第15話 特等席

 暑いですね。熱中症にはお気をつけて。


 ー猫様は僕のことを下僕と呼んでいると思う。


 暑い日の夜は冷房を入れる。それは人間のためでもあり、我が家の場合、猫様のためでもある。


 ポチッとボタンを押せば冷気が出てくる優れものからの恩恵を受けるべく、我らが家族は冷房をつけてる部屋では窓を閉め、ドアまできっちりと閉める。


 猫様はその涼しい部屋がお気に入りである、が、涼しさを味わう代償にあちこち行き来する自由を奪われる。そのため、僕らは猫様のための御手洗いを御用意させていただいた。


 それはさておき。


 僕は諸事故(洗濯機の不具合によりシーツが破けた)により新しいシーツをゲットした。


 何はともあれ猫様は人と一緒に寝るのが好きだ。特に新品のタオル地のシーツに包まれた布団には目がない。


 でもその布団の住民が現れるまでは遠慮して待っている。御行儀良く、少しばかり圧をのせて。


 夜行性な僕は寝るのがいかんせん遅い。


 ふらふらと髪を乾かしてのそのそと歯を磨く。


 その間猫様は寝室の前でころりころりと僕を誘い続ける。


 深夜テンションで狂っている僕はスマホでぽちぽちとニュースやら、譲渡会のブログやら、占いなどを眺めながら歯を磨く。


 そろそろ瞼が下がってきて、仕方なしに歯ブラシを片付け、口の中の泡も水で追い出す。


 目を擦り擦り歩を進め、猫様が待ち構える部屋へ。


 キラリ


 猫様の目が光る。


 先程まで寝っ転がっていた体勢をぴしゃりと直し、しっぽをふりふり僕をドアまで導く。


 こちらを上目遣いで見ながら。


 ハートを射抜かれゆっくりと彼女を傷つけないように扉を開ける。


 通れるようになっても尚、彼女は中へ入ろうとしない。


 こちらをじっと見上げている。


 僕は声をかけた。


「猫様、寝に行きましょう。」


 猫様は一寸小首を傾げてからタラッタッターと言った効果音が似合いそうな足取りで走っていく。


 そして僕の布団の前で立ち止まる。


 僕が近寄ると彼女はすっと右半分に座る。


 僕は彼女の横にゆっくり移動する。


 そして明かりを消して一緒に眠るのです。

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