第13話 おかえりなさい
–猫様は僕のことを下僕と呼んでいると思う。
今日は雨です。梅雨の時期です。紫陽花が晴れた空の色をしていました。
僕が帰ってきた時、寝室にいるようでしたので、僕はいつもの日課の「ただいま」を言うのを躊躇いました。もし、眠っているのなら、そのままそっとしておいてあげたいと思ったからです。
さて、下僕にだってグレる日はあります。
袋の中からカップ麺を取り出し、今日のご飯はこれだー!っとスマホのタイマーを呼び、ぺりぺりと包装をとっている時でした。
ドアの向こう側から澄んだ、甘く、高く、よく通る声が聞こえてきました。
僕は慌てて扉を開けました。
猫様がまるで旅館の女将さんのように三つ指ついていらっしゃったのです。
僕は「ただいま」と言いました。
猫様は「おかえり」と言う代わりにもう一声「にゃぁ〜」と鳴きました。
僕は猫様の側に近寄ります。
猫様は立ち上がりました。
僕は猫様のことを撫で、
猫様は僕のことをすりすりとしてくださいました。
僕は雑な食事を済ませた後、猫様に導かれるがまま、窓辺の部屋に行きました。
雨はしとしとと降り続けています。
僕等は寄り添って緑の葉の間に覗く丸い青空をながめていました。
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