第14話 記憶力

ー猫様は僕のことを下僕と呼んでいると思う


暫し暑い日が続いた後の、この、どんっと寒い日。


人間は服を心ゆくまで着れば良い。


けれど猫様は違う。


毛皮一枚しか防寒アイテムがないのだ。


(服着たくないし)


よって彼女は温もりを求めて人間の布団という布団を襲う。


人間がパッと脱いだ衣服を狙う。


横になった人間の体温を奪う。


でも。それらはすぐに片付けられてしまう。


彼女は考え、考えた。


母に訴えようと。


すりすり。すりすり。お母さ〜ん。ちょっと今日寒いのにゃ〜。何かあったかいのちょーらい?


母は彼女の考えを汲んで毛布を取りに行った。


それは彼女が勝手に気に入って一冬越した毛布だった。


母は覚えてないだろうと思いつつ、肌触りが気に入ったから昨年手放さなかったのだろうと、なれば今日も初めて見るものだと認識しても気に入ってくれるだろうとそれをとってきたそうだ。


猫様は母が手に持つ毛布を見て目の色を変えた。


母がそれを彼女のベッドまで持っていく間、ずっとくっついて歩いた。


母がベッドの上にそれを敷いた途端。


ぴょんと飛び乗り、丸くなった。


覚えていたらしい。と母は笑っていた。

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