11: answer, his own, and my own

 俺は学校に着いてすぐに掛川さんの所に行った。今日で来るのは最後だって言ってたし、みどりに言われたことを話してみたかったから。

「うーん、どうだろうね。確かに君が気づかないところで浅彦君の死を受け止め切れてないのかもしれない。だってあれから天井君、何事もなかったようにしてるだろ? 何も影響がないわけがないんだよ。でもこれは驚くようなことじゃないしむしろ……」

「俺はびっくりだよ」

 そう言い放って、俺は出されたコーヒーをがぶ飲みした。クソ苦え。

「片岡君にしてもさ、お父さんの件があってから少し変わったと思うし、まして天井君の場合、もっと事が深刻だ。いや、勿論片岡君のも大きなことだったけど、彼の場合、いなかった父親が現れたわけで、君の場合は存在していたものが失われた。これは大きく違うと思うよ」

 いつもより少し早口な掛川さんを見ながら考えてみると、俺が掛川さんに何か相談するのは初めてのような気がする。あ、だから早口なのか?

「先生は? 親父さんを失ったわけだろ?」

 俺はなにか彼なりの答えみたいなものを期待してたんだけど、返ってきたのはいつもの掛川スマイルだった。

「彼は僕にとってそれほど近い存在じゃなかったから」

 近い?

「俺って浅彦と仲良かったのかな」

 思わず呟くと、掛川さんは珍しい動物でも見るように俺を見た。

「うーん、そうだなぁ……」

「変かな。俺わかんねえや」

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