「覚醒か。ならば相殺せよ!」
超速でドス黒いオーラを球状にして太田にぶつけ込もうとする。
「望みならやってやんよ!野郎!!!」
太田は右の拳に自己のオーラを纏い、黒い球を殴り飛ばすモーションに入る。
((さぁどうなるか……))
お互いに厳しい心情になる。黒い風が唸っている。さぁ結果はどうなったか。
「ぐおぉおおおお!!!!」
拳で黒い球は制止できているが、そこからカエデスに押し込み返す事は難しそうだ。
「よくやった!ならば追加だ!」
再び超速でドス黒いオーラを球に変換し、太田にぶち込む。
太田は今度は左の拳に集中を置く。新たにオーラを創り出して抑え込むつもりだ。しかしそれではもう一度黒い球が容赦なく襲う事を太田は察知していた。
(こっからどうすれば良い!?今がフルポテンシャルMAXエネルギーだぞ!?打つ手はないのか?)
太田は実際には抱えていないが、頭を抱えている。
(ほう?なかなかに心で足掻いておるな。フン、それは所詮意味の無い言葉の繰り返しだな。解決の糸口がまるで遠のいているな。)
「愚かな推敲を重ねた成果はどうだ?」
そう侮辱的な目で見つめるカエデスはどこか余裕が見えた。
「これを耐え切れば俺が貴様に良い事をしてやろうではないか。」
少しカエデスは邪悪にニヤリと笑った。
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