第16話 うわき?
―猫様は僕のことを下僕と呼んでいると思う。
猫様は普段はつれないが、浮気には結構厳しい。僕が犬公(外飼いの番犬くん)と戯れてきた後は5回ぐらい甘噛みされ、入念な匂いの付け直しが終わるまで解放してくれなかった。他にも色々あったが。
さて、とある休日。僕はやらかしてしまった。
その日の朝、僕は食卓の椅子に座ってお母さんとお喋りをしていた。
猫様は「下僕、早く下僕の部屋開けなさいよ。」とばかりに僕の椅子の後ろでペチペチ床を叩いていた。
お母さんが
「見て見て!」
と言うので僕は身を乗り出す。
そこには可愛らしい三毛猫の子どもが写っていて。
「この子、可愛いよね!」
小さな画面の中でふわふわがころんとしている。
「可愛いーーー!」
思わず叫んでしまった。
と。
背中を射抜くような視線。
つい、失念していた。
さあっと血の気が抜けていく。
猫様がこちらを向いて
…固まっていらっしゃった。
瞳はすっと縦に細くなっていて。
耳はピンッと立っていて。
慌てた僕は猫様に謝罪の言葉を持ち得る語彙の限りを尽くして述べた。
…彼女は悲しそうにそっぽを向いて箪笥の上まで逃げてしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます